与え合いのバランスゲーム

シヨゥ

第1話

 与えられるものと与えるもの。その釣り合いが取れてはじめて健全で対等な関係が気づかれる。ビジネスであれプライベートであれそのバランス感覚が欠けていては不健全なのだ。

「おはようございます旦那様」

「あぁ、おはよう」

 こうして甲斐甲斐しく世話を焼くことを仕事とするメイドたちとの関係もそうだ。雇用主という立場だからといって与えられてばかりではだめなのだ。与えてもらうからこそ与えてあげる。与え合いが大前提になのだ。

「調子はどうだい?」

「最近寒くなってきて水仕事が辛くなってまいりました。手荒れの心配をしないといけないなと思う今日この頃です」

「そうか。そういえばこの間手荒れによく聞くハンドクリームを開発中の会社の話を聞いたな。サンプルをもらえないか訊いてみよう」

「ありがとうございます」

「それと加湿器も新しくしないとな」

「それはなにより。それよりも今日のご予定ですね。加湿器の選定はその合間でも大丈夫でしょう」

「分かっているよ」

 彼女たちのおかげで今こうして我が家は成り立っている。早くに両親を亡くし、屋台骨が傾いた我が家から離れることなく働いてくれた。彼女たちの献身なくして今日の我が家はないだろう。だからこれまでに与えてもらった分を上乗せして、与えてくれたものを返している。さすがに貰いすぎだと彼女たちは言うがまだ足りない。この天秤を釣り合わせるにはまだ与えたりないのだ。

 しかし、彼女たち与えてもらってばかりは悪いとより献身的に働いてくれる。すでにどちらが多く与えられるかのゲームになりだしていた。そんな与え合いのバランスゲームは今日も続く。勝利者のない最高のゲームはまだまだ始まったばかりなのだ。

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与え合いのバランスゲーム シヨゥ @Shiyoxu

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