第10話
中矢は物置の床下で飼っていた黒猫のことを思い出す。「学校でやなことがあった時、いつもよんだら出てきてくれたなぁ」中矢は学校ではぼんやりしていた、全体的な運動会の練習やら朝礼やらは特に嫌だった。そして常にさっさと死にたいと思っていたのである。そんな中矢をその黒猫は慰めた、いつからか中矢にとりその黒猫は何よりも大事な存在になったのだった。
中矢が小説家を志したのも「吾輩は猫である」を読んだからだった。
「最後に猫が死んでしまうなんてけしからん」と中矢は思い、いつか猫が天下をとる小説を書こうと思ったのである。
なぜあの黒猫はいなくなってしまったのか?中矢は今までなん十回と考えたことをまた考える。母は伝説の猫とフュージョンしたと言っていた。だがもしかしたら冒険に出て事故に遭ってしまったのかもしれない。それとも倉庫の床下がイヤになり、中矢を呪って化け猫になってしまったのかもしれない。あるいは悪い人間に捕まり殺されてしまったかもしれない。そんなことを考えるうちに中矢は染谷教授の娘の事が気になり出した。なぜ彼女の写真に伝説の猫が写っていたのか?なんとなく教授の娘と黒猫がダブる、「教授に取材を申し込もうかな?」と中矢は思った。しかし小説のモデルとして結構悪女っぽく描いているので憚られた。
その夜中矢は夢を見る。
中矢は、教授の娘と付き合っている学生になっている。喫茶店で教授の娘は告白する。「実は私あの時の黒猫なの」中矢は驚き、「そっか、あれからどこ行ってたのと?」と訊く。そこにジョージが現れ、喫茶店の店内で教授の娘と激しく性交を始める。2人は、小説家イーターに変形する。
「グギッうめ~」と小説家イーター、中矢は混乱し目を覚ます。すると新宿の女の子から電話がかかっていた。中矢が折り返し電話をかけると彼女は「おじさん、いまから会えない?」と言う。
二人は新宿の喫茶店にいる。なんでも親に売春がバレて家を追い出されたらしい。
「お父さんがカンカンになっちゃって」「そっか」「最近へんな夢みるんだけど」「どんな?」「おじさんと結婚する夢」「そっか、じゃあけっこんしようか?」中矢は29歳だったのでそろそろ結婚しようかと思ったのである。「うーん、それってプロポーズ?」「かな?」「全体的だね」「個人的だよ」「なんで」「俺も夢みたから」「どんな?」「結婚しないと死にそうな」「命懸けだね」「そんなもんだろ、結婚って」「そっかじゃあ結婚しよ」二人は結ばれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます