第5話

中矢は小説の思案をする、恋愛編の序盤は登場人物の素性を明かさず書いていた。これからは、日大教授の娘と日大の運転職員と言う線でやっていっている。

少し気をまぎらわそうと、散歩がてら後楽園で撮った写真を写真屋に取りに行こうと思う、歩きながらも思案は続く「…ジョージのキャラはどうしようなるべく粗野な感じがいいかな、景気がいいのと言うリクエストだから、派手に遊ばせようか、とわ子の方はどうしよう、景気がいいのと言うことだから金好きにしようかな…」

暴力や暴動がものを言う時代に中矢はいた、在日朝鮮人の暴動は待遇改善につながり革命も暴力ならば反動も暴力だった、中矢は個人の暴力を小説にしようとしていた、その暴力は個人を全体にしてしまう。

全体にしてしまうとは、エナジーを集めてしまうのだ皆破壊欲求を持っていた。

「伝説の猫はなんで長生きなんだろう?」ふと中矢は考えた。

「範囲ないでエナジーを循環させてるからかな」と中矢は結論付ける。

「しかし伝説の猫は一匹だな、どうやってエナジーを循環させてるんだろう?」また中矢は疑問に思う。

「きっと伝説なだけに遠い未来にも遠い過去にも存在していて現在過去未来とエナジーを循環させてるのかもしれない」中矢はまた結論付けた。

中矢は親の力で赤紙を回避した、終戦間際彼は大学を卒業していたのだが、当時付き合っていた女性は、中矢がそんな最中でも伝説の猫の事ばかり追っていたので愛想をつかしてわかれてしまったのだった。なぜそんなに中矢が伝説の猫にこだわるのかと言うと理由があった。幼い頃、中矢は黒猫を拾った、子猫だったのだが母親に家の中では買えないと言われ離れの倉庫の床下で買うことにした。中矢が「みゃー」と泣き真似をすると子猫も「みゃー」と言って床下から出てきてミルクをのむ、他の家族が呼んでも出てこないで、中矢が呼んだときだけ出てきたのである、あるときからその猫は中矢が呼んでも出てこなくなってしまった。母に尋ねると中矢の母は「伝説の猫が迎えに来たのかも」と言った。なんでも伝説の猫は見込みのある猫とフュージョンするらしいのだ。

中矢は写真館に到着し、現像された写真を受けとる、帰り道に写真を見ながら歩いている、小さな田んぼ、山のような場所、急な階段、丸い橋、神社、池、教授の娘、その教授の娘あしもとになんと伝説の猫が写っていた、中矢は驚く確かに黄金色に輝いている。

中矢はエナジーが沸き上がるのを感じる、そして「教授の娘は、伝説の猫を飼っているのだろうか」などとおもうのであった。

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