第2話

鰻屋の個室では編集長と日大教授染谷道彦が待っていた。

「おー中矢くん久しぶり」染谷は小説家イーター培養機構の顧問でもあり、勇太が幼い頃よく仕事関係で父のもとを訪ねてきた

「お久しぶりです」と勇太

「まあ座って座って」と編集長、勇太が座ると「早速だけど」と話を切り出した

「お父さんの方から連載の方の要望があって、今度の連載は金にまつわる景気のいいのにしてほしいそうなんだ」と編集長は言った。勇太は内心それじゃあ仕送り増やして原稿料上げろ、と思ったが「はあ」と生返事をした。

「そこで手前味噌で悪いんだけど、景気のよいと言うことで、実業系のうちの大学をフィーチャーしてほしいんだ」と染谷が言う。

「連載では今序盤の恋愛系ですが、これからなんとかなるかな」と編集長、そこに勇太の鰻重と肝吸いが運ばれてきた、勇太は1日半何も食べてなかったのでガツガツほうばりながら「はい何とかします」と言う。

「勇太くん女っけのほうはどうなんだ」と染谷

「からっきしですね」と勇太

「今度うちの娘が家の手伝いがてら同居するんだけど紹介してあげようか?」

「滅相もありませんおそれ多いです」と勇太

「勇太くんはモテると思うんだが」と編集長が言う、勇太は金さえあればなとだんだんこれから書く小説の主人公の気持ちに沿ったような気分になっていった。

「お嬢様はどんなお仕事をなさっているんですか?」と勇太が尋ねる。染谷は「化粧品屋のマネキンだよ、結構モテるらしい」と言う。

「そうですか、それではお嬢様も連載中の小説のモデルにしてもよろしいでしょうか?」と勇太

「おーいいよいいよ娘も喜ぶんじゃないかな、取り合えず資料と言うことで今度適当な写真を現像して勇太くんの下宿先に送るよ」

「ありがとうございます」

歩いて下宿先に帰った勇太は、夕飯を抜かし早速執筆に取りかかる。


染野とわ子は、教授の留守に男を呼ぶ、現在2人と付き合っていた、一人は学生でもう一人は教授の大学の運転手だった、今日は運転手を呼んだ。

運転手柿崎吾郎はハーフのような美景でアメリカかぶれのヤンキーだった。配達途中にとわ子の家に立ち寄ったのだった、ダットサンの運転席で「今日も燃えるかな」とぶつりと呟き染谷宅に横付けする。

クラクションの音でとわ子は迎えにでる。

「早かったね」ととわ子

「飛ばしてきたんだよ」と吾郎

二人は教授の留守中に貪り合った。

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