第3話

「目が覚めましたか、ユウト様。」


ヒューゴさんはベットに横たわる俺の横に立って顔を覗き込んでいた。

ベットまで運んで来てくれたのだろう。夢じゃなかった。


「目を覚ましたようなので再度説明させていただきます。私はユウト様をグリアン共和国にお連れするために猫に変身しておりました。」


また気絶するかと思ったが、何とか持ちこたえた。


「な…なん…何のために俺を…そんな場所へ…?」


「グリアン共和国ひいては惑星マスエイアを救ってもらうためです。」


もうダメだ、理解が追いつかないレベルではない。彼は何を言っているのか。

第一、平凡な成人男性の俺には国や惑星を救うなんてできるはずがない。

きっと人違いだろう。人違いにしても救国の英雄なんているとは思えないが。


「人違いではありません。ユウト様が我々の検査で適合しましたので。」


説得力のない検査に適合していたらしい。いつされたのだろうか。


「ユウト様が私を拾ったときに確認させてもらってました。」


あの時か。雨の中で震える黒猫をただ拾って育てただけだと思っていたのに。


「初めから俺を捕まえにきたの?」


「いいえ。適合する人を連れて帰るためにこの星に来ましたので、検査に適合すれば誰でもよかったのです。たまたまユウト様が適合したというだけです。」


誰でもよかったって。なんか無差別殺人犯みたいで気分が悪い。

そして、さっきからこの星という言葉に引っかかってる。


「ヒューゴさんは宇宙人なんですか?」


「先ほども申しました通り私は惑星マスエイアの住人です。地球人から見たら宇宙人でしょう。」


宇宙人というのはこんなにも地球人と変わらない姿をしているのか。

こんなめちゃくちゃな状況で変なところで感心してしまう。

現実から逃げたいからかもしれない。


「こんな話をしていても話が進みませんので。そろそろ出発の準備をしていただいてもよろしいですか?」


強引に話を戻されて、準備を急かされた。俺の意見なんて無視されて。


「ちょっと待ってくれ!準備ってなんだ!大体、行くはずがないだろ!」


久しぶりに大声を出したので少し声がかすれた。それでも言わなければいけない。


「そうですか。それでは。」


俺が言葉を発する前にこの宇宙人は一人で納得しながら、燕尾服の懐に手を入れた。

懐からペンのような何かを取り出しながら近づいてきた。


何をされるかは見当がつかなかったが咄嗟に目を瞑り手を前に突き出し振り回した。

振り回した手をつかまれ、何かを刺された。


途端に体中の力が抜け、気絶するように倒れた。


「手荒なことはしたくありませんでしたが、仕方ありませんね。」


意識が薄れる中、ヒューゴの言葉が聞こえた。この宇宙人め。

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(仮題)俺は宇宙人に攫われて… 上屋列道 @imasaka_UeYa

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