トリック

全て爆発された。


「3…」


意識をそこには置かず、ただ広く…広く…


「2…」


そして、広い中からたった一つを選び、視界の中央にずらした。


「1…」


そして、トリガーを引いた。


「GO!!」


轟音と共に射出された弾丸は遠く、しかしゆっくりと着実に来ている獲物達へと突き刺さり、爆発した。

ただの質量弾ではこいつ等には物足りない。

装填が無意識で行われ、素早く次の弾丸を射出する。

煙で向こうの景色が薄れても。

肩が痛くなり始めても。

それでも





それしか彼女には能が無いから…


「死ね」


死んでくれた


「死ね」


死んだ


「死ね」


死んじゃった


「死ね…死ね…死ね…死ね…死ね…死ね…」


暴れるMURASAMEが視界に入ってきた。

別の通路で溢れた集団を殺していたのだ。



残り20m。



「まだか…」


食い止める。

必死に食い止める。


残り15m。



「クソ!止まれ…止まれえええぇぇ!!」

残り10m。

目と鼻の先に自分より大きな怪物が居た。

血まみれで、とにかく臭くて、そして。怒りに満ちた眼


「ッ!」


撃つ。

…撃つ。

……撃つ。

………撃つ。

…………撃つ。

























そうだった。もう無いんだった…


「………」


産んでくれた親も

育ててくれた師匠も

仲良くしてくれた親友も

愛してくれた男も

そして…私の脳すら


全て奪われてきた。


口が開く。


そう、全て…


大量に並ぶ歯が私を食い殺そうと開く。


でも、私はまた…


歯の隙間にある人の欠片がこちらを向く。


「お前も同じになる」


「違う…」


食われる。


「違う」


…食われる。


「違う!」


……食われる。


「違う!!」


………クワレロ


「私は…まだ全て奪われていない」


全てを食った。


「でも欠片は残った」


全てを喰らった。


「その欠片はな、二人の人間なんだ」


なのにお前はなぜ生きている?


「その子達が私をお姉ちゃんと呼ぶ限り…私は、お姉ちゃんとしてこの世界に存在しているんだ!!」


ッ!オマエエエエエエエエェェェ!!
















「そうだ、それこそが人間らしい」


MURASAMEが私を突き飛ばした。


「サイコウだ…」


MURASAMEが目の前で食い殺された。






そして…爆発した…


















「………」


彼女は生きていた。

あてもなく彷徨っていた彼女がやっと立ち止まったのだ。


「………」


彼女が下を向く。

そこにはMURASAMEの頭があった。

中には何も入っていない中身…


「………ハァ」


それを拾い上げ、家の方向を見た。


夕日に照らされている彼女の奥には、彼女が守った街があった。

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スナイパーお姉ちゃん デルタイオン @min-0042

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