第22話

初めて見るおばさん、泉澤久美さんの字は、丸くてかわいらしい。封筒とおそろいの薄いピンク色の便箋にびっしりと書いてあった。



瑠偉ちゃんへ

会えないまま時間が過ぎてしまいました。

瑠偉ちゃんのお宅の場所はわかっているので、お手紙を書くことも考えたのですが、お母様のお気持ちを考えると迷ってしまいました。

お手紙をいただきながら、お返事ができず、すみませんでした。

もし瑠偉ちゃんが来てくれることがあればと、良子さんにこの手紙を預けました。

瑠偉ちゃんをお宅まで送って行った夜、娘が体調を崩して入院したとの知らせがあり、それをきっかけに、娘の近くに部屋を借りました。

何からお話ししたらいいでしょうか。

瑠偉ちゃん、あなたのお母様、華岡阿紀さんと私は幼なじみです。

私の旧姓は高谷といって、華岡さんの家の近所に実家がありました。私の両親が亡くなって、実家を売却したので、もうありませんが。ちなみに随分昔のことですが、高谷家から華岡家にお嫁に行った人もいるんですよ。

私の母と阿紀さんのお母様は今でいうママ友。

赤ちゃんの三ヶ月健診で親しくなったと聞いています。阿紀さんと私は同じ月の生まれで、赤ちゃんの時から小学校を卒業するまで仲良しでした。

その後、阿紀さんは私立中学校に合格され、同じ学校を受けた私は不合格だったこともあり、疎遠になりました。

覚えていますか。瑠偉ちゃんが作ってくれたういろう。おばあ様に教えてもらったとのこと。

私の母とあなたのおばあ様はよく、私と阿紀さんを遊ばせながら手作りのお菓子を作ってくれました。もちろん、ういろうも。懐かしい味だったのも納得がいきます。



おばさんとママが幼なじみだったんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る