第19話
私は奈緒さんとメールのやりとりをかさねるうちに、奈緒さんのことを大好きになった。奈緒さんは予備校講師だというのに、私に塾や予備校に行けとは言わない。奈緒さんも塾や予備校には無縁だったそうで、その人が予備校講師なのだから驚きだ。
奈緒さんは、受験勉強は自分が納得するまでやりきることが大事だと言う。ただ、勉強の方法は、人それぞれ、そして、自分で自分に必要なものを選ぶこと、とアドバイスしてくれた。
また大学の偏差値に縛られず、過去に出た問題を見て、自分との相性を考えてみるようにすすめてくれた。奈緒さんは大胆にも、数学教師のママを徹底的に利用することを提案した。解けない問題を質問してママに解答してもらう。ただし、直接、教えてもらうのではなく、紙に書いてもらい、パパを通して受け取る。こうすることで、母娘の摩擦を回避する。解りにくところは、遠慮せず、文章に書いてママに返す。もちろん、よく理解できたことも伝える。
奈緒さんに教えてもらい、パパに、ママへの質問レターを預けてみた。早速、ママから丁寧な解説つきの解答が帰ってきた。もっとも、これぐらいの問題は自力で解きなさい、とお説教も付け加えてあったが。
ただ、参考書や問題集の解答よりもママの解説はよくわかるし、そのことは素直に感謝して書くと、ママは気をよくしたのか、「数学文通」はその後も続いた。理科に関しては、奈緒さんが大抵の質問に答えてくれた。苦手な理数系科目の成績が上がってくると、不思議と自信がつくのか、連動して他の科目も調子がいい。
ありがたいことに、私の成績が上がると、家の雰囲気もいい。そんなこんなで、二年生から三年生になるころには、私は、一応、優等生の仲間入りをするようになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます