第16話
おばさんに会えないまま私は高校二年になった。あれから、おばさんの家のポストに私と両親からのお詫びの手紙を二通入れたけど、返事はなかった。木製の門がピッタリ閉まったままなので、そもそも、おばさんはあの家にいないのかもしれない。
相変わらず、ママとはギクシャクした関係だけど、パパは私との距離を縮めるために、学校まで私を車に乗せる「マイカー作戦」を遂行している。ママは、新年度から副校長になり、一段と忙しくなって、朝はパパより早く出るし、帰りは遅いし、私とは二日や三日会わないこともある。まるでわが家は父子家庭だ。
「パパ、無理しなくていいよ。私、バスの方が朝、楽なんだけど。」
パパに合わせて家から連れ出されるので、私は三十分も早起きするはめになった。自分の学校より、両親が勤めている学校の方が遠いので仕方がない。
「眠かったら車の中で寝てもいいし、朝ご飯を食べてもいいぞ。」
「パパ、今さら、かまってくれなくてもいいし。」
「なあ、瑠偉。本当にそれでいいのかな。小さい時はおばあちゃんにまかせきり。大きくなったらほったらかし。だから、瑠偉は泉澤さんがよかったんだよな。」
「パパ、もう面倒くさい。私、寝る。」
パパに文句を言いながら寝落ちする。学校の校門の前で車から私を降ろすとパパは
「気をつけて行くんだよ。」
と、大真面目に言う。
校門に立っている強面の生活指導の先生がクスクスと笑っていた。誰もいない教室で、パパが作ってくれた、朝ご飯のハムだけをはさんだサンドイッチを食べた。寝ぼけた頭で夕食は野菜をたっぷり入れて味噌汁を作ろうと考えていた。
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