第15話

おばさんが帰ると、私はパパとママに一言も口をきかずに自分の部屋に閉じこもった。制服のままベッドにねころんだ。パパが帰ってきたからよかったものの、ママの態度は最低だ。恥ずかしかった。

だけど、あれだけ荒れ狂っていたママを相手にして動じなかったおばさんって、どういう人なんだろう。そういえば、おばさんは自分のことを話したことがなかった。一人暮らしのように思っていたが、独身女性のような感じはしない。私への接し方から察するに、子育て経験者のように思う。

ママと同じような年頃だと思うけど、性格はきっと正反対だろう。バリバリのキャリアウーマンで気が強そうに見えても、ママは予期せぬことがおこるとパニックになる。おばさんは専業主婦のように見えるけど、ママと違って色んなことを経験しているのではないか。

昔から、ママは自分が勤めている学校の中のことしか知らない。家事を含む家のこと、私の学校のこと、住んでいる地域の習慣とか、人との付き合いは祖母まかせだった。時々、祖母が、実の娘ながらあきれるよ、あの子は世間のこと、何にもわかってないと怒っていた。そんなことを思い出していると、気持ちが落ち着いてきた。

コンコンとドアをノックする音がして、瑠偉、とパパの声がした。

「降りてこないか。三人でご飯を食べよう。それから、明日、泉澤さんのお宅にお詫びに行きたいから、夕方、なるべく早く帰って来る。瑠偉、案内してくれるね。」

私はドアを開けた。

明くる日、三人でおばさんの家を訪ねたが、留守だった。それから、何度も訪ねたが、おばさんに会うことはできなかった。

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