第14話
おばさんの家を出て二人で私の家につくと、思いがけないことに家に明かりが灯っている。恐る恐る玄関のドアを開けると、ママが鬼のような形相で立っている。
「瑠偉。遅いじゃないの、どういうことなの。説明しなさい。」
ママは目を吊り上げて怒っている。思わずひるんだ私をかばうようにおばさんが前に出た。
「私、近所に住んでおります泉澤と申します。お嬢さんがうちの前で気分が悪くなられ、休んでいただいておりました。お帰りいただくのが遅くなりましてご心配をおかけいたしました。誠に申し訳ございません。」
ここまでおばさんが謝る必要はない。もとはといえば、私がおばさんの家でべそをかいたのだ。
「ママ、私が迷惑をかけたの。こんなに早くママが帰って来ると思わなかったから連絡しなかった。」
と、説明したが、今日のママは、半端なくヒステリックだった。さらにおばさんを責めた。
「あなた大人でしょ。娘に聞いて親に知らせるべきじゃありませんか。」
「ママやめて。おばさんは親切にしてくれたんだよ。」
どうしたんだろう。ママのヒステリックな物言いは容易におさまらない。おばさんは動じなかった。ママの挑発には決してのらず、申し訳ありません、と繰り返した。不思議な感じがした。おばさんの背中から凛とした気配を感じた。とことん私をかばうとおばさんは決めたのだ。
「どうした。」
パパが帰って来たのだ。私はパパにかいつまんで事情を説明した。パパは、娘がご迷惑をおかけいたしました、また、妻が大変失礼いたしましたと頭を下げてくれた。
「じゃあね。お大事に。」
おばさんは私の顔を見て笑ってくれた。パパと二人で帰って行くおばさんを見送った。
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