第13話

おばさんはいつも通り、優しくむかえてくれた。おそらく、暗い顔をしている私の様子に気づいているのだろうが、余計なことを言わない。それがおばさんのいいところだ。

「ここは居心地がいい。」

思わずそう言っていた。

「そう。良かった。瑠偉ちゃん、ハチミツ入りのアップルティー、好きって言ってたでしょ。この前、また買っておいたの。どうぞ。」

おばさんがだしてくれた紅茶は美味しい。お茶は心を込めて優しい気持ちでいれると美味しくなる。

「疲れている時は甘いものが一番ね。」

おばさんはそう言って、お菓子もすすめてくれた。今日の私の顔はよほど暗くて最悪なんだろう。これではだめだ。しっかり知ろ、私。そうやって自分をしかりつけては見たが、効果はまったくない。それどころか、涙がぽとぽととこぼれ落ちた。おばさんは黙っている。

「すみません。」

と辛うじて言ったものの、いったん流れ落ちた涙は容易には止まらない。まるで堤防が決壊したみたいに涙が出る。

「瑠偉ちゃん、失礼するわね。」

おばさんはそう言うと私の横に座り背中をさすってくれた。そうしてどれくらい時間がたっただろうか。ようやく涙がとまり、

「すみません。」

と私はおばさんに謝った。

「いいのよ。話せる時がきたら聞かせてね。」

おばさんは笑った。

「それより、遅くなったから送っていくわ。」

気がつくと午後七時を過ぎていた。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る