第12話

「あなたの人生なんだから好きにしなさい。」

ママの冷たい声がまだ耳に残っている。クラス編成届は無事提出したが、気持ちは晴れない。すったもんだの末、二年生からのクラスは外部受験のための準特進文系クラスにした。

今の成績では外部受験すると胸をはれるほどではないが、それでもレールに乗せられているようで、上の大学に行くのは気乗りがしない。成績優秀な生徒が入れる特進クラスは無理だが、準特進クラスなら入れる。

そのことを両親に言ってはみたが、結果は思っていた通りだった。パパは何も言わないし、ママは渋い顔をして、外部受験して挙句の果てにたいした大学にも行けないで、おまけに文系だったら就職で苦労するだけよ、と冷たく言ったのだ。

それにしても、とため息がでる。自分の母親ながらいつも思う。もう少し優しい物言いができないのか。できなくて当たり前か。ママは挫折を知らない人なんだから。数学の難問を瞬時に解けたって、娘の気持ちもわからないんだよな。私も甘ったれだ。心のどこかでママに認めてもらいたいと思っていたのか。

いい加減、自分のことが嫌になる。学校からの帰りのバスの中で、ふと窓ガラスにうつる自分の顔を見て情けないと思った。気がつくと、おばさんの家のインターホンを押していた。

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