第7話
おばさんとの時間は楽しかった。聞き上手とはこういう人のことを言うのだろうか。私が話すことに丁寧に相づちをうってくれる。にこにこと笑っているおばさんの顔を見ていると、この人はいい人なんだよなって思ってしまう。
ママと同い年くらいかな。ママと違って、髪にパーマもかけてないし、カラーリングもしていない。ノーメイクだし、顔のシミも目立つ。いつ見ても洗いざらしのTシャツにデニムのキュロットだ。体つきも小太りで丸い。スーツをビシッと着こなして、完璧にカラーリングして一筋の白髪もなく、子供を産んだとは思えないスタイルのよさを誇っているママとは対照的だ。
「本当に美味しいわ。お若いのにお料理ができるのね。それにありあわせの傘をお貸ししただけなのに、お気遣いいただいてありがとう。」
おばさんは何度も言ってくれた。そんな風に人からほめられたことがない。でも悪い気はしない。
ここは居心地がいい。ふとそう思った。何度か助けてもらったとはいえ、おばさんは時々、顔を会わすだけの人だ。でも回数じゃない。おばさんがどういう人かなんて知らないけれど、ゴミ袋を持ってふてくされている私の気持ちをわかってくれた。バスの中で咳き込んだ時もまわりの人は嫌な顔をしてたよな。雨に降られて情けなかった。そんな時に手をさしのべてくれた人なんだ。それで十分だ。
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