第6話

おばさんの家の前で深呼吸をして、古い木製の門とはめ込んである格子戸には不似合いなカメラ付きインターホンを鳴らした。

「ごめんください。私……」

と言うと、おばさんはすぐに家から出てきてくれた。にこにこと笑いながら、私が持っている傘を見て、

「わざわざ返しにきてくれたのね。ありがとうね。」

と言った。せっかくきてくれたのだからよかったらお茶でも、と誘われるままにおばさんの家に入った。

古い家だ。きっと百年くらい経っているだろう。前に住んでいた田舎町でもここまで古い家は少ない。柱や梁はとても太い。よく見ると、柱も梁も壁も最近塗り直しているのだろう。赤みがかった濃い茶色の柱や梁と白い壁のコントラストが綺麗だなと思った。

おばさんは手作りのういろを差し出すと喜んでくれた。玄関から座敷にあげてもらった。草書体で読めそうもない掛け軸のかかった床の間を背に、見るからに高価な座敷机の前で柄にもなく正座した。

おばさんは黒い漆器の銘々皿にういろを盛り付けて、緑茶と出してくれた。湯のみ茶碗は渋い緑色だが、高価なものだろうなと緊張しながらよばれた。

おばさんも一緒にお茶を飲み、ういろを食べてくれた。

「美味しいわ。昔、母が作ってくれたのを思い出すわ。」

「私は、ばあちゃんに教えてもらって。」

しまったと思ったが遅かった。あわてて祖母と言いなおしたが、顔から火が出た。

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