第2話


私は一ヶ月前に両親とこの街に引っ越してきた。畑だったところが相続税を払うために売りに出され、細長い三階建の建て売り住宅が五軒建っている。私の家は南側の角地だけど、それがどうしたって感じ。ママは南側に窓がある部屋を私の個室にしたと恩にきせる。ベッドに机。クローゼット。独立した個室。憧れだったはずなのに。でも私は田舎の家が恋しい。今の家は窓が小さい。だから空も小さい。

ママには言ってもわからない。ママは田舎の旧家の一人娘。パパは三男というだけでママに選ばれた。二人は同じ高校の教師。ママの方が学歴も学校での立場も上だ。ママは仕事人間だから、私を産んだのは四十才だ。そのあとも仕事をセーブしないので私は祖母に育てられた。ちなみに、祖父は早くに亡くなっているので私は祖父の顔を知らない。

ところが、祖母が亡くなって、ママは田舎の家を売ると言い出した。あっという間に事がはこび、私はこの街にやって来た。

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