強欲
†
その前方に、わたくし達を乗せた白い不死鳥を狙い撃ちしている、時計塔に張り付く白い大蜘蛛を捉えました。
花弁を模した四枚の肩部装甲から
豪雨のように降り注ぐ弾丸は大蜘蛛を中心に時計塔の外壁を
異形の
けれども、わたくしの
「愛するヒツギ様とわたくしの未来のために……その行く先を阻むと言うのなら、師であるヴァリスネリアと言えども容赦は致しません!」
高速で回転する銃身と同時に銃口から火が吹き、轟音が街中に響き渡ります。
必殺の弾丸の
白い大蜘蛛は時計塔とともに地に崩れ落ちて足掻きます。
そのすぐ傍には長身
「――っクランフェリア……力の半分を奪われてなお、この強さか……流石、私の弟子だけのことはある――だが、まだだ!まだ私にも天上へと到達し
♢
これは私への罰か。
それとも呪いか。
私はこれまで多くの信徒の命を先導し、財を集めて
……私自身の膨れ上がる強欲に
――本来、聖職者というものは『
自らを律し清貧であり、禁欲を貫き、信徒の模範となるべく信仰を捧げる存在。
しかしながら、その理念を掲げ続けるのは困難を極めるものだ。
私はシスターとして、巫女神官として、また教職に就き教鞭を振るう中で一つの結論に至った。
神に対し、理想的な信徒であり続けることが出来ないのであれば、その逆を極めれば良い。
罪深く愚かな信徒であると認め
背信、
私の業や罪は免罪符になり得るのだと信じて疑わずに。
その末、私は主の寛大さと愛を感じずにはいられなかった。
しかし、それはやはり思い上がりでしかなかったのか。
今や目の前には花のような白い巨像の天使が、私を断罪すべく銃口を向けている。
かたや自身は満身創痍でありながら、なおも湧き出る強欲の渇望によって
名をつけるのなら『バルトアンデルス・ゲルニカ』だろうか。
白い大蜘蛛の
そして、その大きさは四十メートルを超えて、私の躰をも取り込んでいく。
「我が愛弟子、クランフェリア。君には今の私がどの様に見えているかね……醜いか。無様なものか。滑稽だろうか。」
半身が
『バルトアンデルス』の腹部にある人の口から私の声を発した。
「だが、そのどれもが正しく私だ。
異形の怪物は地を這いながら、いくつも節くれだった人の腕を生やしては振り
「私は何もかもを思いのままにしてきたが、何もかもが思い通りにならなかった。君ですらそうだ、クランフェリア!出会いこそ君の母君にまつわるものだが、私は君に
私には決して成れなかったもの。
私自身を浮き世の
古来より、貴族の女というものは不自由の代名詞だった。
言動や思想はもちろん、指先や歩き方の一つまであらゆる作法を人形の如くに仕込ませる。
政争や家名を上げる道具として恋愛や婚姻など、その最たるものだ。
ある意味で貴族の娘というのは『売り物』なのである。
だからこそ私は、同じ不自由ならば宗教国家都市において、不可侵の権利を有するシスターとなったのだ。
それこそ
私はアルスメリアから『魂の解放の儀』のことを耳にした時、彼女を利用出来ないかと考えた。
主に捧げる
「そうだ……今度こそ
叫びにも似た私の声に対して、白い巨像の
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