黒い神鎧
♢
私は北東部の兵士達を一分隊ほど引き連れて、旧市街地の高台へと移動をしていた。
すでにクランフェリア達の戦闘は始まっていて、白い巨像の
旧市街地のあちこちで爆発が起こり、土煙が舞い上げられて建物が崩れていく。
見えないところで北東部の兵士達と異教徒共による激しいゲリラ戦が繰り広げられているのであろう。
こちらの動きを敵に察知されないよう慎重に進みながら、三時間ほどかけて高台の広場に到着する。
広場の中央にはいくつかの彫刻像とともに噴水があり、近くには大きな劇場もあった。
我々は劇場を拠点として設営を始めた。
私の
それゆえに長距離の砲撃作戦は夜間に行なわれることになっている。
周囲を警戒しながら時間が経つのを待ち、同様に
♤
俺は黒い
旧市街地の外壁に囲まれた廃民家が建ち並ぶ一角まで追い込まれ、逃げ続けるのはもはや限界だった。
度重なる黒い
「なぜ……俺を狙うんだ?」
無論、問いかけたところで答えは返ってこない。
黒い
その物言わぬ人型の姿は、前に闘ったラクリマリアの
だが、
それは黒い鎧装の中に誰かがいるかのような、そんな気配を感じている。
そう
超人的な瞬発力でこちらに駆け、拳を振りかぶる。
俺は大剣を保持したままで上体を逸らして
黒い
それを傍らの大剣で受け止め、もう一度掌底を繰り出すが今度は逆に腕を取られそうになる。
咄嗟に手を引き、激しい取っ組み合いになると違和感はより強くなった。
俺の攻撃を次々と的確に
――なんだ、この動きは……!?
しかし、この黒い
そして、
部屋に残った家具や小物を打ち飛ばしながら壁に叩きつけられ、その痛みに
まるで自分自身と闘っているかのような錯覚すらあった。
「ぐう……まずいな。このままでは……」
大剣の力で身体能力が強化されているとはいえ、ずっと顕現させてはいられない。
どうにかしてこの場を切り抜けて、クランの元へと戻らなくては。
――そう思い、黒い
視界の端に綺麗な亜麻色の長い髪をした小柄な少女が現れた。
俺は愛するその姿に思わず気を取られて。
「――クラン……っ!」
腹部に強い衝撃を受けて気を失った――
†
わたくしは困惑とともに焦燥に駆られていました。
目の前で突然に黒い
しかも、未だ銃弾の飛び交う戦場で離れ離れになってしまったのですから。
彼の姿を見失ってから、すぐにでも追いかけようと考えました。
けれど、ここは戦場の最前線。
再び前方の異教徒からの砲撃や隠れ潜む敵の攻撃が始まり、自分の身を守ることで精一杯になります。
後方からの味方である北東部の兵士達はまだ十分に集まってはおらず、このまま戦線から離れるわけにはいきません。
わたくしは巨像の
「主よ。どうか彼に加護を――わたくしの最も愛する方を
ゆっくりと目を開けると『バルフート』へ語りかけました。
「『バルフート』……わたくしの想い――受け取りなさい!」
白い巨像の
わたくし達の長い一日はまだ始まったばかりでした――
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