少女たちの朝
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わたしは盤上遊戯に夢中になる三人をよそに、その場を離れていた。
向かう先はもちろん、彼らの泊まっている部屋だ。
部屋の前にたどり着くと静かにノックをする。
けれど、返事は返ってこない。
もう一度、ノックをして少し待ってからゆっくりとドアを開き、中へと入っていく。
クランとパフィーの姿が見えないということは、まだ寝室かお風呂だろうか。
しかし、シャワーの音は聞こえないので、おそらく寝室でしょう。
特にコソコソする必要もないので、気にせず顔を覗かせる。
すると、ちょうど二人はベッドの上で起き上がろうとしているところだった。
パフィーは眠そうに両手で顔をこすっている。
この子は相変わらず小動物のような愛敬があって可愛いわ。
「あ、おはよう!どうしたの、ラクリマ。」
パフィーがわたしに気づき、笑顔で朝の挨拶をする。
つられて、わたしも顔が緩んだ。
「……もう昼前よ、パフィーリア。まったく、お寝坊さんね。」
そして、クランへと目を向けると――清楚な少女は生まれたままの姿で躰にシーツを巻いていた。
「おはようございます、ラクリマ……その、すみません。できれば、こちらを見ないでください……」
寝起きのかすれた声で心の底から恥ずかしそうに顔を伏せるクラン。
これはこれで彼女の可憐さ、豊満な胸やくびれた腰などが際立って耽美的な絵画のようだった。
「なんとなくそんな気はしたのだけれど、やっぱり彼とシてたのね。まぁいいわ。二人とも起きたのなら、早く着替えなさい。お茶会でもしましょう。」
「クラン、この前ヴァネリスの手伝いに行った時もおにいちゃんとハダカで寝てたよね。」
「パ、パフィ、それ以上はいけません!」
下着をつけながら慌てて
わたしは思わず頭に手を当てていた。
――着替えを終えたクラン、パフィーリアと三人でお茶会を始めて小一時間。
「ねぇ、クラン。わたしは明日、聖務をこなすのだけど、良ければ貴女とヒツギにも手伝いをしてほしいのよ。場所はここからそう離れてはいないわ。」
昨日の夜に考えていたことをクランに切り出した。
「ラクリマの聖務、ですか?今は休暇中ではありませんか?」
わたしの聖務――補佐官への
「今回はわたしのもう一つの聖務、
「で、でも……彼にはきっと、良く思われることではありません。まして、わたくしが参加するとなると……」
そう言って、手元の紅茶に視線を落とすクラン。
「くひひ、ケーキ
パフィーは目の前のケーキを頬張ることに夢中になっている。
わたしはそっと彩り豊かなケーキ達を追加していく。
「彼には巫女神官のあるべき姿を教えてはいないのでしょう?わたし達のことをもっと知ってもらう良い機会だと思うわ。」
肩ひじをつきながら、畳み掛けるように言葉をかける。
「それに普段とは違う貴女の姿を見れば、彼もきっと惚れ直して二人の仲も盛り上がるでしょう!」
「そ、そうでしょうか……?彼がわたくしのことをさらに好きに……」
頬を染めながら、どこか夢想するような表情をする清楚な少女。
「……わかりました。それでは明日の朝、ラクリマの聖務をお手伝いいたします。」
小首を傾げて女神のような微笑みを向けてくれるクランに、わたしは感謝を告げる。
「ありがと、クラン。やっぱり貴女はステキね。わたしが女であることが悔やまれるわ。」
紅茶のおかわりを注ぎながら、つけ加えておいた。
「――彼にはわたしの方から話をするから、貴女は何も気にしなくていいわよ。体調はしっかり整えて、
そして、午後はまたバカンスと休息を楽しんだ。
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