海辺にて
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クラン達が着替えをしている間、俺は一足先に海辺へと向かっていた。
まだ夏季本番ではないから海に入るのは早いかも知れないが、気温は高めで浜で遊ぶ分にはちょうどいいだろう。
プライベートビーチだけあって人の姿はなく、周辺の地理を確認しながら休憩場所へとたどり着く。
樹木やパラソルにビーチチェアが並び、強い陽射しを遮断できて海にも近い良い立地だ。
水と氷を張った保冷箱を置き、中身を確認する。
水分補給用の飲み物と濡れたタオル、
ビーチでの飲食物はラクリマリアが用意しているようだが、何から何まで任せるのは気が引けたのだ。
――と、そこにこちらへ近づいてくる人影を見つける。
「ヒツギさん、いいえ御主人様っ!長旅お疲れ様ですっ、あたし待ちくたびれましたよぅ!」
ヒルドアリアは肩を出した、へその見えるトップスとスカートの爽やかな水着に着替えていた。
グレーとチェック柄で露出こそ少ないものの、普段の凛とした巫女装束とは違う年相応の少女らしい姿に新鮮さを覚えて、つい眺めてしまう。
「あれ?どうかしましたか、御主人様。」
「ああ、いや。いつもに増して可愛い恰好だったものだからな。似合っているぞ、ヒルデ。」
正直な感想を言うと、今度は少女が顔を赤くして固まる。
「えへへ、ありがとうございます。なんだか照れますね。」
もじもじしながら俺をチラ見するヒルドアリア。
「御主人様も凛々しくて、とっても素敵です!」
お互いに笑い合っていると。
「おにいちゃあぁぁんっ!」
パフィーリアが手を振って元気に走ってくる。
可愛らしいフリルのついた淡いピンクのセパレートの水着で、ふわふわの金髪が陽の光で輝いていた。
「あ、ヒルデも一緒にいた。みんなぁ、こっちこっちはやくぅ!」
大きな声で呼ぶ少女に声をかける。
「急かさなくても逃げはしないさ。その水着、可愛らしくてパフィーリアにぴったりだな。」
「くひひ、ありがとう!おにいちゃんもかっこいいよっ!」
天使のような笑顔を向けてくれるその頭を撫でた。
「あなた様、お待たせいたしました。」
クランが俺のそばに立つ。
布地の少ない白いビキニにパーカーを羽織り、亜麻色の長い髪を後ろで緩くまとめていた。
小柄ながらにたわわな胸は今にもこぼれそうで、白く艶やかな柔肌が眩しかった。
「あ、ああ。その、クラン。とても綺麗で……見惚れてしまっていた。」
「もう、あなた様ったら。あなた様もとてもたくましくて。わたくし、胸が高鳴ってしまいます……」
恥ずかしそうに身を縮めると彼女の胸がより強調され、思わず生唾を呑み込む。
ああ、これは水着の布が小さく見えるのではなく、小柄な割に彼女の発育が良すぎるからだと思い至った。
ここがプライベートビーチでよかったと思う。
クランと見つめ合っていると声がかけられた。
「あら、また二人だけの世界に入っているのかしら。たしかに周りには人がいないけれど、わたし達のことは忘れないでくれると助かるわ。」
「ふむ、私の普段の環境では考えられないが、まるで世界を独占したかのようで悪い気はしないな。」
ラクリマリアとヴァリスネリアが並び歩いていた。
クランと同様に黒のビキニを着こなし、彫刻のような完璧なスタイルで腰にパレオを巻いているラクリマリア。
長身
彼女は俺よりも少し背が高く、目が合うと不敵な笑みを見せた。
「やあ、ヒツギ君。久しぶりだ、壮健にしているかね。」
「ああ、貴女こそ。南西部の復興以来か、
以前、パフィーリアの
二位巫女神官であり指折りの富裕貴族でもある彼女は街の復興を全面的に支援してくれたのだ。
「君の活躍で事態を収められたと聞いている。パフィーリア本人のことも合わせて、お互い出来ることをしただけだよ。堅苦しいのは抜きにして、今はバカンスを楽しもうではないか。」
そう言って大仰に手を広げるヴァリスネリア。
傍には複数の使用人風のシスターが控えていて、知らない顔だが彼女の補佐官なのだろう。
何やら指示をすると休憩所のビーチチェアへと寝そべり、ラクリマリアも続いた。
「わたし達はここでのんびりしているから気にしなくていいわよ。」
「あなた様、わたくしもここでお待ちしてますね。」
俺は頷き返すと待ちきれなくなったパフィーリアが急かす。
「おにいちゃん、はやく遊びに行こうよっ。みて、ボールもあるんだよっ!」
「御主じ……いえヒツギさん。あたしもお供します!」
「わかった、それじゃ行くか。パフィーリア、ヒルデ。」
そして俺達は海へと駆けていった。
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