第2話
とある水曜日、前回10分で終わってしまったミーティングの第2回が開催されようとしていました。
Pさんはミーティングする前から憂鬱な気分で、何も始まっていないのに帰りたいと思っていました。ただ今日は英語科の先輩の参加が確定していたので、「前よりはまぁ安心」と思いつつミーティング参加のボタンを押しました。
すると、前に会ったベルギーの方しか映ってきませんでした。求めていた先輩の姿が見えません。彼女の帰りたい気持ちはさらに上昇しましたが、「まだ開始2分前やからそのうち来るに違いない」と腹を括って参加しました。ベルギーの方は今日は髪をくくっているのかロン毛に見えず、「今日ロン毛っぽくないな…」などとしょうもないことを考えていると、向こうから手を振ってくれました。彼女は手を振り返し、急いで名前を英語に変えるなどしていると、先輩がやってきました。彼女は「メシア…!」という気持ちで先輩を見つめました。
少し待ってもデンマークの方が来なかったので、とりあえずミーティングを始めようということになりました。ですが、結論から言うと彼女は何も聞き取れませんでした。初っ端からベルギーの方と先輩が流暢すぎる英語で会話を始め、それでも最初は聞き取ろうとGoogle翻訳片手に必死に耳を傾けていましたが、はやすぎるしネイティブすぎるしでなすすべのなくなった彼女はどうしようもなくてただただ笑いが込み上げてきました。しかし、ここで笑ったら変な人もしくはなんか英語聞き取れてるやつになってしまう可能性があったので、笑いを噛み殺しとりあえずリスニングに集中しました。
ですが、どれだけ集中しようがわからんもんはわかりませんでした。どうやら自己紹介をしているというのは雰囲気と聞き取った単語でわかるのですが、ほぼほぼ何を言ってるんや状態です。とりあえずベルギーの方が21歳ということを知り、「この人同級生なん?貫禄ありすぎん?」などとしょうもないことを考えていると不意に先輩とベルギーの方の会話が終わりました。
不審におもっていると先輩が翻訳してくれ、どうやら日本語でもいいから自己紹介をという話になっていたようで、彼女は知っている単語を駆使してなんとか名前、年齢、大学と専攻を話しました。すると、ベルギーの方から「趣味は?」らしき質問をされ、ワッツとホビーだけ聞き取れた彼女は「趣味?え、えーとアイプレイザピアノ!」と中一英語の例文のような返しをしました。
しかしベルギーの方は、「ピアノ?!ええやん!」的なリアクションを返してくれ、彼女は「通じたよかった…!」と安堵しました。
その後は先輩とベルギーの方が一生何言うてるかわからん話をしており、途中で参加してきたデンマークの方も加わって3人で楽しそうに会話をしていました。マジで何いうてるかわからん彼女は1人疎外感と孤独感を覚えていました。
デンマークの方はいい声でしたが、発音や音質も相まってマジで本当に何も聞き取れませんでした。先輩とベルギーの方の話は頑張って雰囲気だけ聞き取っており、先輩が普通の日本人は英語がそんなに話せない、聞けないので私が時々通訳をする、と気遣ってくれていることや、ベルギーの方が再来週に授業をしないといけないからはよ授業案を考えんといけん、他にも日本は45、50分授業やけどベルギーやデンマークはどう?、学校何時に始まって終わるの?、これからの連絡手段どうするなどの話をしてるんやなということだけはかろうじて聞き取っていました。
しかし本当に何も喋れないのでとりあえず聞いてる風を装って静かにしていると、よくわからないけどじゃあねみたいな話が始まりミーティングが終わりました。ベルギーの方が自分に対しごめんねみたいなことを言うてるとわかった彼女は「いえ大丈夫です」みたいなことを言おうとして言えず会釈を返しました。
「あ、会釈なんで文化ヨーロッパにないやん」と思ったところでホストがミーティングを終了しましたの画面に切り替わり、絶望しながらふと時計を見ると30分しかたっていませんでした。彼女は「人生で1番長い30分やった…」と思いました。
そのまま今週提出のヤバすぎるゼミの文献要約に取りかかろうとすると、先輩からLINE通話がかかってきて、今日のミーティングのあらましを伝えてくれました。概ね聞き取ったこととあってはいましたが、やはり細かな内容は聞き取れていなかったので、彼女は先輩に本当に感謝しながらメモを取りました。そして、「WhatsAppでこれから連絡取ることになると思うから、今日中に登録しといてね」という話に従い、もう容量のないケータイにWhatsAppを入れようとApp Storeを開きました。
WhatsAppで検索し、さあ登録しようとすると、WhatsAppと思しき大量のアプリが出てきました。
「いや、どれ?」彼女は途方に暮れました。
センター英語6割がやばい英語企画に参加した話 大鑽井盆地 @anboinaziken
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