車で田舎の芸術祭へと向かう旧知の男性ふたりが、その旅の最中で殺しあったりするお話。
男性ふたりの抜き差しならない関係性を描いた、現代もののドラマです。
すごかった……読み始めてすぐに集中したというか、物語の中に一気に引き込まれました。
冒頭のインパクトや、キャラクター造形の魅力もあるのですけれど、それ以上に文章の滋養が凄まじい。
異常なまでの読みやすさとわかりやすさ。加えて、語り口そのものが主人公の人格を形作っているので、単純に読んでいて気持ちがいいんです。これはすごい……。
もちろん、物語そのものも読み応え抜群なのですが、個人的には「もどかしさ」のようなものを感じた点がもう最高でした。
彼らの言動や関係性に対するもどかしさ、というよりは、「描かれているものと自分の読解との間に生ずる、絶妙な摩擦」のようなもの。
この辺、特に暴力描写で顕著というか、この暴力性の扱い方・描き方が本当にすごい!
作中の彼らの、殺されかかったりあるいは殺そうとしたりする行為に、衝動的な感情のレベルで共感できてしまう。
この「怒りや苛立ちのような、実感的な根源を伴った暴力」を読まされている、という感覚がもうたまりません。いったいなんというものを読ませてくれるのだ……。
面白かったです。本当に、読み応えの塊のような物語でした。
人物としてはもう単純に三谷くんが好きです。なんだか可愛い感じなのに、妙に生々しくイラッとするところがあるの。この生き生きとした存在感。好き。