Episode 0-0『prologue』
20XX年、夏――。
あなた達はイギリス・デヴォンポートに本部指示の召集命令を受けてやってきた。
GM:さて、現在の位置はデヴォンポートにある英海軍基地、その門前であなた達は初顔合わせをするでしょう。
この中だとレインが一番手に着いていることにしましょう。
それ以外のPCは好きな順で登場していいです。
また、これはシナリオ開始より以前の話となるので侵蝕率の上昇は結構です。
レイン:では、集合場所に誰よりも早く到着してメンバーの経歴やデータに繰り返し目を通しています。片手には重厚なアタッシュケース。
レイン:「……実績も経歴もバラバラ、完全に実力のみを考慮して集められている、か」
筅:「ふんふふーん♪ おや、もう人がいるみたいだね!」
レイン:声に気づいてそちらに顔を上げましょう。
レイン:「キミは……
筅:「おや! この筅ちゃんの事を知っているみたいだね!
そういう、君は……レイン=メインフィールドさん。だったかな?」
レイン:「名前を知られているとは光栄だね。UGNロンドン支部のエースにして、歴史あるメイフィールド家当主。そして……『特務部隊』チームのリーダー、レイン=メイフィールドだ。よろしく頼むよ、ミス・ササラ」
筅:「ふふん! よろしく頼むよ!」萌え袖なので、握手するときはレインさんの手をボフっとします。
レイン:「さて、もう二人ほどメンバーがいるハズだが……」
月夜:ではその辺りで。コツ、コツと。高そうな革靴が鳴る音が聞こえるだろう。その音はまっすぐあなたたちの元へ向かう。
月夜:「エ、どうも。旦那方もあの坊ちゃんに引き抜かれたクチかえ? ……それは結構。
オレちゃんは
胡散臭い。胡散臭さが服着て歩いてる。何せこいつの英語、明らかにわざと100年くらい前の発音じゃもの。そのくせ発音そのものはいいんだからな。
レイン:「……お褒めいただき光栄だね、ミス・ツクヨ」
月夜:「おや? お前さんデータに誤りがあるよ。オレちゃんは男さ。ご覧の通り……」ちょっと目を伏せてから。「……ま、男さね」
レイン:「これは失礼した、ミスター・ツクヨ。レイン=メイフィールドだ……よろしく頼むぞ」
筅:「お姫様とは、ずいぶん嬉しいこと言ってくれるねぇきみぃ! この美少女ちゃんの事を見る目あるよ!」
月夜:「はいな。白薔薇のお姫さんと霧雨の若旦那。……して。あと一人ってえのは……」
エル:じゃあ出ますね。
エル:「♪~♪~……」上機嫌な鼻歌交じりで歩いてくる小柄な人影。
ところが目の前に既に三人、予め教えられていた仲間と思しき人々が揃っているのを見ると血相を変えて、「わーっごめんなさいごめんなさい! ボク遅れちゃったりしました!?」
レイン:「……エルゴス、Dr.サマエル直々に指名があったレネゲイドビーイングだったな。定刻前だ、気にすることはない」
エル:「本当ですか!? よかったぁ……。ああ、じゃなくて……。初めまして、ボクはエルゴスです! なんかわかんないんですけどサマエルせんせーにここでアナタたちと合流しろって言われました!」
月夜:「オレちゃんもとりあえずはそういうことになってるねェ。んふ。歓迎会でも開こうってほど呑気な話じゃねえのは確かだが、さて……」
GM:では、全員が集合したところでロイヤルネイビーらしき隊員の一人が門前のあなた達に声を掛けてくる。どうやら、こちらも準備が整ったようで、基地内を移動する車を用意したとのことだ。
月夜:「……。スルト」炎の巨人(180cm)出して、普通に片腕お姫様抱っこしてもらって付いてきます。
GM:一般人の前でエフェクト使わないで。
月夜:話聞いてなかったわ。素直に行きます。
GM:というわけで大人しく車に詰め込まれて移動します。隊員の運転であなた達は埠頭まで移動すると、そこで降ろされる。
そこには、あなた達に背を向け、潮風に黄金色の髪を靡かせて佇む青年が待っていた。
レイン:「……これはこれは、アーサー・ピースウォーカー評議員」
アーサー:「やめてくれよレイン。仮にも同窓生じゃないか」くるりと振り返る。「やぁ諸君、よく来てくれた」
筅:「やぁやぁ! 君が筅ちゃんたちを呼んだ人なのかい?」と、ぶんぶんと袖を振りながらあいさつします。
アーサー:「そう。改めまして、中枢評議会『アクシズ』評議員、アーサー・ピースウォーカーだ」
エル:「ひょーぎかい……ってええ!? 凄い偉いヒト!?」
アーサー:「まあ、末席だけどね。それでもUGNでは一番偉い所の一員ってことにはなるかな」
レイン:「馬鹿を言うな、その年齢で中枢に席を置く人間が他にどれだけいる?」
アーサー:「僕なんてテレーズさんに比べたらまだまだだよ」
レイン:「逆に言えば、彼女が比較対象となるレベル、という事だ。それで、我々を呼びつけた理由はなんだ?」
アーサー:「それは、これからキミたちには大切なプロジェクトの実働部隊になって欲しいからだよ」
レイン:「……ほう?」
アーサー:「多分、日本支部に居た筅さんは知っているかな」
アーサーの口から語られたのは衝撃的な一言だった。
アーサー:「――数か月前、日本の横浜が謎の消滅を遂げた」
筅:「あ~! 日本の支部はそれで持ちきりだったねぇ~! いやはや、調査にも駆り出されて大変だったよ!」
月夜:「そんなのもあったねえ。ああそうさ。ここと同じく、米軍の海軍基地もあった場所さね」
GM:詳細を説明しますね。
この世界の横浜はとある事故で10数km範囲が地図から消滅してるのです。
表向きは『横浜ノース・ドックに停泊中だった潜水艦の核弾頭ミサイル臨界爆発事故』、本当の理由は――
レイン:「世界的には、米軍絡みの不祥事という事だったじゃないか。大統領の首がすげ変わった大事件だぞ?」
アーサー:「表向きは『米軍の事故による核爆発』、UGN内では『FHによる大規模テロ』ということになっている事件だね。
でも、真実はそうじゃない」
月夜:「そいじゃUGN同士の内ゲバかえ?」
アーサー:首を横に振って。「信じられないかもしれないが――この事件は『一人のオーヴァードの覚醒による事故』だった」
レイン:「核爆発に等しい力を持った、オーヴァードだとでも?」
月夜:「……旦那。そいつはあんまり笑えねえ冗談だ。千歩譲ってジャームがやったならまだわかる。けどオーヴァードだったらここまでの出力は出せねえだろう?」
アーサー:「通常のレネゲイドウィルスならね。みんなも話には聞いたことがあるだろう? 『
レイン:「レネゲイドに関わる者としては、基礎知識だな」
アーサー:「そのオーヴァードの罹患したウィルスも現在に発見されているそういった類のもの、僕たちはそう考えていた」
レイン:「考えていた?」
筅:「ナニカ。ありそうな気配だねぇ」
アーサー:「結論から言おう。そのレネゲイドウィルスは一切変異をしていなかったんだ」
レイン:「!」
アーサー:「現在発見されているレネゲイドウィルス、その中でも最も古いゲノムパターン。古代種すら過去の遺伝子をそのレネゲイドウィルスは保有していた」
月夜:「おいおい……。それじゃ、新種どころか真逆の話じゃあねえか。最古中の最古、この時代に生きた恐竜を発見するようなものさ」
エル:「とっても昔に生まれた子が、そんな怖いことを?」
アーサー:「……本来のウィルスというのはね、ヒトを含む生物と共生するというのが基本の生存本能なんだ。だから、致死率の高い危険なウィルスも、ある日、突然、弱毒化することもある。
レネゲイドウィルスも例外なく、ヒトと共生するために自らに
エル:「……そうやってちょうどいい感じになったから、ボクみたいなレネゲイドビーイングすら普通に生きていられる、ってことですか?」
アーサー:「キミたちレネゲイドビーイングもある事件をきっかけに爆発的に増えた。それもある意味、キミたちレネゲイドが新たな共生の道を模索する進化なのかもしれないね」
月夜:「……つまり早い話、ヒトと共生するつもりが、微塵も、1mmも、ちっとも、全然、まったくないような、原液ナマのまんまのウィルス保持者が見つかった、と」
アーサー:「人為的か偶発的かは分からないけれど、感染したことによってレネゲイドの持つ本来の凶暴性が顕わになってしまったと僕は考えている
話が逸れちゃったね。ここまでの話は前置きだ」
月夜:「ハ。どちら様かは存じ上げねえが、感染者にゃあご愁傷様だねぃ。一生UGNなりゼノスなりのオモチャさ」自分には関係ないもんね~~って面でころころ笑ってる。はは。
アーサー:「UGNは極秘裏にその感染者の少女を保護している」
月夜:「……わざわざ厄ネタを自分んちで引き取ったのかぃ? ……嘘だろ?」
アーサー:「驚くべきことに彼女はまだジャームにもなっていない。逆に言えば、彼女にとっては寝起きの
筅:「話を聞く限り今回、横浜だけで済んだというのは実に幸運だろうねぇ」
アーサー:「うん。彼女が本格的に活動に入れば、この星そのものを滅ぼしかねない」
レイン:「全く、悪い冗談だ。現状はちゃんと制御できているのか?」
アーサー:「申し訳ないけれど、最大限人道的な処置を施してなお、彼女には封印処置を施してある」
月夜:「賢明だね。少なくともオレは朝起きたら手前の家が焼却されてたって事態だきゃあごめんだよ。そこまでくりゃあご立派な兵器さ。本人が望む望まざるに限らずね」フンと鼻で笑っておこ。
アーサー:「そこでだ、本題に入ろう。キミたちにはその『件の少女の護衛、及び《
レイン:「───! フッ……なるほどな。何故、わざわざ僕を呼びつけたのか、ようやく納得がいったよ」
エル:「……え? ボクが、そんな凄いご先祖様のウイルスを?」
筅:「これだけの力を持った存在だ。きっと、FHも黙っては見過ごしてくれないだろうからねぇ。」そう言って、身体をクルッと一回転させ、無い胸をボフッと、手の通ってない袖でたたいた後に、「この、美少女☆レネゲイド。薔棘 筅ちゃんにかかれば、お安い御用さ!」
月夜:「なに使命感に燃えてんだい、霧雨の若旦那たち。オレちゃんはお断りだよ。そんな厄ネタに手を焼かせろって? 確かにオレちゃんは有能で優秀だが、世界を肩に乗せるほど正義心は無いのさ。……と言いたいが」
アーサー:「まぁ断っても良いんだけど……。一応、中枢評議会指令だからね、これ」と笑顔で告げる。
レイン:「断れば、我々の立場は無くなる、そうだろう?」
月夜:「おーおー。嫌だねェ。自分の身の丈をわからない奴ぁ。どう見たって厄ネタ中の厄ネタだろうがよ。自衛くらいしようって気にならないのかえ?
……ここまで話したってこたぁ、最初っから途中下車させるつもりはねえんだろ? つまり最初から、地獄直通列車ってことさ。そうだろ?」
レイン:「全く……昔からそういう男だったなキミは。笑顔でどこまでも、自分優位に事を進めて行く」
アーサー:「持てる武器はきちんと使う性分だからね」
月夜:「オレちゃんを武器と評価したことに免じて、真面目に働いてやるさ。報酬はきちんと用意しておおき。こっちだって背後から撃つようなこたぁしたくない」
アーサー:「さて、快諾して頂けたところで、僕たちの新たな支部を紹介しよう」と海を見るように促す。
レイン:「支部? ここには何もないようだが?」
アーサー:「もう来てるからね」
エル:「来てる? 何がですか?」
海面が波打ち始める。海中から何かがやってきている。
そしてソレはゆっくりと海面に姿を現す。
巨大な巡洋艦。鈍色の船体が飛沫を上げ、海水を甲板に滑らせながら海中より姿を現した。
アーサー:「これが僕たちの家になる支部、万能巡洋艦『ヘリオス』だ」
レイン:「
エル:「ここでこれからミンナと一緒に頑張るんですね!」ぱあっと表情を輝かせる。
アーサー:「僕たちはこれから国境無く世界を巡る必要があるからね。艦船であり、潜水艦であるコイツはもってこいなんだ。FHの支配地域にも近づかなきゃいけないしね」
月夜:「なるほど。ちょいとスリル満点な世界一周旅行と」
レイン:「ふむ、これだけのお膳立てをされては、半端な仕事をするワケにはいかないな。このレイン、偉大なるメイフィールド家の名にかけて必ず貴殿の期待に応えてみせよう」
エル:「絶対失敗できない……。でもこれを頑張れば、もっと多くのミンナが幸せになるんですよね、ならやります!」
アーサー:「ああ、期待してるよ。
ちなみに、キミたちより以前にこの船には約200名が乗艦している。ただ、キミたちのように戦闘が得意な人達じゃなくて口の堅い内職向きな人達ばかりなんだけどね。
だから、キミたちの敗北はこの『家』そのものの危機とも思ってくれたまえ」
レイン:「本格的に支部というワケか。……200人の『命』を背負わせる、と。見事な手腕だ、アーサー評議員」
筅:「なるほど、つまり戦えるのは筅ちゃんたちだけってことね! OKOK。これくらいのブラック業務を成し遂げてこそ、美少女ってところさ。報酬は、弾んでもらうよ!」
エル:「ボクらがその人たちの命と幸せを守んないといけない……」
月夜:「……冗談じゃない。フン……。(200人もの命を俺が背負えるわけねえだろうがふざけんなこのクソ……!)」
アーサー:「流石に怖がらせすぎちゃったか。僕も常時乗艦するからそんなに怖がらないで。キミたちは気兼ねなく前線で活躍して欲しい」
エル:「はっ、はい!」
アーサー:「それにもう一人強力な助っ人も乗ってるからね」
レイン:「助っ人?」
アーサー:「エルゴスさんを推薦した人だよ」
エル:「え、ソレって……」
アーサーを先頭にし、5人は甲板へ上る。
そこには、現在の艦の操舵担当以外の全員が揃ってあなた達を迎えていた。
その先頭には、エルゴスには馴染みの深い人物もいるだろう。
Dr.サマエル(以下、Dr.):「やぁ、皆、初めまして。知ってる顔も何人かいるけど」
Dr.サマエル。西洋人とも東洋人とも取れる不思議な顔立ちで国籍も年齢も不明。UGNの研究部門であるアールラボに所属しているということ以外は謎に包まれている人物だ。
月夜:面識あるかな?
GM:
エル:「せんせー! サマエルせんせーも来てたんですね!」駆け寄ります。
レイン:「どうも、Dr.サマエル」
エル:「でもせんせー、ボクを推薦したっていうのは……」
Dr.:「キミは何かと役に立ちそうだからねぇ。気に入った道具は手元に置きたいタイプだから、僕」
レイン:「……関わるもの全て自分の道具扱いか。相変わらずだな、キミは」
月夜:「おや、開口一番ひとでなし発言。氷晶のお嬢ちゃんよりよっぽどひとでなしだねぇ」
Dr.:「手厳しいねぇ。壊れてることを自覚してない
レイン:「自覚しているは自覚していないの次に悪い状況だ」
Dr.:「まぁ僕がこの支部の一般スタッフの統括官だよ。あと、医療班長と例の少女の研究主任も兼任してるから、よろしく」
GM:つまり過労死枠。
レイン:なるほど()
Dr.:「じゃあ早速、キミたちも気になってるだろぉ?」
月夜:「まあね。欠伸一つでこの船が消し炭になるのはあんまり歓迎したくないからねェ。兵器の状態、見させてもらっても?」
レイン:「……おい、まさかこの船に乗っているのか!?」
Dr.:「何を護っているのかは知っておくべきだからねぇ」
筅:「護衛ミッションなのだから、乗っていても不思議ではないからね。いやはや、気になって夜も眠れないくらいだよぉ」
あなた達は機関室に案内される。
案内された機関室。その内燃機関にまるで取り込まれるようにコフィンの中で眠る少女。
月夜:「なるほど。油代が浮くね」
アーサー:「彼女の名前は日向弥生という。……非人道的だと罵るかな?」
レイン:「……仕方あるまい。こうしなければ、明日にも地球は無いかもしれんのだ」
アーサー:「UGNが作成したコフィンも万能じゃない。彼女の発するエネルギーを何かに転換し続けなければコフィンは壊れ、その膨大な熱量は再び外界を焼くだろう」
レイン:「方法は見つかっているのか? 膨大なエネルギーを制御する方法を、だ」
Dr.:「いいや、全然。でもまぁ、アタリはつけてるよ」
エル:「本当ですか!?」
レイン:「ほう?言ってみろ」
すると、Dr.サマエルは突拍子もない事を口にした。
Dr.:「キミたち、神って信じる?」
レイン:「……急にどうした? お前らしくもない」
月夜:「ああ信じてないけど信じてるとも。この世のあらん限りのクソを振り撒く輩だねェ」
エル:「いるかはわかんないけど、いるならその神様も幸せって感じるのかなってところは気になります」
Dr.:「まぁ宗教教義の神なんてどうでもいいんだけど、今言ってるのは『神話の神々』のことだね」
レイン:「ふむ」アタッシュケースを見て、「強大な力を持った者を神と称すならば、それは実在したのかもしれん。
――オーヴァードという形でな」
Dr.:「ん~、流石レイン君は賢いねぇ」ちょっとバカにしてる感じで。
レイン:「……お褒めに預かり光栄だ」ムッとする。
Dr.:「そう。神話に登場する神々の奇跡・逸話の数々。何かに似ていると思わないかい? 僕たちが操るエフェクト、それらに近しいものも多いよねぇ?」
レイン:「古代より奇跡と呼ばれたモノを、ほぼ実現してしまうからな。実際、神話より名付けられたシンドローム、エフェクトも多かろう」
月夜:「ま、そうだね。神話どころか、エフェクトがあれば2匹の魚と5つのパンを2,000人に配ることもできるだろうし、ガリラヤの湖を歩いて渡るだろうし、3日後に復活もするだろうさ」
エル:「た、確かに……。水もないのに氷を作るって、神様ならできそうです!」
Dr.:「じゃあ、《
月夜:「……なるほど。そいじゃ、この船のエンジンにゃあ、太陽の神、あるいは火の神様でも乗っけてる、と」
エル:「ご先祖様が、神様……?」
Dr.:「そう。つまり、神話を紐解けば《
もしかすると、神ってのは純粋なレネゲイドの集まり、最古を超えた原初のレネゲイドビーイングではないかと僕は仮説を立てているんだよ」
レイン:「神々が消えた理由と、ウィルスの共生理論……なるほどな。
神は実在した、ならば、何故、今、神はいない? 神はいかにしてその姿を隠したのか?」
月夜:「なるほどね。確かにとっかかりとしちゃあ妥当だね。しっかし……神話を紐解くんならわざわざこんな船に移るこたぁないだろう?
そいじゃなおさらオレらが集まるべきはこの船じゃあなくて図書館のような気もするんだが……。何か考えがあるのかえ?」
Dr.:「研究の基本は実地調査だよ。僕はフィールドワークは好きじゃないけどね」
レイン:「神話の地をめぐる、というワケか」
Dr.:「ああ! でも幸運なことに便利な調査ドローンが4体も揃ってるじゃないか!」
エル:「ドローンってすごく便利で豪華な飛行機ですよね! ボクあれかっこいいなあって思ってたんです!」
レイン:「……………………」サマエルを睨む。
Dr.:「冗談だって、睨むなよぉ」
筅:「いやはや、《始原種》の調査の為なら例え火の中水の中! どこへでも行くつもりだよぉ!」
レイン:「……チッ、癪だが、ミス・エルゴスの楽しみを奪うワケにもいかんな」
Dr.:「と、いう訳でだ。最初の目的地はメキシコだ」
レイン:「ほう? 随分と熱い地域に行くのだな?」
レイン:中南米のUGNの情勢は知ってますね。
アーサー:「危険な場所であることは承知している。中南米のUGNの情勢はお世辞にも良いとは言えない。現地での支援というのは期待しない方が良いだろうね」
レイン:「未だ亡霊に縋るナチどもとFHが手を組み、現地UGNは壊滅。立て直しもままならん状況だったな」
Dr.:「逆に言えば、僕たちが現地入りしてもそこの情勢を気にすることなく好き勝手出来るってことだけどねぇ。
ただ、目的は間違えないように。僕たちの目的はあくまで《始原種》の調査だ。中南米のFHの殲滅じゃないよ?」
レイン:「承知した。どの道、余剰な戦力などこの船に乗せてはいまい」
Dr.:「その通り。僕たちは少数精鋭。やれることをやるだけでいい。余計なことに首突っ込んで死ぬのも間抜けだからねぇ。
さて、じゃあオーダーを発表しよう。アーくんあとよろしくぅ」
アーサー:「やれやれ。では、僕たちの最初の目的地はメキシコ、その中心部のメキシコシティだ。
メキシコシティといえば古代マヤ文明の遺産が多く発見されている。マヤ文明で最も有名な神といえば……分かるかな?」
レイン:「ケツァルコアトル……太陽神、だな」
アーサー:「そう。ケツァルコアトル、あるいはククルカン。太陽信仰が盛んだった
レイン:「ふむ、めぼしい遺跡は見つけてあるのか?」
アーサー:「近年の開発の一途で観光地の神殿以外はほとんど残っていないね。
ただ、観光地の神殿は何百年も調査・研究が為されても何も見つかっていないということは、恐らく、そこではないどこかに『本物の神殿』があるのだと思う」
エル:「つまり、調べるというより探すとこから?」
アーサー:「そういうことだね」
レイン:「発掘から始める必要がある、か。やれやれ、壮大な任務になりそうだ」苦笑する。
アーサー:「3日後にはメキシコ遠洋に艦を着けるから、そこから小型艇でメキシコに乗り込んで欲しい。あんまり近づきすぎるとメキシコFHに攻撃されかねないからね」
レイン:「国境警備隊気取りか、全く腹立たしい話しだ」
アーサー:「では、諸君の検討を祈る。次の召集までは艦の中でゆっくりしていてくれて構わないから。バーや遊戯室もあるからね」
エル:「遊戯室! 色んな遊びがある場所ですね!」
月夜:「ほうほう。遊戯室。オレちゃん、ビリヤードができるよ。氷晶のお嬢ちゃん一緒に遊ぶかい?」
レイン:「手厚いものだ。……アーサー、船内のスタッフと物資のリストを用意してくれ」
アーサー:「1時間後に部屋に持っていくよ」
GM:と、ここで突然アーサーが大きな声を出します。
アーサー:「ああ! 大事なものを忘れてるじゃないか」
エル:「大事なもの?」
アーサー:「チーム名だよ」
月夜:「フ。そいつぁ確かに一大事だねェ」
筅:「確かに。決まれば締まりが出てくるからね」
こうしてここでセッションは一旦区切りをつけ、各々で『チーム名』の案を持ち寄ることを提案した。
次回、本格的なセッションを前にして、彼らが決定したチーム名とは……?
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