第四章 無職も怒るよ?

第82話

 そして数日が経過した。

 あの後ボロボロの新居に戻ったりダンジョンに行ったりしてアズサを響とさゆりに合流させあれこれ話をして彼女たちを家に帰した。


 その後は天井が吹っ飛んだ我が家の掃除である、疲れた本当に。

 これっ本当にどうしょうか、そんな事を考えながら瞬く間に数日の時間が流れてしまった。


 あの侵入者たち?

 本当に体力がなくなって海に沈むそうになってるところをハルカとアヤメに頼んで助けさせたよ。


 その後あのシャチの姿をした精霊たちで周囲をグルっと囲ませて笑顔でいくつか注意をしてあげた。


 今後、私を含め私の周りにいる存在に危害を加えよう思うならこの子たちが現れて君らをこの海に引きずり込むからね、君たちがたとえ地球の裏側にいても さ…的な話をしてあげたら全員ただでさえ青白い顔をさらに青くして何度も首を縦に振っていた。


 情けない話だが人間というのは圧倒的な理不尽とか心底に叩きつけられる恐怖くらいでしか自身の行動を速攻で変えさせる事はできないのだ。


 罪を犯し実刑を食らった犯罪者が、その罪を確定させた裁判官を逆恨みするような言動をするというのは珍しいことではない。


 日本でもそうなんだから海外ではそんな連中の存在はより顕著だろう。

 まっ日本が外国と比べてそこまで民度が高いとも思ってはいないけどね。

 まあそんなことはどうでもいい。


 ここしばらくは家の掃除だったり今後はあの天井の風穴をどうしようかみたいなことをハルカとアヤメと話したりしながら過ごしていた。


 ちなみにだが連中を私の新居へと送り、私を拉致しようとした黒幕についても素直に教えてくれた。


 ハルカとアヤメには相手の心を読む能力もあるよみたいな嘘をついた状態で聞いたので多分嘘ではないと思うのだ。


 その相手とはあの月城さんと工藤さんに絡んでいたあの男。

 黒山であるらしいのだ。


  ダンジョンセンターで働いてる人間にそんな真似ができるのだろうかと思ったのだが、どうもここしばらくハルカが調べていた事とはヤツの情報だったらしく黒山という人間のきな臭い情報が色々と出てきたらしい。


 何でもダンジョンセンターをはじめとしたダンジョン関連のあれこれを一手に引き受けている国営の組織、ダンジョン開拓省というのがある。


 そこでそれなりに偉いところのポジに親父さんがいるらしい。

 そのコネでダンジョンセンターの職員 として入社、親の七光りでかなり好き放題しているそうだ。


 同僚だったり部下だったりに対しての横柄な態度もそうだが、時には自分の親の権力をチラつかせて直属の上司も黙らせるような真似をしているらしい。


 さらには手っ取り早く出席する為に他人の業績をかすめ取ったり自分の失敗を部下に押し付けたりと本当に好き放題過ぎて少し引いてしまった。


 なんでに世の中にはこんなクズみたいな人間がいるんだろうか。

 クズが偉い立場にいるからである、情けなくて泣けるね。


 とまぁそんな黒幕っぽいやつの情報を掴んだのでさらに数日かけて私はダンジョンセンターの方に足しげく通っていた。


 月城さんに会って話を聞くためだ。

 しかし月城さんにはここ何日もずっと来ているのに一度もその姿を見ることができなかった。


 他の職員に確認しても今は休んでいるので…とか要領を得ない話ばかり、実際にいないじゃないか。

 これが一日二日ならともかくさすがにそれ以上となると私も感づくというものだ。


 これ明らかに何かあったね。

 今日もいなかったらさすがに行動に移そう、そう決めた日も月城さんと会うことはできなかった。


 そんなタイミング、ダンジョンセンターを後にしようとした私に声をかけてきた人間がいた。


 黒山である。


「どうも、誰か探してるのかな?」


「……………」


 無視して出入り口に向かう。


「待ちたまえ、少し話さないか? ダンジョンマスターくん…」


「…………」


 成る程ね、どうやらあの侵入者たちの話もある程度は真実だったみたいだ。

 月城さんの事はコイツに聞くのが速そうだな……。

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