第74話
我がダンジョンの森林地帯に進入する。
この森で採取できるものは本当に増えてきた、正直全てを把握しているとはとても言えない状況である。
それはある意味贅沢な悩みでもあるので私としてはその贅沢さを楽しんでいるところだ。
ダンジョンを行き来するようになって 私個人は足腰か強くなったように思う。
最近は体力もついてきて、ぎっくり腰とかも殆ど気にしなくなってきた。
これが日頃ダンジョンで運動をした成果なのか、それともハルカやアヤメみたいにダンジョンが成長することでスキルの類は一切得られていないものの身体能力的なものくらいは成長していたりするのだろうか。
今度あの2人にそんな話を聞いてみるのも悪くないな。
そんな話は棚に上げて仕事である、私たちが森へ進むと木の枝に青い果実がなった木々が何本も生えている場所に出た。
あの木になっている果実が換金出来る資源だ。
『アクアドロップ』というダンジョン資源であの片手に収まるサイズの実を絞ると濾過や煮沸を一切しなくても普通に人間が飲める水が手に入るという果実なのだ。
確か果実一個で学校のプールをいっぱいにするくらいの水が得られるらしい。
これは値段自体はそこまで高くはないのだがダンジョンセンターの方で月城さんから換金しに持っていた時に次も是非にと言われた資源なので今回も採取していく。
人間は水がないと生きていけないからね、きっと社会の色んな所で役に立っているのだろう。
私はあの農業とかの人が使うコンテナを一つ手に持ち背中には昼ご飯とか水筒を入れたリュックサックを背負っている。
このコンテナに彼女たちが『アクアドロップ』を採取して入れるという方式である。
ある程度量が集まったらアヤメに頼んでキューブ化してもらう。
「『アクアドロップ』がこんなに豊富になってるなんて凄いですね」
「そうなのかい?」
さゆりの呟きに私は返事をした。彼女はよくダンジョンでのバイトの休憩時間に本を読んでいるのを見かける、やはりダンジョンの情報にも目を通しているのかも知れないな。
それにしてもダンジョンで読書って……ある意味大物な子である。
「はいっ他のダンジョンでも森林や樹海のロケーションならあるにはありますがこんなにこのアクアツリーがまとめて生育してある場所はありません」
アクアツリー、『アクアドロップ』がなるあの木の名前だ。
実に分かりやすい名前だ、見た目は普通の木々なのだがわりと珍しいらしいダンジョン原産のファンタジーな木である。
「ワタシの念動力で落としまくるから皆は拾って~~」
「分かったわ!」
「うんっ了解しました」
アヤメがスキルで一気に終わらせにかかる、これは私も採取に参加する流れだな。
さゆりとお互いに頷きあって響とアズサと共に地面の『アクアドロップ』を拾い始めた…。
次に向かった場所は木々は普通なのだが、その根元に赤く大きな花が幾つも咲いていた。
その花弁は肉厚で私たちの世界で言えばラフレシアと呼ばれる世界最大の花と大差ないくらいの大きさである。
向こうは食虫植物でかなり独特な臭いを放ち餌の虫などを集めるらしいがこちらの方はそんな感じはしない。
普通に大きいだけで綺麗な花である。
そのきれないな花びらを抜くのだ。
これが換金できる『シュポラの花びら』と言うダンジョン資源だ。
この花がシュポラというらしく、この大きな花びらを加工すると女性に大人気 のサプリメントの原材料となるそうだ(ダイエット効果と美肌効果のある高級サプリらしい)。
こっちは換金の単価が結構高く花びら一枚で確か四万円くらいするのだ。
もはや砂浜の『ブルーシェル』をコツコツ集めていた頃の私ではないのさ。
時間にして昼の少し前くらいになった頃合い。
コンテナを三回くらいいっぱいにして中身をアヤメにキューブ化してもらい手の平に乗るくらいの大きさのキューブにしてもらった。
もちろん採取した資源ごとにキューブ化してもらったので複数のキューブがコンテの中をコロコロしている。
「よし今日の採取はこれくらいでいいだろう」
「まだ昼前ですけど?」
「大丈夫大丈夫、そもそも取りすぎたとしても換金に行く手間が増えるだけだからね…」
一度にあまり多くを換金しにいくとダンジョンセンターの職員にガチでコイツは何者なんだと目をつけられるのだ。
何よりダンジョンセンターに運ぶ時はアヤメのスキルを隠す為にキューブ化を解除するので運ぶのも地味に大変だったりする。
最近は換金の効率も上がってある程度たまったら持っていくというふうにしていたら採取したアイテムがむしろかさばってしまっている状態だ。
キューブ化してなかったらせっかくのダンジョン資源が大変なことになっていただろう。
一気に換金してしまえばいいのだろうがあんまり様々なものを一気にお金に変えてしまうとやはり目立ってしまうし…う~ん悩み所だ。
ダンジョンの育成もだいぶ進んだとはいえ向こうでの面倒ごとというのは避けたい。
そんな言葉を言い訳に換金も気が向いた時にする感じになってきてる私だ。
お金に余裕ができたからこんな感じなんだろうなと自分自身に呆れてしまう。
「一河さん、これで私たちの仕事は終わりですか?」
「そうだね、もう残りの時間は自由時間にしていいよ」
今日は学校は休みというので朝から彼女たちに来てもらった。
本来は週に二、三度放課後の部活まで終わった後に来てもらっているのでこの時間に彼女たちがダンジョンにいるのは少し珍しいのだ。
「ならまたこのダンジョンを探索していいですか?」
「もちろん、けどモンスターは基本的に こっちが攻撃しなかったら攻撃してこないはずだから攻撃はしたらだめだよ」
「はいっわかりました」
「それと私とアヤメも一緒に行くから、それは問題ない?」
「はいっ!」
一応は私も年長者だからね、彼女たちが危険なところへ行ったりしないかを見ておく必要はあるだろう。
まあこのダンジョンの危険な所に心が全くないしアヤメがいれば基本は大丈夫な気もするけどね。
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