第4話

 ダンジョンゲートを越えた先、そこには白い砂浜とどこまでも続く青い水平線が広がっていた。


 私は丸い形の島に来ていた。

 そこは中央にははわずかばかりの緑があり。

 それ以外は全て砂浜という円形で直径百メートルあるかないかくらいの島の真ん中に立っていた。


 そこには自分以外だとダンジョンゲートも出現していた、と言うか。


「なっなにもなさ過ぎるなこれは……」


 ダンジョンとは資源の宝庫であるはず。

 だが正直に言って何もない。

 どうなってんの?

 これ単なる小島じゃないか。


 いやっ落ち着け、落ち着くんだ。

 『ダンジョン』というスキルを調べた時に確かこの情報もあった。


 スキルで新しいダンジョンを手に入れた場合そこは生まれたてのダンジョンなのだ。

 そのダンジョンから禄な資源というものは手に入れることは不可能なのだと。


 何故ならここからダンジョンを育成していくのが『ダンジョン』と言うスキルだからだ。


 スキルを持つ者によって条件は様々があるのだがとにかくダンジョンを成長させる条件というのがあり。

 それを達成することでそのダンジョンが成長する。


 今は小さな小島でしかないここが物理的に大きくなるのらしいのだ。

 本当かよ……。

 流石にネット情報なのでどこまで本当なのかと言われると信憑性とかわからないよなっと冷静な部分が言ってきた。


  他に『ダンジョン』と言うスキルを持つ人のネット情報ではこれくらいの規模の小さな小島から人が問題なく住める有人島クラスにまで島が大きくなり。


 更に資源の採集ポイントとして樹海のような深い森やらもの凄い山脈、あるいは巨大な地底湖などなど。


 そんな感じのロケーションがダンジョンが成長したタイミングでいつのまにか生まれ、そこからダンジョンの資源を確保できるポイントが出現しているそうだ。


 それらのポイントは増えることはあっても減ることはなく。

 資源を取り尽くした場所もしばらく放置すればその資源が復活しているというダンジョンの性質は『ダンジョン』というスキルで得たダンジョンでもそのままらしい。


 無限に資源を手に入れられるダンジョン。

 それを自分個人で所有することができる。

 まさにこの『ダンジョン』とは夢のスキルなのだ……おそらくは。


「まずはこのダンジョンを成長させる条件を私自身が見つけなくちゃいけないってことか…さてっどうしたものかな…」


「そんなもの、探そうと思っても見つかないわ。知りたいのだったらダンジョンコアである私たちに聞きなさい」


「そうそうっ分からない事は知ってる相手に聞くのが一番だと思うわ」


 いきなり話しかけられた。


 チキンな私は速攻で振り返る。

 そしてバットを構えた。

 するとそこには黒い二丁の銃が浮いていた。


 急過ぎる、なんだこれっまさか喋ってるとでも言うのか!?


「侵入者発見! 食らいなさいなっダンジョンコア・ダイレクトアターークッ!」


「えっえちょっなん……」


 ズゴムス。

 かっ片方の拳銃がグルグル回りながら私の頬にグリグリしてくる!?


「こっこれは一体何をしてんだ!?」


「私の片割れがあなたと遊んでいるわね」


「そ~れそれそれ~~~!」


「ちょっちょっとたんま! ってかさっきから拳銃が宙に浮いてしかも喋るとか意味が分から…むごごっ!」


 や…やっと離れた。

 何なんだこのクール系とテンション高すぎ系な黒い拳銃たちは。


「こっちはダンジョンコアよ、しゃべるくらい普通にするし意志もあるわ」


「そうそう~スキルを得てこのダンジョンを得た人間がどんなもんか見に来たのよワタシたちは~」


「はっはあ、なるほど?」


 ダンジョンコア? 何それ知らない。ネット情報にそんな存在載ってないよ。

 いやっ確か…都市伝説かなんかでそんな話を聞いた事があったな…。


 ダンジョンにはダンジョンコアが存在する、それこそがダンジョンの命だと。

 破壊されればダンジョンは消滅するなんて話も確かあったような……。


「あなたはスキルの力でここに来た、ならあなたは私たちを守るために来た存在ということなのよ」


「そうなのよ~ボディガードお願いするわね~」


 守る……私がこの銃たちを? 意味がわからない。

 しかしダンジョンコアか…そもそもダンジョン自体謎が多いというか謎しかない存在ではある。


 ダンジョンコアなんてものがあったとしても別段 珍しいことではないのかもしれない。


「つまり、ダンジョンを成長させる方法っていうのは君たちを守ることなのか?」


「その通りよ」

「一体何から?」


「そんなのモンスターからに決まっているでしょ」

「……なんだって?」


 モンスターからダンジョンを?

 それおかしいだろう、モンスターってのはダンジョンが探索者たちを倒す為に生み出すとされてる怪物たちの筈じゃあないのか?


「分かりやすく言えば、この世界に人間という存在は、あなたが招き入れたりしない限り訪れることはないの。ここはあなたのいる世界と全く別の世界に作られたダンジョンだから。代わりにあなたの世界以外の世界から招いてもいないのに現れる存在がいるのよそれがモンスターね、そのモンスターたちを倒すことでソイツらの魔力を吸収し成長する。それがこのダンジョンなのよ」


「別の世界の……ダンジョン……」


「おそらくだけどあなたの世界に出現したダンジョンも似たようなものなのでしょう」


「そうなんですか?」


 いやっ確かにダンジョンでの死亡事故というのはある程度の期間で必ず起こってしまうものではある。


 しかしそれと私たち人類がダンジョン相手に得る資源の量との釣り合いが取れていないような気もするのだが…。


「他のダンジョンが何を考えているのかまでは知らないわ、ただ甘い話には裏があるということは覚えておいた方がいいかもね」


「甘い話には裏があるか、それもそうだね。心に留めておくよ」


 まあ例え裏があっても今更地球人類にダンジョンから手を引けなんて私が言っても誰も聞きはしないのだろうけど…。


「それと、とにもかくにも今あなたがするべきことは私たちを守り、このダンジョンを成長させること。それがひいては必ずあなたの為になるでしょう」


「働きには報酬をちゃんと用意するのがワタシたちだよ!」


  宙に浮いた銃の言葉をどこまで信用していいのだろうか。

 しかし『ダンジョン』というスキルによって導かれた私はこのダンジョンコアを名乗る黒い銃たちを利用してでも自分の人生を立て直さなくてはならない。


 その為ならモンスターとも戦ってやる。


「分かりました。ダンジョンコアという君たちの話を聞きます」


「判断が速くて助かるわ」


「それじゃあさっそく……チュートリアルと行こうじゃないの!」


 チ、チュートリアル?

 なんか後から話す方、やたらとテキトーな物言いが目立つな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る