第12話 領主との面談(4)
職能判定を終え、ナチオ男爵邸の一室で3人が揃ったところで会話の口火を切ったのはアリスだ。
「『かっこかり』はよく分かんないけど、エリ姉が『聖女』は当然として、あたしが『大魔法使い』ってのと、レオ兄が『神官』ってのにも驚いたよ!」
「そうね。でも『かっこかり』が取れたら二人の職能は納得できるわ」
明るいアリスの言葉に真顔で答えるエリ姉、僕としては知っていたから改めての驚きはないが知ってしまった二人が今後どうするのかを聞いておきたい。
「今ナチオ男爵たちが話し合ってるけど、王様と会って勇者に同行しろって言われたらどうするの?」
僕の質問に真っすぐな視線を向けてエリ姉が答えてくれた。
「断ることはできないのよね?だったら同行してお仕事を全うするしかないと思うわ」
エリ姉の言葉にアリスがすぐ反応した。
「それって、あたしかエリ姉か、レオ兄と別れるかも知れないってことでしょ?エリ姉はそれでいいの?」
エリ姉は困ったように眉を寄せて答える。
「二人と別れて行くのは本当に嫌だけど、断れないなら早く終わらせて二人の元へ早く帰ることを考えようと思うの」
やっぱそうなるよなぁ。
「エリ姉と一緒にあたしたち、三人で行けないのかな?」
それを判断して決めるのはフェルナン・ブリュノー国王だから。
「それは……国王が許さないかも……」
僕が悩ましく小さな声で答えを返すと二人もしょげてしまう。
この場をお通夜状態にしてしまったことに少しの気まずさを感じているとドアがノックされた。
「どうぞ」
僕が答えるとアラベラさんが入ってきて静かに告げた。
「ナチオ男爵がお呼びなので応接室へ移動ください」
僕たちはもう一度応接室へ戻りナチオ男爵との面談に臨んだ。
「君たちには国王と面談してもらうこととした。既に鳥便で国王には手紙を送り出したが、国王と面談するには一か月ほどかかるだろう。だから一度ヴォージラールの町に帰って旅の準備をして待機してもらいたい」
ナチオ男爵からの言葉にエリ姉、アリスと視線を交わして僕が代表して答える。
「えっと、いくつかお聞きしたいことがありますが良いでしょうか?」
「かまわんよ。なんだね?」
「まず、正しい『聖女』でも『大魔法使い』でもない二人が国王と面談するのはどうしてでしょうか?」
最大の疑問をまずは聞いてみた。
「ふむ。私は(仮)は素養のある者に見られるものだと考えた。つまり(仮)はいずれ無くなり二人は『聖女』『大魔法使い』になるだろうと思っている。簡単に言えば『見習い』の表示だろうということだ」
「見習いだと仰るなら既に『聖女』『大魔法使い』がいるのではないでしょうか?そちらを…」
僕の言葉をさえぎってナチオ男爵が言葉を続けた。
「では、その『聖女』『大魔法使い』はどこにいるんだね?今私の目の前には『聖女』『大魔法使い』になるであろう人たちがいて、それを国王に報告しない貴族がいると思うかい?」
なるほど。これは逃げられないな。
「そうですね……」
僕が答えに行き詰っているとエリ姉が告げる。
「あの、私はヒールなど癒しの魔法を使えますが、それはここにいるレオンの補助があって成しえています。国王との面談とその後のことを考えるならレオンの同行を許可いただきたく思います」
すぐにアリスも右手を挙げて続く。
「あたしも!レオ兄に魔法制御を教わっているので一緒に行きたいです」
「二人とも……」
ナチオ男爵は少し考えて答えた。
「良いでしょう。同行して王との面談の際に告げてみればよいです。ただね、レオン君は神官(仮)でしょうし、補助にしても魔法制御にしてもレオン君より教えることが上手い人材は王都にたくさんいると思うので面談の後に同行できるとは限らないのでそれは覚えておくように」
ナチオ男爵からの言葉にはエリ姉が笑顔で答えた。
「はい。同行を許可いただきありがとうございます」
その後、ナチオ男爵邸で孤児院では絶対食べられない豪勢な食事をとり、一泊してから教会へ帰る途についた。
僕は帰り道で馬車に揺られながら今後のことに思いを馳せた。
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