第18話 シュード
「これからどうするのかしら? コウセイ」
シュティはチーム”ネビュラ”のクリスタルを破壊。
【”田舎の城”が解放されました】
「俺、ジーク、シュティ、マスタング。四人だけじゃギルドが結成できないな……」
嘆息し、頭をがしがしと掻く。
「あん? それならオレに心当たりがあるぜ?」
「は? お前が?」
「ネズミ」
個人チャットを開き、誰かに声をかけるマスタング。
『あい? 兄貴どうしました?』
「さっさとこい!」
『へ、へい!』
俺も個人チャットを開き、
「ジーク。最奥部へ来てくれ」
『りょーかい!』
見えなくても、敬礼しているのが分かる。
数分後。
「やっほー。どうするの? ギルド解散しちゃったけど……」
「それなら問題ねーよっ!」
「ひっ! この人たちだれ?」
「こっちはマスタング。あっちはシュティだ」
「そして、僕がシュードだよ」
ジークの後ろからアフロヘアの小柄な男が現れる。どこかびくびくとしていて頼りない印象を与える。
「これで五人そろったぜ? ギルド結成しあいつらを蹴散らすぞ!」
「おう。分かった」
コンソールを操作し、ギルド申請を送る。
【チーム”コウセイ”に”シュティ”が参加しました】
【チーム”コウセイ”に”マスタング”が参加しました】
【チーム”コウセイ”に”シュード”が参加しました】
【ギルド”コウセイ”が結成されました】
「よっしゃ! オレの邪魔をする奴は殺してやるぜ!」
「とりあえず、クリスタルを設置しないといけないわ」
「ああ。そうだな」
俺は台座をタップ。
クリスタルを1億を設置。
「1億!? なんでそんなに持っているのよ!」
ジークが驚きの声を上げる。
「コロセウムの副産物だな。そいつは二つ名持ちのPvP専門のKPだからな」
「よし。ジークは城壁上部からの狙撃。シュティはここで待機」
「ネズミは城内にトラップの設置だ。オレとコウセイが前衛で叩く!」
「了解」「分かったわ」「へい」
マスタングは俺を一瞥し、こくりと首肯する。
「はっ! てめーが前衛なららくしょーだな」
「コウセイ。この子はどうするのかしら?」
シュティは香弥の肩を掴む。
「シュティの言った通り、その子は香弥をベースにした人工脳らしいな」
「人工脳?」
「おうおう! おもしれーことになってんじゃねーか!」
マスタングは嬉しそうに香弥を見定める。
「へっ! こいつは面白い」
「……シュティ、メッセの通り会話ができないらしいんだ。何か分からないか?」
「それは、アタシにも分かりませんわ。ここでは設備も足りませんし……」
「はっ。コウセイさんよぉ。こいつNPC扱いになってんぞ? 攻城戦が終わりしだい消えっちまうぞ?」
「それが問題だ。攻城戦終了まであと、一時間と三十八分。香弥をどうにかして、保護しなければならない」
出入り口のドアが勢いよく開く。
「いたぞ!! こっちだ!」
大きな斧を持った大男がずかずかと入ってくる。
「敵!?」
「うだうだ言っている暇はねーよだな!」
マスタングは剣を引き抜き、一瞬で間合いを詰める。
すれ違いざまに切りつけ、その勢いを殺すことなく回転。もう一撃叩き込む。
斧を振り下ろす大男の攻撃を回避し、俺も剣を振るう。
寸分違わず首を跳ね、HPゲージを一気に削りきる。
その後ろからもう一人。
「ふっ」「へっ」
マスタングと視線を交わすと、次の目標に狙いを定め、一閃。
交差する二つの剣が白銀の光の軌跡を描き、敵プレイヤーを切り刻んでいく。
「このまま押し込むぞ!」
「言われるまでもねぇー!」
大量のプレイヤーを押しのけるように、徐々に前戦を押し返していく。
『配置についたよ~』
ジークの呑気な声が響く。
「撃ちまくれ!」
『りょ~かい!』
後方から複数の矢が地上へと降り注ぐ。
足にダメージを受け、”鈍足効果”を受ける者。
腕にダメージを受け、”筋力低下”を受ける者。
頭へクリティカルを受ける者。
様々な状態異常を受けた者を俺とマスタングで切り落とす。
マスタングと俺の間をすり抜ける剣士。
「しまった!」
「いや、問題ねぇよ」
にやりと微笑するマスタング。
ドアにとりついた剣士はイバラに絡め取られ、身動きできなくなる。
「言ったろ?」
「あのシュードの力か?」
「ああ。あいつはトラップ系の魔法、アイテムを得意とする。まあ籠城するにはもってこいだろ?」
「ふ。違いない。後ろ!」
マスタングは振り向きざまに敵プレイヤーを切り刻む。
近くにいた騎士にとりつき、頭を城壁にぶつける。
「お前の相手は、俺だ!」
剣で高く突き上げると、騎士の頭に矢が突き刺さる。
マスタングの目の前で氷魔法が展開される。
「はっ! ふざけた真似を!」
マスタングは跳躍、氷塊を叩き切り、そのまま敵魔道士を地面に叩きつける。筋力パラメータだけで圧殺。
「いいね。いいね! 血がたぎるぜ!」
マスタングが恍惚の表情でバサバサと切り伏せていく。
それに怯えたプレイヤーは逃げ惑う。
そちらからの突破が不可能と判断した一部プレイヤーが俺に向かってくる。
が――
「甘い!」
地面に手をつけ魔法を使う。
突如、地面の左右が隆起し、ワニの口のように閉じる。その幅、五十メートル。
圧殺されたプレイヤーの残骸だけが取り残される。
「な、なんだ!? あいつら……」
どのプレイヤーが発したかも分からない声を聞き、数百もの敵を切り刻んでいく。
目配せするとマスタングはしゃがみ、その頭上を俺の鋭利な岩が飛んでいく。
プレイヤーの多くがその魔法に貫かれ、HPをゼロにされる。
後ろではいくつもの爆発と、矢。
シュードとジークの援護射撃が敵ギルドを寄せ付けない。
飛んできた矢をひらりとかわし、岩を投げつける。
弓を弾かれたアーチャーの足を切り飛ばす。
「ぐっ!」
その場で頽れるアーチャーの胸を貫く。
「は。硬いな……」
「防御には自信があるんでね!」
アーチャーは太ももに仕込んだダガーを引き抜き、こちらの剣を弾く。
「まだやんのか!?」
地面が隆起し、アーチャーが逃げ出す。
「へっ! おせーよ!」
マスタングがアーチャーの首を切り落とす。
呆気なく死ぬアーチャー。
「随分、硬かったな。あいつ」
「どうせ、DEF特化だろ? はっ! まだくるぜ! てめーはさがってろ!」
「何か考えでも?」
「――切り落とす!」
マスタングが敵プレイヤーを切りまくる。
『一部プレイヤーが城内に入った!』
シュードか。
「俺がいく。マスタングはこのまま!」
「へっ! 言われるまでもねぇ!」
元来た道を引き返し、城内に入る。
シュティは香弥を守りつつ、魔法で牽制する。
「殺してやるよ! 嬢ちゃん!」
槍を構えたモヒカン男がシュティを突く。
杖で防御しつつ、魔法を展開。
氷の氷柱がモヒカン男を襲うが、すべて回避される。
槍がシュティを狙い、難なくかわす
――が、その先には香弥がいる。
「しまった!」
NPC扱いの香弥はHPが10くらいしかない。初心者の素手攻撃二発で沈むHPだ。
直後、モヒカン男の両腕が宙を舞う。
「な、なんだ!?」
モヒカン男が嘆く。
俺は空中で槍を掴むと反転。
「香弥は殺させねぇっ!」
投擲。
モヒカン男の頭に槍が突き刺さり、死体になる。
下から火球が飛んでくる。
素早くコンソールを操作。
【魔法”ファイヤボール”の弾丸を購入しました】
「な、何をした!?」
魔道士がざわめくが、遅い!
懐に入ると、剣を振るい、足で床をトンと叩く。
「まだだ!」
魔道士は振り向き、杖をかざす。
床が隆起し、鋭利な岩に貫かれる。
魔法”加速”。
移動速度を上げた俺は魔道士の背後をとり、頭から袈裟切りにする。
「弱い!」
「あらら。さすがコウセイですわ……」
若干引いているシュティ。
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