第13話 両想い
正直、理央の反応はどうなるのかを想像できなかった。
俺の絵を見て、キレるかそとも感動するか、あるいは混乱するか。理央はある意味予想不可能の人だった。
だから、好きになったかもしれない。だって、いつも面倒くさいことを一切関わりたくないというスタンスの理央は、見ず知らずの俺が馬鹿にされるところを見て思わず庇ってくれて、困っていた俺を助け出す。そして、人にあまり見せない可愛さとドジなところも愛しく思った。でも、すごく恥ずかしがりやで、こんな公開告白されたらどう反応するかは正直心配していた。
まあ、もうやったことだし、彼女の返事を帰ってくるまで待つしかなかった。
案の定、理央は俺の絵を見た後、美術室にいる俺を会いに来てくれた。すごい勢いで門を開き、彼女の表情からいったいどんな心境なのか読み取れなかった。
「おはよう。」
「何がおはようなの?何なの、あれ?」
「あれって?」
俺はとぼけていた。そしたら、理央の顔が一瞬赤くなったことを見えた。
「文化祭の絵。あれどういう意味?」
「あれか?そのままの意味だけど。」
「だからどういう意味なの?何であんな絵を描いたの?」
「好き?」
理央は俺の問題を理解できなかったのか、それともどう答えすれば躊躇したのか、しばらく返事をこなかった。俺は席から立ち上がり、彼女へ近づいた。二人の距離がどんどん詰めていて、理央は思わず後ろに移動した。だけど、すぐ後ろにある壁に当たって、行き場がなくなっていた。
「好き?」
「だから…そのどういう意味って?」
「絵が好き?」
「すごくいい絵だと思うけど、でも恥ずかしいから、展示されて皆に見られて…その…私はあんなふうに…実際は絵みたいに美しくないのに、あんなふうに描かれたらさあ…なんか詐欺か何か…実物の美化しすぎというか…」
うまく説明できない理央、自分の気持ちを正確な言葉で伝えられない理央ってとても可愛いだった。
「Beauty is in the eyes of the beholderという
「何でいきなり?知ってるけど…」
「美は見る人によって異なるという意味だ。俺から見る理央そのままだから。十分美しいだから。嘘のない美しさだ。」
これを聞いた理央は嬉しそうになったけど、必死に自分の表情に出さなかった。
「あなた今日はおかしいね、恥ずかしい言葉の連発だね。」
「ここまでしたから、まだ分からないか?」
「いや、その…勘違いしたら…良くないってさ…」
俺は理央のくちびるにキスした。軽く触るように。理央はあまりのショックで目を大きく開いた。離れた時、彼女の顔はもう真っ赤になった。
「遠山理央、俺はあなたが好きだ。俺の彼女になってくれない?」
頭の中に整理したように、理央は俺を見たまま何も言えなかった。
「好きだから、あなたがそばにいないと落ち着かなかい。好きだから、毎日あなたと会うことがとてもうれしい。好きだから、あなたを思いながら絵を描くことが幸せなこと。好きだから、あなたと一緒に過ごす時間ってあまりにも早く過ぎたことに嘆いた。だから、あの絵で自分の気持ちを伝えたかった。直接に言ったら、あなたが逃げるかもしれないと思って、だから最近ずっとヒントをしていた。運動会のことだって、俺らの距離を詰めたかっただめにやった。」
「だから、あれは罠だね…」
「そうしないと、いつまでも寺島のままだろう。理央が俺の名前を呼ぶ声が聴きたかった。」
理央がこれを聞いて笑顔になった。
「そろそろ返事をくれないか?」
そしたら、理央は何も言わずに俺の制服のネクタイを自分の方に引き寄せて、俺にキスした。
「私の答えがこれです。寺島修治、今日から私の彼氏です。よろしくね。」
理央らしい答え方だった。ストレートで、飾らない、インパクト十分だ。
「よろしく、彼女さん。」
「ああ、もう…恥ずかしいから、やめてよ。」
「誰もいないし、いいだろう。」
「いや、あの絵は全校生徒と先生たちに見られたら…何で私にだけ見せないの?」
「あれはもう一つの意味があるだな。」
「何?」
「俺の女に手を出すなという警告。」
「独占欲強いね、吉祥寺男さん。」
「君は吉祥寺男さんの彼女さんだけど。」
「ああ、もう言わないでよ…」
両手を赤くなった顔を隠そうとした理央ってやっぱり可愛かった。
後日の話だけど、俺の絵はあまりにも学校の話題になってから、俺たちは担任の先生に呼ばれて「健全な男女付き合い」みたいのことを散々聞かされた。実際のところ、先生はこんなことしたくないって丸見えだけど、多分校長先生に指示されてやったと思った。むしろ、先生の方はすごく応援している態度で、俺たちがカップルになったことにやっぱりそうなったかと思っていたみたい。
クラスメイトも大騒ぎになって、からかわれた日々が続いていた。もちろん、運動会の件で手伝ってくれたあいつらにもちゃんとしたお礼をした。
でも、俺はそれらのことに何とも思ってなかった、困ってもいなかった。だって理央と両想いになって付き合っていたことが一番重要だ。
ああ、言い忘れたことがあった。文化祭後、俺が描いた絵を理央にプレゼントして、今は彼女の部屋に飾っていた。恥ずかしいと言いながらも、俺たちの家族にからかわれでも、彼女は俺の絵を誇らしげに飾ってくれた。
だって、これは俺たちの最初の「愛の証」だから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます