第12話 発覚
理央は運動会当日の「衝撃」から回復するまで少し時間がかかった。優勝メダルをもらった後、状況を理解しようとするために俺に聞いた、
「何で下の名前で呼び合いたい?苗字のままダメ?」
「じゃ何で下の名前はダメ?」
「いきなり呼び名を変更する必要がある?」
「約束されたでしょう?レースの前に。」
「こういう要求だって知らないじゃん。」
「理央って約束を守らない人なんだ…」
「分かったわよ。下の名前でいいよ。」
「じゃ、早速ですが、俺の名前を呼んで。」
「ええ?何でよ?」
「理央…」
「修治。満足でしょう?」
「よく出来ました。」
俺の笑顔を見た理央は本当に腹が立ったように見えたが、その表情はとても可愛いだなと思った。
実はもう一つのことを理央に内緒した。
二人三脚競走の件はクラスメイトに頼まれてからの仕掛けだった。レースの候補を話し合っている時、俺と理央の名前を挙げて欲しいと言った。そのクラスメイトは驚いた顔で俺を見た。
「寺島、お前はこういうことをする目的って、もしかして…ああ、そういうことか。OK、俺は手伝うから、成功したら俺に何かを奢れよ。」
ニヤニヤしながら、こう言ったクラスメイトは俺の考えを見抜いた。
まあ、図星だ。俺は理央のことを好きだ。だから、彼女と一緒にいたいし、友達以上の関係になりたかった。
だけど、俺たちは知り合ってからずっといい友達のままで、どうやって理央に自分の気持ちを打ち明けるか、とても困っていた。それで、少しづつ理央に接近して、いいタイミングで告白しようと思った。
初めてこういうことをするから、一番いい方法なんて知らなかった。でも、明白なのは俺がもし直接告白したら、理央は多分俺から逃げると思った。だから遠回りのやり方しかできなかった。まず、理央が自分で俺のことを異性として意識し始めて、それから俺の気持ちを気づかせたかった。
二人三脚競走の優勝でお互いの呼び名を変えることが第一歩だった。
そして、次の作戦は10月の文化祭だ。
夏休みから、理央は何度も俺が出展予定の作品を見ようと言い出したが、それは無理だから。だって…
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私は混乱状態で修治の罠にはめられた。
どう考えてもおかしい。だって、何でいきなり下の名前で呼び合いたいなの?
実は私はどうしてそんなに嫌と思ったのは、理由があった。
二人三脚競走の準備をしているうちに、修治に対する考えが変わっていたことを気づいた。今まで彼とはいい距離感で友達として付き合っていたが、レースの準備中に彼のことを男として意識し始めた。あんな近い距離で体を密着させて、自分のドキドキを隠すのは大変だったから。
で、今は下の名前で呼び合うって、これは恋人同士がやることでしょう?
修治のことを好きでも、付き合うって別問題だと思う。別れたら、この親友を無くすことになる、これだけは絶対嫌だ。
でも、この男はもし誰かに取られたら…考えているだけイライラする。
こういう一喜一憂の状態が続くなか、10月の文化祭がやって来た。
修治の作品は何だったのかをずっと伏せたままなので、一体どうして私にも言えなかったかずっと理解できなかった。早速、美術部の展示スペースに行ったが、そこに集まった生徒はなぜか騒いでいた。近づけたら、目の前にあった絵を見た自分はその場から動けなかった。
絵の中にいる人は私だった。
ど真ん中に自分が笑っていた横顔が、いくつの角度から私がバドミントンをプレーする姿を円形に囲まれた絵だった。
自分が絵になるってこういう不思議な感じだなって初めて知った。これって、修治から見た私なの?私はそんな笑顔をしたことあった?いったいいつ私のプレーを観察したの?
そして、一番知りたいのは、どういう思いで私を描いたの?
周りの生徒はこの絵に描かれた人物が私だと気づいて、また騒ぎ始めた。でも、そういう声が私の耳に届かなかった。
だって、絵のタイトルを見た瞬間、私はもう思考停止の状態になった。
タイトル:「女神」
作者:寺島修治
吉祥寺男、恐るべし。
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