第9話 部活
寺島と私は別々の部活部に所属していた。
言うまでもないが、寺島は美術部に入っていた。そこの特徴は自由に活動できることなので、みんなは自分のペースで作品を作れる。週に一度の進展会議はあるけど、それは大体30分以内で終わらせることができる。作った作品は主に学校の年に二度の展示会に出展すると、外部の芸術コンテストに参加することになる。
寺島は「吉祥寺男」として知られていたが、彼の芸術の才能も地元では結構有名だった。実家の和菓子屋の宣伝材料を作る以外にも、中学時代以来学校行事のポスターなどの作成依頼も結構来ていた。実際にこういう依頼からお金がもらってないが、彼はそれらのことを練習のチャンスだと思って引き受けたから、作品を積み重ねたうち、着実に自分の腕を磨いていた。
私は中学時代からバドミントン部に所属したので、高校に入ってそのまま継続している形にこっちのバドミントン部に入った。別に国家代表とかを目指すつもりはないし、ただ運動したくて、でも炎天下で汗を流すことが嫌だから、バドミントンは私に最適だと思っただけ。それにスマッシュする度の感触と音が好きで、いいストレス発散だた思った。
夏休みが始まり、うちの高校の生徒はこの時期に学習旅行と短期留学することが多いだ。吉祥寺男さんは吉祥寺から出ることに興味がないので、夏休みの時は10月の文化祭に向けて準備をしたいと言った。私は10月に東京都の高校新人戦が控えるなので、夏休み中に3泊4日の合宿へ行くことになった。
合宿から帰って来たその日の昼、お土産を寺島家に持って行ったが彼はいなかった。店番だと思ったけど、寺島ママは彼が学校の美術室にこもっていたと教えてくれた。
「何だか行き詰まっただね。」
「何をですか?」
「次の作品のテーマはまだ決まってないみたいで。」
「まだ決まってないですか?珍しいね。」
「学校まで行ってあげてくれる?さっき連絡しても携帯を出ないから。もうそろそろ夕飯の時間だしね。」
「分かりました。任せてください。」
昼下がりの学校はかなり静かだった。夏休みだし、こんな時間まで残っていた学生は少なかった。私は美術室へ向かって、案の定寺島はその中にいた。でも、様子はいつもと違った。
「何するの?」
「ああ、合宿から帰って来たんだ?」
「そう、さっきあなたの家にお土産を届けて行った。で、お母さんが心配していたので、様子見に来て欲しいと言われて。」
「心配することはないと思うけど。」
「テーマはまだ決まってないって?」
「まだピンとこないから。合宿はどう?」
「疲れた。いろいろで。」
「人付き合いで疲れたか?トレーニングではなく?じゃ、新人戦出られそう?」
「人付き合いの方は疲れた、あまり話が合わなくて。私って、やっぱり一般的な高校生じゃないね。老人の魂は高校生の体にいるみたい。新人戦はどうなるか分からないよ。明日から選抜試合があるし。」
「出られるといいね。」
「出れなくても別にいいよ。バドミントンさえできればそれでいい。ああ、話題を逸らすなよ、何でテーマを決まらないの?」
「なかなか決まらないが、理由が分からない。」
「まず、どんな作品を作りたいの?絵?それとも彫刻とか?」
「絵。」
「自然風景?人物?もの?」
「分からない。」
「珍しいね、いつも決めるのは早いのに。じゃ、明日から学校内に歩き回ればどう?部活で学校にいる生徒はあるじゃない、皆の活動や姿を観察して、そこからアイディアが浮かべるかもしれない。」
「なるほどね。」
「ここにこもるよりいいと思う。」
「ありがとう。」
「何で?」
「まあ、この行き詰まった俺を助けたかもしれないから。」
「テーマを決まってから、私に感謝してもいいよ。それより、早く帰ろう、お腹すいたから。」
「ああ、ちょっと片付けたら一緒に帰ろう。」
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