第8話 意識
七月に入り、暑苦しい毎日が続いていた。
期末試験の準備で忙しかった私たちは、息抜きそして暑さから逃げるために、映画を見に行くことにした。人込みを避けるため、わざわざ週末の早朝を選んだ。だが、寺島のせいで思わず事件が発生した。
気持ちをすっきりさせたいために、あるアクション映画を選ぶつもりだった。だが、出発前の朝、私は急に母に呼ばれ手伝うことになったから、先に寺島を映画館に行かせてチケットを買うことになった。慌てて映画館へ行って、そこで待っててくれた寺島は先にポップコーンと飲み物を買ったので、すぐに入場した。
だけど、予告が流し終わった時に、映画のタイトルを見た瞬間に啞然とした。小さな声で寺島に話した、
「ねえ、これは何に?まさか私たちは間違ったホールに入ったの?」
「いや、確かにこのホールだな。」
「じゃ、何でこの映画なの?」
寺島はポケットから映画チケットを取り出して確認をした。
「ああ、俺が間違えたかも。タイトルは似ているので…」」
「本当に?こんな間違えってありえないだよ?」
「じゃ、今から出る?」
「もうあの映画が始まっているかも、それにこのチケットが勿体ないじゃない。」
「じゃ、このまま見る?」
「仕方ないでしょう。」
「後でごはんを奢るから、すまない。」
「仕方ないでしょう、映画を見よう。」
でも、この映画は私たちが見ようと思わないジャンルのものだった。
まさかの学園ラブコメだった。
映画実体は別につまらないとは言えないけど、異性とこういうタイプの映画を見るのは初めてで、とても居心地良いとは言えない、例え相手が寺島でも。今まで彼のことを異性として見ていないから、こういうシチュエーションで余計に意識していた。それに、学園ものなのに、なぜかスキンシップやキスする場面が結構あった。
それに映画館にいる観客はかなり少ないので、まるで二人きりになったみたいに。
私はポップコーンを取りたいと思って手を伸ばしたら、寺島の手を触れてしまった。その感触でお互いを見つめ合うことになって、しばらくしてどちらも反応しなかった。すごく長い時間が経ったようなに、私は自分の手を引いて、小さな声で「ごめん」と言った。寺島は何を言わずに、ポップコーンを私の方に差し出した。
そろそろ映画が終わると思ったら、主人公の二人は両想いになり、クライマックスシーンで長いハグをして、今度は全然終わらなさそうなキスをした。これって、本当に学園ものなの?十代の子が見ていいものなのって、思わず疑い始めた。
私は寺島の反応を気になって、彼の方に視線を向けた。全く動じないみたいで、表情もいつもと変わらないように画面を見ていた。だけど、彼はいきなりこっちに向いてこう話した、
「またこんなふうに見られたら、本当に俺のことを好きになったと解釈するしかないね。」
私は恥ずかしいと思って、すぐに前へ向いた。隣からクスクス笑いの声が聞こえた。
寺島のやつ、本当に私をからかうのが好きだね。
ようやく映画が終わり、二人はホールから出た。
「悪かったね、違う映画のチケットを買ってしまって。」
「わざとじゃないよね?」
「まさか、俺はこういうことをするメリットがないから。」
「何だかすごく面白がっていたみたいね。」
「あなたが考えすぎだ。で、ごはんを食べに行こうか?」
「何が奢るの?」
「ついてきたら分かるからさあ。楽しみにしてね。」
結局、寺島が私を彼の家に連れて、手作りチャーハンを奢ってくれた。何かいいものを奢ってくれるかなと期待する私はバカだった。
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