第4話 絡む
屋上で会話した後、私たちは別々で教室に戻った。
結局、二人はあることを決めた。どうせ周りから変人扱いされるだろうと思って、思い切って変人連盟でも作ろうかって。盟友だから、くんとかさん付けとかはいらないし、直接で苗字で呼び合うことを決めた。変な提案だけど、それを受けた自分もやっぱり普通じゃなかった。
まさか高校に入った初日にできた「親友」は吉祥寺男だ。
下校時間に、ひとりで家まで歩いたら、後ろから足跡音が聞こえた。まさかこんな時間帯に変態とかストーカーとかに尾行されたじゃないよね…曲がり角に隠れて、その後ろにいる誰かを捕まえようと思っていたら、吉祥寺男だった。
「寺島!何で私の後ろについてきたの?びっくりさせないでよ…」
「俺の家はこっちだ。」
「ええ?そんな偶然ってある?」
そしたら、急に思い出したことがあった。数日前、引っ越した時に近所の人たちにあいさつ回りをしたとき、確かに隣の家は「寺島」って…
嫌な予感が的中だった。まさか、吉祥寺男は隣に住んでいた。名札を見ながらも、この現実をまだ受け止めたくなかった。
同い年、同じ学校、同じクラス、隣の家に住む近所まで?どこまで行っても、この男から逃げられない。
「遠山は隣に住むなんて、知らなかった。」
「あいさつ回りしたけど、あなたと会ってないなあ。」
「多分その時は店番だった。」
「店番って?」
「うちは和菓子屋で、商店街にある「寺島屋」。」
「ああ、この前あの和菓子屋へ行った。とてもきれいでおいしい和菓子がたくさん。いつも店で手伝うなの?」
「週に二日ぐらいかな。兄と弟もやるので、でも時間があればたまには行かなくて日も行く。」
「そこで何をする?和菓子作りの修行中?」
「それは兄の仕事なの、大学出たら店を継ぐつもりだ。俺は別にやりたいことがあってから、裏でサポートぐらいのことをする。例えば、掃除とか新商品やプロモーション用のポスターを作るとか。バイト代はもらわないけど、とても楽しいだ。塾も行かないし、時間はたくさんある。」
「高校出てからのこともう考えたんだ?早いね…って、どこへ行く?吉祥寺を出ないなら、地元の大学?」
「ムサビに入りたいだ。」
「武蔵野美術大学?美大の中の名門でしょう?すごいなあ…」
「遠山は?どこへ行くつもり?」
「学校まではまだ決まってないが、多分言語関係か物書きに関係するもの?」
「そうか、夢が叶えるといいね。今度の店番で、店に来ない?おいしい和菓子を奢るから。」
「まさか食べ放題?」
「そんなに食べれるの?まあ、気が済むまで食べればいい、代わりに新商品の感想を聞いてほしい。」
「それは問題な。じゃ、また明日。」
「ああ、また明日。」
吉祥寺男って、思ってた以上面白いで、いいやつだね。
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