第3話 対面
そのつもりではないが、吉祥寺男のためにあんなことを言ってしまった。もっと最悪なのは、話題の本人に聞かれてしまった。
どうやら、吉祥寺男は席に携帯を忘れていたので、教室に戻ったところに、知らない女があんなことを言った瞬間を目撃した。
まさに、タイミング抜群だ。
だが、彼は何もなかったのように、席に戻り携帯をとって、一言も言わずまた消えちゃった。
しばらくして、吉祥寺男を馬鹿にしていた女子たちはさっきの発言がなかったように、他の話題に移した。私はできるだけ早く昼ご飯を済ませて、一人でいられるように屋上へ行った。
この学校の屋上に菜園があるって前から聞いたので、ちょっと覗いてみようと思った。少し肌寒いの春風にあたり、張り詰めた神経がすこしやわらげった気がした。いろんな野菜と果物があって、あまり知らない品種もそろっていた。
いきなりドアが開けた音が聞こえた。菜園の一角にある小屋から吉祥寺男がその中から出てきた。目が合った瞬間、気まずい空気に耐えられなくて、先手を打った。
「あのう、別について来たわけではないです。それと、さっきはあなたの悪口を言ったつもりではないです、ごめんなさい。」
「謝るようなことでもした?」
「私が言ったことを聞こえたですよね?」
「聞いた。でも、それって俺を庇った発言ですよね、違うか?」
「いや、庇うというか、ただあんなふうにあんな理由で馬鹿にされたので、つい自分の本音を漏らした。」
「そうか、俺の勘違いかもね。」
吉祥寺男は笑った。まぶしいのは彼の笑顔か、それとも太陽の光か?この男、実はイケメンなのに、変なラベルがついてなかったら、きっと女子の間に人気抜群だろう。
「まあ、そう解釈されても間違っていないですけど。」
「ありがとう、遠山理央さん。」
「どうして私の名前を?」
「担任先生が出席を取った時聞いた。うちのクラスに、大半の人は幼稚園や小学生から知ったもので、あなたは地元っ子じゃないだから、すぐ名前を覚えた。」
「一瞬思ったけど、あなたはさっきのことで根を持っているから、わざわざ私の名前を調べたとか。私の考えすぎですよね。」
「で、何であんなふうに思ったの?」
「何を?」
「俺のこと、気持ち悪い変態野郎に聞かされたのに、そう思わない理由?」
「言われたことをそのまま全部信じるって、そういうバカではありません。」
「俺がイケメンだから?」
「はあ?どこからの自信ですか?まあ、イケメンと言えば、まあまあのイケメンだけど?」
二人の目が合って笑い出した。
「席を取る前に、俺をずっと見ていただろう?」
「やっぱり気づいたですか?いや、あれはただ…」
「好奇心?見知らない男をつい見とれた?」
「からかうのをやめてもらいませんか?」
「冗談だから、怒らないで。」
「そう簡単に怒らないから、ブチ切れ系のキャラではありません。でも、みんなにあんなふうに馬鹿にされて、反論とかはしないですか?」
「事実だしね、反論する意味はないかも。吉祥寺が好きだし、出るつもりもないし。地元のためにできる限りのことがしたいし、外に出なくても満足できる場所なのに。」
「そういうことはあまりこの年齢の男の子が言うものではありません。」
「そうかもね。じゃ、同感する君って、変人扱いにされたら困らないの?」
「余計なご心配です。それに、私もある意味変わった人なので、そういうこと全然気にしてないです。あなたこそ、また高校であんなふうに馬鹿にされたらよくないですか?」
「あなたがいるから、平気。」
「それ、どういう意味…」
「変人仲間がいるから、寂しくないし、心強いだ。」
またそのまぶしい笑顔。吉祥寺男、あなどれない。
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