☆2021➟2022:カウントダウン特別番外➋

自身の背後から聞こえてきた声は、確実に男性のもの。


しかも成人しているだろうことを確信が持てるほど落ち着いた低さがあるので、つまり、これは……



(……廃棄コース、確定…しちゃった……?????)



せめて、見られた相手がぬいぐるみの持ち主の幼女とかなら、まだ多少の救いはあった気がするが、大人で男性……そんな人間が、あまりにもオカルトすぎるぬいぐるみをそのままにするはずはない。



(……………お、…終わった………)



意識はあれど、こんな体では逃げるにも逃げられない。


そう気付いてしまった瞬間、何とかバランスをとって立っていた足から力が抜けてしまった。



ぽてん、と気の抜けた音とともに部屋のカーペットの上に倒れこむ。


けれどそこから動こうにも、混乱しているせいかうまく体を使えず動くこともままならない。



———……こわい。



どんなふうに、捨てられるのだろうか。


気味が悪いとそのままポイっとされるだけならまだいいが、再び動かないようになんて言って、足をもがれたり、中の綿を引っ張り出されたり、何かに詰め込まれて地中に埋められたり、縛られて火にくべられたり………そんな、拷問みたいなことだけはどうか勘弁願いたい……っ!!!!!



地に伏し震えながらも必死に願ってはみたものの、まぁ……そんな願いは届くはずもなく、私の体は唐突に宙に浮く。


背中側からがっしりと、男性らしい大きな手でつかまれて引き寄せられているらしい。



(ひ、ひぃ……っ!……助けて……!!)



思いがけない移動の勢いに完全に体が縮こまってしまって、声が出ないと分かっているのに悲鳴を上げる。



「わぁ、すごい…」


「……………、……?」



すとん、と。


降ろされたのはどうやら、その男性の膝の上。


こちらの体が転がり落ちないようにか、大きな手が自分の背中を支えるように置かれていて、もう片方の手は垂れた耳をものっ凄くゆっくりとそして驚くほど優しい手つきで撫でてくる。



(……………………おやぁ?????)



何やら、自身が想像した反応と違うぞ?と上を仰ぎ見るものの男性の顔は逆光によって陰っていてよく見えない。


けれどその口元には優し気な笑みが浮かんでいるのだけは確認できた。



「本当に動いてる……すごい、かわいい……」



ほぅ、と感極まったようなため息とともに零れた言葉は、あまりにも甘い響きを伴っていた。


一時期……かわいい系のものが大好きな男子が流行りましたが貴方もその類かい?と思いながら、されるがままに撫でられていると、どうにも心地が良くなってきてちょっと意識がうとうととし始める。



(いやいや…こんな状況下で寝れるって……ちょっと自分の神経の図太さが恐ろしいんですけど……?)



寝たらだめだー!と自分を鼓舞して頭を振ったりするのだが、それすらその男性からするとかわいいものに見えているようで、頭上からくすくすと控えめな低い笑い声が降ってきては耳をくすぐっていく。


それがまた、なんともいい声なものだから腹立たしい!!





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る