第37話 女神の更生
欲の神マリアは、はっきり言って、ここにいる誰よりも美人だ。
金色のロングヘアにスカイブルーの瞳。
胸ははち切れんばかりに大きいが全く垂れておらず堂々とそびえ立ち、まさに女神と言える美貌を持ち合わせている。
しかし、その容姿とは反対に、至極クズな性格だった。
「なあリナ、こんなのが本当に人間が信仰している女神なのか?」
「んー、残念ながらそうなるね。まあ、人間が信仰してるけど、結局は神序列100位の落ちこぼれだしね。あと、欲…特に性欲に特化した屑だよ、マリアは」
「んーーーーーーーーー(元天使ごとぎが偉そうにいってんじゃねーーーー!)」
「んーんー五月蝿いですよ、このクソ女神様」
マロンが、虫でも見るような目で女神を睨み付けている。
あれ?聖女って女神に仕える職業だったよね?
うん、この女神なら仕えられないよね。
「えっと、マリアだっけ?丁寧な言葉で静かに喋ってくれ」
「あなた達なんなのですか?女神に対してこのような事をして良いと思ってるのでしょうか?ダメですよ、人間の皆様(お前ら何なんだ!!女神に対してこんな事して良いと思ってんのか!!あぁ゛ー!!!タダじゃおかねーぞ、この愚図な人間共が!!!)」
「エルク、マリアは全く自分が悪いなんて思ってないと思うよ、僕は」
「まあ、そんなに簡単に、変われるもんでもないだろうしな。取り敢えず、徹底的に躾るしかないだろうが、レンゲもいるからな…」
「だったら、一旦何処かに転移したら良いんじゃないかな?」
「ああ、そうだな。それが良いな。マロン、ちょっと女神を躾ようと思うんだ。レンゲの前でするのもあれだから、ちょっと転移で別の場所でやろうと思う」
「そうですね。エルクにお任せしますよ」
「わかった。じゃあ行ってくるぞ」
「人間が、女神に対して何をするのでしょうか?(人間ごとぎが女神である私に何をするつもりだ、コノヤローが!!)」
「まあ、色々と躾だな」
そう言ってエルクは、裸のマリアを連れて転移で地上に移動する。
そうして、一時間程度の時間がたった後に、再度天界へエルクとマリアが戻って来た。
「取り敢えず、これでマリアも大人しくなったと思うぞ」
「主様、今までの非礼、誠に申し訳ございませんでした。合わせて、聖女様並びにパーティーメンバーの皆様への非礼もお詫びさせて頂きます」
マリアは、未だに裸のまま、土下座をしてエルク達に謝罪をしてきたのだった。
一時間前とは全くの別人となって戻って来た。
「エルク、いったい何をやったらこんなに変わるのですか?と言うか、未だに裸って…何をやってたんですか?」
「いや、やましい事なんてしてないからな。色々と辱めはして心は折っておいたが、さっきマロンが見たような事は決してしてないからな」
「はあ、そこはエルクを信じますよ。でもいい加減、服ぐらい着たらいいんじゃないですか?」
「そうだな。取り敢えずそこの建物の中にマリアの服があるだろうから、マリアは服を着てきてくれ」
「主様の仰せの通りに」
マリアは深く頭を下げて建物に向かって行った。
数分経ち、マリアが服を着て戻ってきた。
いかにも女神といった服装で、真っ白の布に包まれていた。
「マリア、これからの事について話をしようと思うがいいか?」
「はい、主様のお言葉に従います」
「ねえエルク、ちょっとマリア変わりすぎじゃない?僕が知ってる神の中では断トツで屑だったはずなんだけど」
「まあ、色々だ。それでマリア、お前は地上の人間で聖女以外に語り掛ける事は可能か?」
「はい、基本的には聖女が女神の言葉を聞く立場にある為、聖女に語り掛けていますが、人間であれば誰にでも語り掛ける事は可能です」
「じゃあ、これから人類と魔族は争わない方向性を示してくれ。俺たちは魔王を討伐する程度は簡単だが、それによってこの世界に不変が訪れるのはごめんだ。神や魔神のように不老不死であれば不変でも良いだろうが、短命の人類から進化を奪われたら、何にも楽しくない」
「はい、主様の御心のままに。ですが、そのお言葉を下界の人間に語り掛ける事は可能ですが、神界の神々や大神様など、多くのお方からお叱りがあると想像出来ます。そうなってしまうと私ごときでは抑える事が出来ません」
「それに関しては特に問題ない。とりあえず大神は一発殴っておきたいし、マリアは神界までのゲートを開いてくれ」
「それは、いけません。いくら主様がお強いとはいえ、神々や大神様を相手にすることなど、自殺に行くようなものでございます」
「魔王にも聞いたが、大神なんてせいぜい300万程度のステータスしかないんだろ?俺は最大1000万まで上昇するから、大神程度は問題ないさ。俺以外のパーティーメンバーも得意なステータスでは500万を超えるし、神界で問題が起きても対処は出来るさ。ほら、さっき腕力でマロンがお前を抑えていただろ?」
「……………はい、このパーティーが規格外という事でございますね。今後このパーティーメンバーのお方には完全服従させていただきます」
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