第36話 屑女神
「リナ、天界はどの辺にあるんだ?」
「えっとねー、リスタルトの上空だね」
「最初にいた国か。そこなら俺の転移で移動出来るな。じゃあ、さっそくリスタルトに向かうか。ミラは、勇者には何か言ってきた方が良いか?」
「はい、そうですね。勇者にパーティー脱退を話してきます。そうしたら、私もエルク様のパーティーに入れていただけませんか?」
「いや、パーティーリーダーはマロンだから、決定権はマロンにあるからな。それに、そんなに簡単に勇者パーティーをやめても良いのか?」
「はい、かまいません。私はこれからエルク様に一生ついていきます。離れたくありません」
「エルクはモテモテですね。あのアホ勇者から離れるのは良い事です。ミラさんも是非ファミリエに入ってもらいましょう」
「モテモテかはわからんが、マロンが良いって言うなら大丈夫だな。じゃあ、エンデシア経由でリスタルトだな」
そう言って、俺たちは転移札を使い、エンデシアに向かった。
エンデシアではミラが勇者に頭を下げ脱退の申し出をしている。
若干渋ったようだが、すぐ後ろでマロンがにらみを利かせ、脱退を認めていた。
はれてミラの脱退も完了したので、全員でリスタルトに移動する。
リスタルトでは一旦、ギルドに寄ってミラを正式にパーティーメンバーへ登録した。
これで、聖女・拳聖・究極魔導士・紙・堕天使といった、後半変な職業オンパレードのパーティーが完成した。
「さてと、リナはその翼で、自力で飛べるんだよな?」
「そうだね。でも翼だけだと飛行速度に限界があるから、エルクの飛行魔法は使わせて。普通に飛ぶと、結構時間かかるからさ」
「そうか、じゃあリナ以外はミラの魔法で翼を付けて、全員俺の飛行魔法で飛行能力を上げるとするか」
「では、まずは私からですね。『トランス』『飛行補助』」
ミラが魔法を唱え、全員の背中に翼を生やす。
その後は俺の札を破って、全速で上空へと飛行した。
「ちょっと寒いですね。上空に行けば行くだけ、空気が薄くなって気温が下がるようですね」
ミラはそう言いながら、少し考え
「でしたら『魔法クリエイト』皆さん、ちょっと集まってください」
ミラに言われ、全員が同じ場所に固まる。
「『膜魔法-空気/温度一定付与』」
ミラがそう唱えると、それぞれの身体の周りに、薄い膜が施される。
そうすると、先ほどまでとは打って変わり、空気も地上と変わらず、気温も適温となったのだ。
「これで、空気が足りなくなったり、凍えるとはは無くなります」
「ミラの魔法クリエイトって、普通に便利だよな。それがあれば、生きていく上では何にも困らないよな。英雄職の中でも唯一戦場以外でも活躍出来るんじゃないか?」
「そうかもしれません。ある程度はどのような魔法でも創れるので便利ではありますね」
そんな事を話しながら、さらに上空へ登っていくと雲を突き抜け、そこには一軒の屋敷があった。
「エルク、あれが女神の屋敷だよ」
リナが、その屋敷を指す。
「エルク、リナちゃん、私にバフをお願いします。私が女神を拘束しますね『光鞭』」
マロンの手からは光る鞭が伸びていた。
「この鞭なら、私の能力が上がれば、簡単に切れる事もありませんから」
マロンはそう言うと、バフを使った状態で屋敷に向かっていった。
マロンは窓からこっそりと覗くと、手にしていた光鞭を落とし、両手に光拳を発動させた。
その後、マロンは覗いていた窓付近の壁を殴りつけ、壁に大きな穴を空けて中に入っていった。
少しして、中からマロンが出てきた。
裸の女性の髪の毛を鷲掴みにして。
「あっ、女神様じゃないですか。そんな恰好で何してたんですかー?」
「お前はリナ!?確か全知の神と共に悪さをして、堕天使となって地上に落とされたはずではなかったのか!?」
「いやー、何か呪いも掛けられてたんですけど、聖女様に直してもらって、今じゃ記憶も元通りなんですよ。それに僕たちも実際悪い事してたのであれだけど、元凶は貴女じゃないですか、女神マリアさん」
「元凶?どういうことだリナ?」
「いやね、僕は昔っから天使では序列1位だったんだ。で、そこのマリアは神の中では落ちこぼれで序列100位。それと、最近神になった全知の神エルクが、いきなり序列1位になったもんだから、色々とやらかしたのさ」
「ふん、色欲にあっさり嵌る全知の神が悪いんだろ」
「そこの女神は欲の神。食欲・睡眠欲・性欲・独占欲、いろんな欲にまつわる神なんだよ。で、神になったばかりのエルクを誘惑して、負の感情の方の欲を植え付けたんだ。天使は仕える神に絶対服従だから、一緒に色々とやらかしちゃったんだよね」
「つまり、そこの女神は屑って訳だな。何でそいつは追放とかされないんだ?」
「あー、マリアは大神の一人のお気に入りだからね。色々な意味でその大神に奉仕してるんじゃないかな。手段は選ばないしね。多分マロンが一番理解出来るんじゃないかな」
そう言ってマロンの方に目をやると、裸のままの女神を光鞭で縛り上げていた。
両手両足を縛りあげているので、女神はのたうちまわる形になっている。
「ええ、この女神はあの建物の中で、羽を生やした複数の殿方と交わっていました。それは私が女神として信仰してきた女神とは大きく違います。よって無理やり引っ張り出してきました」
「貴方聖女でしょ!?女神に対してこんなことして許されるとでも思ってるの!?」
「五月蠅いですね。エルク、ちゃっちゃとこの屑女神を奴隷にしましょう」
「はっ!?奴隷ですって!?女神に対してそんな事出来るとでも思っているの!?良いから早くこの縄ほどきなさいよ、グズ聖女!!!」
「そうだな、ちょっと耳障りだし、服従させるか『契約』っと」
「ちょっと、何気安く触ってんのよ人間ごときが!!さっさとほどけって言ってんだろ、このグズどもが!!」
「ちょっと、僕が知ってた頃のマリアより悪化してるね。とことん屑になってるや」
「とりあえず静かにしてくれ」
「んーーーーー(何よ!?何で喋れないのよ!?)」
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