第16話 聖女様の聖水

「…着替え終わりました…」


「なんか、すまんなマロン、もら…」


「違います!聖水こぼしただけです!!」


「え?でも、マロンお姉ちゃん、にお…」


「レンゲちゃん!聖水です!せ・い・す・い!はい、二人ともオッケー?」


「「…はい」」


マロンは、聖女とは思えない迫力で聖水をごり押ししてくる。

聖女様の聖水…それはそれでどうなんだ?


「まあ、その件はこれでいいかな。じゃあ、今度は俺の契約札の効果も試したいけど、マロンには申し訳ないしレンゲでお願いしようと思うんだけど、どうかな?」


「いえ、私で大丈夫です!さっきのは聖水こぼしただけですし、私は全然平気です!!」


「わっ、わかった。じゃあマロン、好きな動物っているか?」


「そうですね、私は犬が大好きですよ」


「わかった。じゃあ手を出してくれ」


俺は目の前に差し出されたマロンの手の甲に紙を当て


『契約』


そう唱えた。


「さてマロン、どんな感じだ?」


「えっと、手の甲に紋章がついたこと以外、別に変わった事もありませんよ」


「そうか、じゃあこれからマロンは犬になるんだ。言葉はワンしか喋っちゃ駄目だぞ」


「ワンッワンワンワン」(なに言ってるのエルク。…って私どうなったの?)


「よし、とりあえず契約は出来てるな。じゃあお手」


「ワン」(いやー!!!!)


マロンは意識的には嫌がりながらも、素直にお手をする。


「じゃあ、次は伏せしてちんちんして、その後はマロンが思う犬の行動をしてみてくれ」


「ワンワン」(いーーやーーーー!!)


どうあっても逆らえない様で、マロンは伏せにちんちんをして、その後は四足歩行で走りまわり、近くの木の横で止まり片足を上げる。


「あっマロン、やめ…」


ジョロジョロジョロジョロ


「ワンワン」(い゛ーーーーやあ゛ぁぁぁぁーーーーーー!!)


「…マロン、ストップ」


俺はそう言うとマロンに近付き、そっと紋章に触れ


「契約解除」


「ぐすんっ、着替えてきます…」


マロンは再度着替えに行くことになった。


「マロン、悪かったな、まさかおし…」


「聖水です…。聖女から出る液体は聖水です…」


マロンは涙目になりながら、俺に訴える。

さっきのような迫力はなく、ただただ懇願するような声で言ってくる。


「…ああ、そうだな。聖女様の聖水だな。そう、聖水だな」


「…はい…」グスンッ


「マロンお姉ちゃん」


レンゲはそう言いながら両手を広げてマロンの前に立つ。


「レンゲちゃーーーん」


マロンは泣きながら、レンゲの胸に飛び込み、5分程泣き続けていた。




「マロン、さっきは色々試して悪かったな。じゃあ次に札だな」


「ぐすんっ、まだやるのですか?」


「ああ、一応次ので最後にする予定だ。念話札は札を持った者同士がどれだけ離れても会話出来る。転移札は一度行ったことがある場所ならいつでも行くことが出来る。異空間札は異空間に繋がる扉を作って、そこに部屋を作ることが出来る。部屋は名前を決めておくことで、同じ名前で再度札を作れば再出現するから、常に扉を所持する必要もない。この辺は戦闘より旅向けだな。で、最後の飛行札」


俺は飛行札を3枚作りマロンとレンゲに1枚づつ渡す。


「その札を破って『飛行』と唱えれば飛行が可能で、地面に着地するまでは効果が継続する。一度でも着地すればその時点で飛行の効果が失われるぞ」


「空を飛べるのですか?」


「私、空飛ぶの?」


「ああ、思った通りに飛行出来るから、飛びたいように飛んでみればいい。まあ、とりあえず一回飛んでみるぞ」


ビリッ『『『飛行』』』

唱えた瞬間、一気に浮遊感が訪れ、身体が地面から離れて行った。


「ひゃんっ」チョロ

「わあーーーーー」

「おぉーーーーー」


あっ、マロンさんは聖水の漏らし癖がついちゃったかな?

まあ、今回は少し出たぐらいだし、大丈夫だろう。

最初こそマロンが少しびっくりしていたが、すぐになれて飛行を楽しんでいる。

俺がマロンから目を離した(フリをしている)時は、マロンは裾をめくりパンツが露わな状態で飛行している。

うん、パンツ乾かしてるんだね、見ない(フリをしている)ようにしておこう。


「飛行って楽しいですね。それにこれなら上空のモンスターも討伐出来ますね」


「ああ、今までは上空のモンスターに対する対抗手段が無かったからな。これでどんなモンスターが現れても問題ないぞ」


「お空飛ぶの楽しかった。でも、マロンお姉ちゃんはパンツ丸見えだったから、何か履いた方が良いと思う」


「…はい。次からは何か履きます」


まあ、今回は聖水を乾かしてたから余計に見えてたけど、俺やレンゲと違ってパンツは見えちゃうからな、マロンは。

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