第11話 新たにメンバーが仲間入りです

俺たちは冒険者ギルドに戻り、Sランクの依頼報告をしていた。


「聖女さま、エルクさん、ありがとうございました。これで長年残っていたSランクの依頼も片が付きました」


受付嬢が依頼書の内容を確認し、討伐証明の受理を行った。


「それでですね、Aランクの依頼になりますが…」


受付嬢が滞っているAランクの依頼書を見ながらマロンに話しかけると


「それでしたら、もちろんお受けいたしますが、今後はこのヒカリさんとヤミさんでもAランクの依頼ならこなせると思いますよ。今回の魔龍討伐で、一気にレベル90まで上がっていますから」


「本当ですか!?レベル90となると、当ギルド所属冒険者では最高レベルになります」


「そうなのですか?Aランク冒険者の方も何人かいましたので」

「もっとレベルが上の方もいるかと思っていました」


「Aランク冒険者はいますが、今まで序列1位の方でもレベル85でした。なので、今をもってお二人が、当ギルド同率で序列1位になります」


「「そうなのですか、ありがとうございます」」


二人は、今までは安定した収入を求めるため、Bランク冒険者で十分と思っていた。

しかし、今回魔龍を討伐したことで、自分達の働きで人々の生活に多大な影響があることも理解した。

今までは自分たちの生活の為に、危険の少ない依頼をこなしていたが、今後はもう少し人々の為にも依頼をこなそうと心境の変化があった。


「では私たちも二人でAランクの依頼をこなしていきます」

「聖女さま、エルクさん、ありがとうございました」


二人はそう言って、深く頭を下げていた。


「ああ、こっちこそありがとう。二人と依頼をこなせて楽しかったぞ」


「そうですね。また機会があれば一緒にクエストに行きましょうね」


「「はい!」」


そう言って、俺とマロン、ヒカリとヤミはそれぞれ別に滞っているAランクの依頼をこなしていった。

ヒカリもヤミも、俺が渡したバフ効果は使わずに、自分達の力だけでAランクの依頼を次々とこなしていっていたようなので、今後もあの二人なら大丈夫だと思う事が出来た。

マロンは相変わらず、定期的にバフ効果を使ってモンスター狩りを愉しんでいる。


「さてと、頼まれていたAランクの依頼も、ある程度減ったし、それ達はそろそろ旅にですか」


「そうですね、エルクのレベルも45になりましたし、そろそろ次の国に行ってもいいかもしれませんね」


そんな事を話しながら歩いていると、一人の少女が複数の男に囲まれている場面に遭遇した。

ぱっと見で分かるように柄の悪い男たちに絡まれているようだった。

そんな様子を見たマロンが指をポキポキ鳴らしながら、バフ効果の札を取り出して破ろうとしていたので一旦止めた。

ハブ効果使って一般人なんて攻撃したら、即死してしまう。


「やっやめてください!!」


絡まれていた少女が掴まれていた腕を振り払うと、腕をつかんでいた男は遠くの壁まで吹き飛んだ。


「このアマ!なにしてくれてんだ!!」


そう言って一人の男が殴り掛かると、少女は「キャッ!」と叫びながら手をバタバタさせている。

男はその手に当たり、頭を下にはたかれる形となって地面に顔面をめり込ませていた。


「ごっごめんなさい!!」


少女はそう言って目に涙を浮かべているが、逆に男たちは何が起きているのか理解出来ず、目の前の状況に戦慄して気を失った二人の男を連れて逃げて行った。


「ねえ貴女、大丈夫?」


そんな少女にマロンは優しく声を掛ける。


「すっすみません。私昔から怪力で、周りの人に迷惑ばかりかけて」


絡まれた事もあり、少しパニックになり涙目の少女をマロンが抱き締め


「大丈夫ですよ。落ち着いて下さい」


マロンには慈愛のスキルがある。

慈愛はパニック・怒り・嫉妬・恐怖など、負の感情を軽減させる効果がある。


「お見苦しい姿をお見せし、申し訳ありませんでした」


少女は落ち着き深く頭を下げて言う。


「私レンゲと言います。孤児院で暮らしている15歳です」


レンゲは紅く短い髪で、顔は少しやつれてはいるが、15歳よりさらに若く見える童顔だ。

孤児院での生活が原因なのか、全体的に線の細い身体に、あちらこちらがほつれているTシャツに短パンを身に着けている。


「レンゲか、ずいぶんと力があるみたいだが、冒険者とかでもやっているのか?」


「いえ、私すぐにパニックになったり泣いてしまったりするので、冒険者になんてなれません」


「そうか?あれだけ力があるなら、冒険者にもなれると思うが。自分のステータス画面は見た事あるか?」


「ステータス画面ですか?」


レンゲはステータス画面の事を聞いてもよくわかっていないようだった。

冒険者になれば一般的なステータス画面だが、一般人では知らない人もいる。

ましてや孤児院暮らしとなれば知らなくても不思議ではない。


「ステータスオープンと唱えれば、目の前にステータス画面が現れるぞ」


「はあ、そうなんですか?ではステータスオープン」


==============

名前:レンゲ

Lv:1

職業:拳聖

HP:100/100

MP:0/0

腕力:1000

魔力:0

防御:100

俊敏:100


スキル:剛腕


==============


「「拳聖!?」」


俺とマロンは目を見開いた。

しかし、いくら戦闘職ではないとはいえ、腕力がすでにレベル99のマロンの倍近い数字になっている。


「なあレンゲ、お前のステータスなら冒険者になればすぐに自立出来るぐらいは稼げるようになるぞ。むしろレベルさえ上がればほとんどの人間がレンゲにかなわなくなるほどの素質だぞ」


「でも、私すぐにパニックになったり、一人では何にも出来ないんです…」


「今の孤児院の暮らしには満足しているか?」


「いえ、それは…他の子は10になるころには里親に引き取られることがほとんどですが、私はこの怪力もあって、里親が見つかりません。なので、先に希望は見いだせない状況ですが…」


そう言いながら、またも泣きそうになるレンゲだが


「でしたら、私たちと共に旅に出ますか?」


「いいのかマロン?神の啓示なんてあったのか?」


「いえ、啓示なんてありませんよ、エルク以外は。でもエルクも言っていたように旅は楽しむものです。別に啓示が無ければ仲間にしてはいけないなんて決まりは無いですし、こんな才能を持っているのに誰にも認められることが無いなんて酷いじゃないですか」


「そうか、マロンが良いなら俺は構わないが」


「それに、実は私も孤児院暮らしでした。なので、何となくレンゲちゃんをほっとけないのです。どうですレンゲちゃん、私たちと一緒に来ませんか?一人じゃなければ安心ですよね。何より私の慈愛で負の感情は軽減出来るので、レンゲちゃんにとって私は便利だとおもいますよ」


マロンは、それこそ慈愛にあふれる笑顔で、レンゲに手を差し伸べる。

レンゲは戸惑いながらも無意識の内に、マロンの手を取っていた。


「本当に…本当に私なんかを仲間にしてくれるのですか?全然役にたたないかもしれないですよ?」


「まあ、ぶっちゃけ俺のスキルがあれば、どんな敵も無双出来るしな。旅を一緒に楽しめればいいんじゃないか?」


「あっ、ありがとうございます!」


レンゲはそう言って、目に涙を浮かべながら、マロンに抱き着いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る