第12話 可愛い妹が出来ました
レンゲが一緒に旅をすることになったので、俺たちはまず孤児院にレンゲを引き取る為の手続きをしに行った。
マロンが聖女という事もあって、すんなりとレンゲを引き取ることが出来た。
その後は一緒に旅をするため、レンゲにも冒険者登録もしてもらった。
当然Dランクからのスタートにはなるが、拳聖だけあって初期ステータスがすでに高いので、レベルを少し上げるだけで、十分に戦力になるだろう。
その後はレンゲの服や装備を買いに行った。
「レンゲ、どんな服が欲しいんだ?」
「いえ、私はこのままでも大丈夫ですが…」
「ほらレンゲちゃん、そんな遠慮しないでお姉さんに欲しい物はねだりなさい」
「ですが、特にこれと言ってほしい物も…」
誰かに何かをしてもらう事に慣れていないようで、欲しい物も本当に思い浮かばないのだろう。
なので、俺はマロンと視線を交わし
「じゃあ、こんなのはどうだ?きっと似合うんじゃないか?」
「いえ、でしたらこちらの方がレンゲちゃんには似合うと思いますよ」
俺は白のフリフリがついたワンピース、マロンは黒のゴスロリ調の服を手に取りレンゲにあてがう。
「私にそんなの似合いません!?でしたらこちらの方が!!」
そう言ってレンゲは、真っ赤なTシャツに黒のホットパンツを手に取る。
「「じゃあそれ」」
二人でハモリ、レンゲから服を貰うとそのまま会計に向かう。
「あっ、えっと、ありがとうございます」
レンゲは深く深く頭を下げるが
「レンゲ、俺たち仲間なんだから気にするんじゃないぞ」
「そうですよ、仲間ですから何でも言っていいんですよ。私もレンゲちゃんには、今後いっぱい頼りますから」
そう言って、レンゲの右手を俺が、左手をマロンが引っ張り、次の店に向かう。
俺とマロンは、レンゲの事を妹のように思っている。
レンゲは今まで優しくされたこともないのか、頬を紅くし微笑んでいた。
そんなレンゲが、俺もマロンも可愛くて仕方がないのだ。
「次は、冒険者になる為にも装備だな。拳聖だから拳で戦うのがメインになるだろうから、グローブと防具が必要になるな」
「あの…グローブはこれが良いです」
レンゲは一つのグローブを手にした。
値段は比較的に安く、特に効果がついているわけでもない、いたって普通のグローブだ。
「レンゲ、値段なんて気にしなくて、しっかりしたもの選べばいいんだぞ」
「いえ、このグローブの甲の部分にあしらわれている刺繍ですが、蓮華の花です。なので私の名前と同じ花があしらわれているので、これがいいです」
「そうか、気に入ったならそれにしようか」
「はい!」
「じゃあ、装備はこれなんかどうだ?」
レンゲは服もそうだが、落ち着いた服装が好きなのだろ。
だから、上は黒のTシャツに、下は白のスカートで中にはスパッツがくっ付いており、腕の部分にはグローブ同様蓮華の花の刺繍がされている。
比較的軽装に見えるが、かなり丈夫で伸縮性のある素材を使っている為か
「素敵ですが、値段が…」
値段は、この店でもかなりいい物のようでそこそこな値が張っているが
「値段なんて気にするな。欲しい物を買っておけ」
「わかりました、ありがとうございます」
最終的には買われるのに諦めたのか、でも本心から感謝の気持ちを伝え、笑顔で買ってもらったものを抱きしめていた。
「さてと、装備も揃いましたし、次は西の国【セイレーン】に向かいましょうか」
「セイレーンか、行くとするか」
「はい、どこまでもついていきます!」
俺たちはノービスを後にし、セイレーンへと向かった。
森へ出ると、すぐにDランクモンスターのスライムの集団に遭遇した。
スライムならレンゲでも簡単に倒せるだろうと、レンゲがスライムと戦う事となった。
「私一人で大丈夫でしょうか?」
「ああ、レンゲのステータスならバフが無くてもスライムなんて簡単だろう。とにかくスライムに近づいて全力で殴ってみればいいさ」
「はい!」
レンゲは一度目をつぶり、深く息を吸ってから目を開ける。
その目は紅く鋭く、冷たい目をしていた。
そして、一直線にスライムの元に走りよると、一匹のスライムに正拳突きを食らわせる。
正拳突きをもろに食らったスライスは後ろに飛んでいく事も無く、その場で四散した。
残りのスライムも同様に正拳突きのみで討伐をしていった。
≪レベルが上がりました≫
「ふー、緊張しました。何かレベルが上がったようです」
「そうか、一度ステータス画面を開いてくれないか?」
「はい、ステータスオープン」
==============
名前:レンゲ
Lv:3
職業:拳聖
HP:100/180
MP:0/0
腕力:1120
魔力:0
防御:180
俊敏:180
スキル:剛腕
==============
「おお、俺なんてレベル上がっても1しか上がらないのに、40とか60とかの上昇値か。すごいな英雄職っていうのは」
「そうですね、私の魔力を考えると、腕力に関しては最終的には7000以上になるでしょうから、このぐらいが妥当ですね」
「私のステータスはそんなに高いのでしょうか?」
「レベルが低いから今は低いぞ。でもそのレベルで考えれば腕力は特に異常だな。俺なんてレベル3の時の腕力は13だったからな」
「そう…なのですか。では、私が命に代えてもお二人をお守り出来るように、精一杯頑張ります!」
「ダメですよレンゲちゃん。私たちは仲間なんですから、一緒に旅して楽しんで、生きて世界も回るのです。だから命なんてかけちゃ駄目です。命はお互いに預け合い、助け合いますよ」
「ありがとうございます、マロンお姉ちゃん」
「マロンお姉ちゃんか、よかったな妹が出来て」
「はい、こんな可愛い妹が出来て嬉しいです」
「ところでレンゲ、俺の事はなんて呼んでくれるんだ?」
「えっとですね…エルクお兄ちゃん?」
「お兄ちゃんか、そうかそうか」
下を向いてモゾモゾしているレンゲの頭を撫でながら
「じゃあ、今後はお兄ちゃんにも何でも頼っていいからな」
「はい!」
レンゲは満面の笑みで、俺とマロンに飛びつき抱き着いて来た。
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