第10話 魔龍なんて一撃です

俺たちはノービスの更に北に位置する山の最深部を目指す。


「ヒカリ、ヤミ、悪いけど道中のモンスターは俺が中心に討伐しても問題無いか?俺はまだレベルが24だから、この旅自体が俺のレベル上げも兼ねているんだ」


「はい、構いませんよ。私たちはもうすぐ80になります」

「でも、そこまで強さを求めている訳でもありませんので」


「そうなのか?二人とも若いのに強いから、率先してレベルを上げている理由でもあるのかと思ったが」


「私たちは両親がいません。なので自分たちの事は自分たちでどうにかするしかありませんでした」

「冒険者であれば強くなれば収入面の問題は解決したので冒険者をしています」

「ただ、Bランクにもなれば十分な収入も得る事が出来ます」

「なので、Bランクになってからはそこまでレベルを気にした事もありません」


「そうだったのか。すまんな、変な事を聞いて」


「「いえ、私たちは特に両親の事は気にしていませんのでお気になさらずに」」


そうこう話しながら進んでいると、Aランクモンスターが10体の集団で現れた。


「エルクさん、数も多いので私たちも一緒に戦いましょうか?」


「大丈夫だぞヒカリ、この程度なら余裕だ」


俺は【発動式能力上昇札】を破ると、腰の剣を手に取り、一瞬でモンスターのすぐ目の前まで移動した。

数体が一か所に固まっていたので、剣を横に払って数体を纏めて切り伏せた。

その後も一瞬での移動を繰り返し、10体モンスターをほんの5分程度で討伐した。


≪レベルが上がりました≫


「よし、レベルが上がったみたいだな、ステータスオープン」


==============

名前:エルク

Lv:27

職業:紙

HP:37000/37(37000)

MP:37000/37(37000)

腕力:37(37000)

魔力:37(37000)

防御:37(37000)

俊敏:37(37000)

(バフ補正値:残り23:22)


ユニークスキル:紙使い

Lv1:紙召喚

Lv2:念写

Lv3:発動式能力上昇札

Lv4:能力上昇札

Lv5:回復魔法札

Lv6:?????

Lv7:?????

Lv8:?????

Lv9:?????

Lv10:?????


==============


「おっ、新しいスキルが追加されたみたいだな、詳細オープン」


☆各種回復魔法を記した紙を破ることで、1度だけ回復魔法を使う事が出来る。

回復魔法札を作る際にMPを消費し、使用時にはMP消費はされない。

回復魔法毎に、消費MPは異なる。

リカバリー(HP20%回復):消費MP10

ハイリカバリー(HP50%回復):消費MP50

オールリカバリー(HP100%回復):消費MP100

キュア(状態異常1種回復):消費MP10

ハイキュア(状態異常2種同時回復):消費MP50

オールキュア(状態異常を全て回復):消費MP100


「へえ、紙を破れば誰でも回復魔法が使えるのか。マロンは回復魔法使えるから必要ないな」


俺はオールリカバリーを30枚、オールキュアを30枚作り、俺とヒカリとヤミでそれぞれ10枚づつ持っておくことにした。

ついでに、ヒカリとヤミに発動式能力上昇札もそれぞれに10枚づつ作って渡した。


「さて、これで回復面でも不安は全くなくなったし、サクッと魔龍目指すか」


「「「はい」」」


道中のモンスターは、ほとんどが俺一人で討伐し、たまにマロンがうずうずしているのでマロンに譲ったりして、山の最深部へと差し掛かった。


「魔龍はもう少ししたところにいるようですね」


ヒカリが口にする。

恐らく全員が感じているだろう、魔龍のプレッシャーなのか、若干肌寒く感じ少し身震いが起きている。

そう遠くない所に強大な力を持ったモンスターがいるに違いない圧を感じる。


「一応、バフ効果は発動した状態にしておきましょう。いつ現れてもおかしくありませんから」


マロンがそう言い、4人が紙を破ったところで、今まで明るかったのに急に暗くなった。

上を見上げると、そこには全長10mにはなろう、巨大な龍が飛行していた。

俺たちはそれが魔龍だと直感した。


「あの高さ、やはり俺やマロンではどうしようも出来ないな。ヒカリ、ヤミ、頼んだぞ」


「「はい」」


「光・炎融合魔法『火炎光球』」

「闇・氷融合魔法『闇氷塊』」


光を纏った巨大な火炎球と闇を纏った巨大な氷塊が魔龍を襲う。


「二人とも、融合魔法なんて使えたんだな」


俺は、二人が放つ巨大な魔法を目にし、素直に驚いた。


「いえ、一応覚えてはいるのですがMP消費も激しいので、普段は使い物にならない魔法です。1発打てばMPがほぼ空になってしまいますので」

「うん、でも今はMPも10倍になって余裕もあるから、一番威力のある魔法打ってみた」


二人がそんな事を言っている中、二つの魔法は魔龍に直撃していた。

火炎光球が魔龍の翼を焼き尽くし、闇氷塊が頭を吹き飛ばし、一瞬にして魔龍を討伐してしまった。


≪レベルが上がりました≫


「ねえヤミ、今のでレベルが90になったみたい」

「ヒカリ、私も今ので90になったみたい」


厄災とも言える魔龍はSランクモンスターという事もあり、多大な経験値を二人に与えた。

そのおかげで、二人とも一気に10以上のレベルが上がる事となった。


「こんなあっさり魔龍が倒せるなんて」

「エルクさんのバフ効果は凄すぎますね」


「はは、まあ10倍なんて普通に考えればあり得ない倍率だからな」


「ところで、こんなにあっさりと討伐をしてしまいましたので」

「バフ9枚、リカバリー10枚、キュア10枚が余ってしまいました」


「ああ、俺はいつでも作れるから、それはそのまま二人が持って帰ってくれて構わないぞ。でも今回は仕方が無かったが、あまりバフに依存すると本来の力の時に苦労することになるから、もしもの時のお守りぐらいに持っていた方が良いと思うぞ」


「そうですね、ここまで巨大な力になれてしまうと」

「なんでも出来る気になってしまって」

「普段の依頼受注時に危険な目にあってしまうかもしれませんね」

「バフには極力頼らないように、今後も精進します」


「ええ、二人なら大丈夫そうですね。私はすでに依存してしまっているので、エルク無しでは生きていけない身体にされてしまいましたが」


「マロン、なんか言い方に問題がないか?マロンの場合はモンスターを切り伏せる悦びを覚えただけだろ」


「はい、あのモンスターを切り伏せる感触、やめられません。もおエルク無しでは生きていけないです」


「聖女様のパーティーメンバーがエルクさんと思っていましたが」

「エルクさんの力に聖女様が依存し、悦びを覚えてしまったのですね」


「おい、二人とも、もう少し言葉を選ぼうか?聖女に何かをしたとなれば俺は極刑なんだから、誤解を招くような言い方はしないでくれ。マロンもだぞ」


「「「はーい」」」

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