第9話 魔龍討伐が決まりました

「ところで、お二方はどちらかのギルド所属になりますか?」


ギルドマスターは聖女が相手という事で、最初に比べずいぶんと丁寧な言葉使いになっている。


「俺は、最近まではリスタルトのギルドに所属したが、今はマロンとの旅もあるから、一旦フリーになっているぞ」


「私は今までずっとフリーの冒険者をしています。聖女という立場上、一つのギルドに所属は好ましく思われない事が多いので」


「さようですか。確かにSランク冒険者様に関しては、ギルド所属の方は極少数になりますね」


「ええ、Sランク冒険者が少ないのもありますが、どこかに所属してしまうとギルド間のパワーバランスが崩れてしまいますからね。特に聖女である私と勇者は世界で一人づつしかいませんので、魔王討伐前に所属は難しいです。あの、アホ勇者はギルドマスターなんて事をしていますけどね」


「マロン、勇者とは知り合いなのか?」


「はい、一時ではありますが、同じパーティーで旅をしていました。私も勇者も魔王討伐が使命となっている為、大国よりその使命を一緒に言い渡されました。そこからしばらくは一緒に行動することになりました」


「でも、今はその勇者がギルドマスターをやっているのか?」


「そうなんです。あのアホ勇者ときたら、魔王討伐など面倒だ、俺の知名度でギルドを立ち上げれば、すぐに大ギルドに出来るんじゃないか?俺は多くの人間にちやほやされたいだけで、魔王討伐なんてリスクは負いたくない。そんな事を言ってギルドを立ち上げていましたよ。一応勇者が立ち上げたギルドですので、現状世界で一番大きいギルドになっていますが」


「マロンとは大違いな英雄職だな」


英雄職とは、特別職と最上位職の総称だ。

過去に今より昔に存在した魔王を討伐した事のある職業を纏めている。

特別職は世界に二人、勇者と聖女。

最上位職は大賢者、究極魔導士、拳聖、竜騎士、剣王の五つの職業だ。

最上位職も非常にレアで、どれも世界に数名しか確認されていない。


「そうなんですよね。あのアホ勇者は自分にしか興味がないんです。とっても自己愛が強く、他者にちやほやされたいだけなんです」


「まあ、職業は自分じゃ選べないからな。英雄職と言っても、全てが英雄になれる訳でもないからな」


「聖女様、お話の途中で申し訳ありませんが少しお願いがございます」


「なんでしょうか?」


「フリーという事であれば、どのギルドの依頼を受けて頂いても問題は無いかと思います。それでですね、当ギルドは中堅冒険者が多く在席するギルドです。ギルドの大半がBCランク者になっています。それで最近Aランク以上のクエストが滞っていまして…もしすぐに旅に出ないようでしたら、何件かクエストをこなしていただけないかと思いまして」


「ええ、困っている方を見捨てるなんてありえません。私でよければ受けさせていただきますわ。エルクもいいですか?」


「俺は、マロンに同行して魔王討伐って目的以外は特にやることも決まっていないし、元々はリスタルト所属の冒険者だったんだ。依頼を受ける分には何にも問題ないぞ」


「では決定ですね。マスター、どのような依頼がありますか?」


「ありがとうございます。当ギルドメンバーでは依頼達成が出来ていないのが、Aランク4件とSランク1件となっています」


「Sランクの依頼もあるのですか?」


「はい、既に何年も放置されている依頼ではありますが、魔龍討伐になります。直接的に被害があるわけではないのですが、魔龍の瘴気にやられ生息地付近のモンスターが異常に多く発生しています。今までは魔龍討伐など非現実的でしたので、多く発生したモンスター討伐をし被害が出ないように抑えていました」


「魔龍ですか?それはどのようなモンスターでしょうか?」


「名前の通りドラゴンです。古より存在するドラゴンで、過去の魔王に使役していたドラゴンと言い伝えられています」


「ドラゴンですか、それは少し難しいかもしれませんね。私は魔王やアンデット系であれば聖魔法で遠距離攻撃も可能ですが、物理で有効なのは光剣と光の矢しかありません。光の矢なら遠距離も可能ですが、私弓矢苦手なんです」


「俺は、能力値が最大1000倍になるとは言っても、基本この剣しか使った事が無いからな」


「そうですか…」


「そうですわ、どなたか魔導士や弓使いなどの職業でAかBランク冒険者さんはいらっしゃいますか?」


「遠距離を得意とするAランク冒険者はいません。Bランク冒険者でしたら、多数所属していますが」


「でしたら、そうですね二人ほど同行していただければ、魔龍を討伐してきますよ」


「Bランク冒険者をですか?ですが魔龍はSランクモンスターです。Bランク冒険者では足手まといにはなれど、役にたつとは到底…」


「大丈夫ですよ、能力値5000程度の力や魔力があれば、Sランクモンスターも討伐出来ます」


「Bランク冒険者ですと、最大でも2000程度のステータスになっていますので、5000となるとSランク冒険者様でもないと難しいかと」


「エルクがいるので、2000もあれば余裕ですね。30分の制限はあれど、能力値10倍になりますので」


「確かに!でしたら、当ギルドで遠距離を得意とする二人を呼んできます」


そう言ってマスターはギルドメンバーがいるところに行き、二人の冒険者を連れてきた。


「聖女様、この二人になります」


「初めまして、魔導士のヒカリと言います」


「初めまして、同じく魔導士のヤミです」


「この二人は双子の魔導士で、ヒカリが光・雷・炎魔法の使い手で、ヤミが闇・氷・風魔法の使い手です」


双子というだけあり、ヒカリとヤミは瓜二つの顔をしている。

ヒカリは白い髪が特徴で、白の魔導士ローブを身に纏っている。

ヤミは漆黒のような黒い髪で、黒の魔導士ローブを身に纏っている。

どちらのローブも体形が見辛くなってはいるが、それでもわかってしまうほどに、二人とも豊満な胸だ。


「二人ともレベルは70台後半で、もうすぐAランクになる予定の二人です」


「でしたら大丈夫ですね。では、四人で魔龍討伐に向かいましょう」

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