第4話 紙使いが覚醒しました

「エルク、では旅に出ましょうか」


「ああ、まずは何処に向かうのだ」


「さあ?今は神の啓示もないので、とりあえず北にでも向かいますか。北の国【ノービス】のご飯も美味しいので、旅のならしの為にも簡単な所から向かいましょう」


俺たちは、特に目的もなく、北に向かう事にした。

でも、まずはこの国を出る前に、マロンの部屋着だけは購入した。

あれを毎朝は、男にとっては拷問でしかない。


「さあ、エルクのレベル上げも兼ねて、ノービスにご飯を食べに行きましょう」


「ああ。所でマロンはモンスターと戦えるのか?聖魔法ってアンデッド系には絶大だけど、それ以外のモンスターにも効くのか?」


「一応、聖魔法も種類があって、普通のモンスターに聞くものもありますよ。例えばほら『光剣』」


マロンの手には光輝く剣が現れた。


「それなりにステータスも高いのでBランク程度の魔物でしたら、これで切り伏せますよ」


フフフッ、と少しウットリとした表情をしながら光の剣を見つめ、剣を何回か振り回している。


「マロン、お前って実は好戦的なのか?その顔、ちょっと怖いぞ」


「あら、そうでした?失礼しました。でも、モンスターを切り伏せる感触って、堪らないですよね」


何を思い出したのか、身体をブルブルっと少し震わせ、再度ウットリとした表情で光の剣を見つめる。

この子、本当に聖女なのかな?


「まあでも、それだけ戦えるなら、ノービスに向かうのも安心だな。でも、出来る限りは俺が倒すからな。マロンはレベル最大なんだから」


「分かってますよ。レベル上げが最大の目的ですからね。魔王討伐は最低でもSランクでないと国から受注出来ないですからね」


「魔王討伐って、国が出してる依頼なのか。まあいい、とりあえずノービスに向かおうか」


「はい、エルク」


俺たちは国を出て、北へと進んだ。

ノービスでは漁業が盛んで魚介料理が有名だ。

美味しいと有名な店も多くあるので、少し楽しみでもある。


国を出てすぐにゴブリンに遭遇した。

ゴブリン程度、俺でも簡単に討伐出来るので


「じゃあ、サクッと行きますか」


そう言って俺は、腰にある短剣を手に取りゴブリンに切り付けた。

ゴブリンは俺の一撃であっさりと倒れ、そのまま消滅していった。


《レベルが上がりました》


「昨日はレベルが上がる直前だったのか。ステータスオープン」


==============

名前:エルク

Lv:10

職業:紙

HP:19/20

MP:19/20

腕力:20

魔力:20

防御:20

俊敏:20


ユニークスキル:紙使い

Lv1:紙召喚

Lv2:念写

Lv3:発動式能力上昇札

Lv4:?????

Lv5:?????

Lv6:?????

Lv7:?????

Lv8:?????

Lv9:?????

Lv10:?????


==============


「何か、ユニークスキルのレベルが上がったな。能力上昇って事は支援タイプだったのか。職業”支援術士”のバフ効果が、確か世界最高で能力2倍で、一般的なのが1.1倍だったから、せめて1.1倍は超えたいな。詳細オープン」


☆【発動式能力上昇札】と書かれた紙にバフ効果を付与。

その紙を破る事で、破った者の全能力が10倍となる。

継続時間:30分

クールタイム:無し


「「10倍!?」」


はっきり言って、色々と常識を覆すレベルだ。

支援術士のバフは時間を掛けて術式を組み、多くのMPを消費して発動する。

それでも最大で2倍だ。

それに比べ、俺のは紙の召喚にMPを1消費し、念写はMP消費無し。

それを破るだけなんて、術式を組む時間とは比較にならない程短い。


「エルク、何その規格外スキル?」


「いや、俺もわからん。職業”紙”は最強クラスの支援タイプなのかな?まあとりあえず、1回作ってみるか」


俺は紙を1枚召喚し、発動式能力上昇札を作ってマロンに渡した。


「マロン、とりあえず破ってみてくれないか?」


「はい、分かりました」ビリッ


「ステータスオープン」


==============

名前:マロン

Lv:99

職業:聖女

HP:22110/2211(22110)

MP:92530/9253(52340)

腕力:523(5230)

魔力:13568(135680)

防御:3526(35260)

俊敏:1953(19530)

(バフ補正値:残り29:52)


スキル:聖魔法

スキル:慈愛

スキル:加護

スキル:浄化

スキル:回復魔法

スキル:蘇生魔法

スキル:全魔耐性


==============


「「おお、本当に上がってるよ」」


俺とマロンは、純粋にバフ効果に驚いていた。

ステータス画面を見ていると、後ろからモンスターの気配がしたので振り向くと、そこにはミノタウロスがいた。

Aランクモンスターで、一回目の人生で初クエストで俺を殺したモンスターだ。

この辺に、こんな高ランクモンスターなんて、そうそう出ないから、もしかしたら俺を殺したモンスターなのかもしれない。

でも、俺はつくづく運がないな。


「またお前か…さてと、マロンもBランク程度ならって言ってたけど…」


「大丈夫『光剣』」


そう言って光の剣を生み出し、目にも止まらない速度で移動したと思ったら、ミノタウロスを紙っぺらのように切り伏せた。


「ミノタウロスはAランクだぞ。さっきBランク程度ならって言ってたじゃないか。」


「エルクって、抜けてる所もあるんですね。さっきエルクに貰った札で、今の私はステータス10倍ですよ。なんならSランクモンスターだって、この光剣だけで切り伏せますよ」


「ああ、そうだったな。俺のスキル、実はチートだったのか」


そう言うと、俺は残ってるMPを全部使って紙を召喚し、18枚のバフ効果の紙を作り、俺とマロンでそれぞれ9枚づつ持っておくことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る