恋愛小説短編集~十人十色の恋~
チートマネージャー~冴えない高校1年生男子。でも実は異世界からの転生者で言霊魔法によってチームを強化していたが誰も気付いてくれない。俺の事クビにするとかなり弱くなるけど大丈夫?~
チートマネージャー~冴えない高校1年生男子。でも実は異世界からの転生者で言霊魔法によってチームを強化していたが誰も気付いてくれない。俺の事クビにするとかなり弱くなるけど大丈夫?~
「神童、お前マネージャークをビな。明日から来なくていいぞ」
東京都立海王学園バスケットボール部1年生マネージャーである神童陽一(しんどうよういち)は、突然同級生でキャプテンの海道雷我(かいどうらいが)からクビ勧告された。
海王学園バスケットボール部は創部1年目の1年生だけのチーム。
俺は身長も平均、勉強も平均、運動も平均と特に取柄もない、冴えない陰キャの男子高校生だ。
海王学園が必ず運動部に所属する事が校則で決まっている為、仕方なしにマネージャーとしてバスケットボール部に在籍していた。
そんなバスケットボール部だが、創部1年目にして、先日行われた全国大会で1年生だけのチームにも関わらず全国優勝してしまったのだ。
そんな事もあり、バスケットボール部は女子に非常に人気が出て、先日まで女子バスケットボール部のマネージャーだった安西詩織が男子バスケットボール部マネージャーになりたいと言ってきたのだ。
安西詩織は学年トップの成績に、金髪ロングで目もばっちりの、俗にいう超絶美人だ。
女子バスケットボール部も先日の大会では県大会準優勝と決して弱くはない。
だが、安西詩織は自分が超絶美人で成績優秀であることを自覚し、また自分こそ全国優勝するようなチームのマネージャーにふさわしいと思っているのだ。
そんな安西詩織の申し出に、海道雷我は二つ返事でOKを出したのだ。
仕事は出来る超絶美人がマネージャーになることで、部全体の士気が上がると思っての事だ。
「なあ、俺も仕事はしっかりこなしてたし、わざわざクビにする必要あるのか?」
俺は、別にクビになるのが嫌な訳じゃないが、ぶっちゃけ次の運動部を探すのもめんどくさいので、一応残りたい雰囲気は出してみた。
「お前の事を誘ったのは俺だが、仕事はしてても覇気がない。お前がいるだけで士気が下がるから、はっきり言って迷惑なんだ」
自分から誘っておいて、なんて自己中な男なんだと思ったが、そんな事を言われてまで残りたくも無いのでそのまま俺は退部届を出した。
でも、実は俺が異世界からの転生者で、言霊魔法を使ってチームを応援していたから全国優勝出来たんだけど大丈夫かな?
俺の応援が無いと、みんなの身体能力が著しく下がるから、今のパフォーマンスが発揮できないけど、まあクビになったし関係ないか。
※
次の日、俺は校則でも決められているし、どこか所属を決めないといけないので、部活勧誘の掲示板を見ていた。
そんな時、一人の女子生徒に声をかけられた。
「こんにちは、神童君」
声をかけてきたのは身長180cmと長身で細身の体に、推定Fカップはあるだろう巨乳。
見た目はスポーツ少女といった感じで、髪型はショートヘアーの黒髪、目もくりんとしてかわいらしい顔をしている。
「そうですけど、どうかしましたか?」
俺は初対面の女子に話かけられ、少し戸惑いながらも答える。
「神童君てさ、昨日まで男子バスケットボール部のマネージャーだったよね?それで、うちの女子バスでマネージャーだった安西と入れ替わる形で辞めてたよね?」
「まあ、そうですけど、それがどうかしましたか?」
「私、夢野葵って言います。えっと、……私のものになって下さい!」
俺より大きい夢野さんが、腰を90°にふ折り曲げ、右手を差し出して来た。
「えっ?」
「あっ、ごめんなさい、私たちのもの!」
何か間違えたようで、顔を真っ赤にしながらあたふたしていた。
「えっと、どーゆー事ですか?」
そんな話をしていると、その子の友人らしき子が後ろからひょっこりと顔を出して
「ごめんね、この子お馬鹿ちゃんだから、言葉足らずになっちゃって。僕、春野桜。女子バスの副キャプテンやってるの。で、この葵がキャプテンね。要件なんだけど、女子バスのマネになってくんない?」
「そう、マネージャーになって!」
春野桜はバスケットボール部にしては小柄で150cm。
運動部だけあって引き締まった身体はしているが、胸もぺったんこ。
まあ、一言で言えば幼児体形だ。
少し長めの黒髪は両サイドで纏めてツインテールにして、いかにも元気少女って感じだ。
「え?俺なんかでいいんですか?」
「だって、君は今フリーでしょ?安西のせいで昨日男バスをクビって聞こえてたし。それに葵が神童君の事す」
「桜!!余計な事は言わないで!神童君、私ね神童君がすごく一生懸命にマネージャーの仕事をしてるの見てきたの。だから、女子バスのマネージャーになってくれないかな?」
夢野さんは、その大きな胸の前で両手を合わせながらお願いしてきた。
いや、そんなに思いっきり手を合わせてると、その大きなお胸様が、より強調されちゃうんだけど……
「まあ、どこかに所属はしないといけないですし、俺なんかでよければ、やらせてもらいますよ」
「やっっっったー!!、宜しくね神童君!」
夢野は飛び跳ねながら喜んでいた。
「あつ、ねえねえ神童君、僕の事は桜って呼んでね。苗字は呼ばれ慣れてないからさ」
「わかりました、お願いします夢野さん、桜さん」
「あ、あのぉ、えッと、私の事も葵って呼んでくれませんか?」
「わかりましたよ、葵さん」
葵さんは満面の笑みで
「じゃあ、今日の放課後から宜しくお願いします、神童君」
そう言いながら、元気に両手を大きく振りながら去っていくのだった。
※
放課後、俺は女子バスの練習に参加した。
基本的にはタオルの準備やボールの回収とか雑用をこなしている。
その合間に
「葵さん、頑張って下さいね。桜さん、桜さんのシュートはきっと良く入りますよ」
そんな言葉をかけていた。
「神童君、ありがとう、私頑張るね!」
葵さんは元気いっぱいに答えて、物凄く張り切って練習していた。
「ありがと。僕の華麗な3Pシュート見といてね」
桜さんはそんな事を言いながらゴールを指さしていた。
「さてと、じゃあドリンクとはちみつレモンの準備でもしようかな。えっと、あったあった。じゃあ【疲労回復】っと」
はたから見たらやばい奴かもしれない、飲み物や食べ物に独り言を言っている。
でも、これが俺の言霊魔法。
俺が意識して言葉に発した通りに現象が変化する。
葵さんには頑張ってと抽象的な言い方だったが全体的にパフォーマンスが上がっている。
桜さんは明確にシュートと言っておいたので、さっきから3Pシュートがほとんど外れない。
それと、ドリンクとはちみつレモンに独り言のように言っていたが、これだけで本来ではあり得ないぐらいの疲労回復効果を持った物に変化している。
「葵、あんたダンクなんていつの間に出来るようになったの?あと桜、何そのシュート成功率?二人ともどうしたの?」
「えっと、よくわかんないけど、なんか出来るかなーって飛んでみたらリングに手が届いちゃった」
「僕は前から天才シューターだよ!ってのは冗談として、何だろ?今日はなんだか凄く調子がいいみたい」
「二人とも、練習だけじゃなくて、試合でも同じようにやってよね、明日は県大会決勝で負けたとこと練習試合なんだから」
「「わかってまーす」」
二人は自分の好調に不思議がりながらも返事をしていた。
その後の休憩で、俺が準備したドリンクとはちみつレモンをみんなが口にする。
「キクー」「おいしー」「染みわたるね」
など、色々な事を言いながらも、最後には全員が不思議がりながら
「「「「ねえ、なんか全然疲れてないんだけど???」」」」
休憩前まで1時間、びっしり練習してきたはずなのに、今では練習前じゃないかってぐらい疲れが無い。
さっきまで、疲れて座り込んでいた部員も、今では全く疲れなんてないんじゃないかってぐらい走り回っている。
でも、何でかなんて考えてもわからないし、ランナーズハイみたいなものかなとか考えてはいるけど誰も答えは出てこない。
今日は、そんな感じで、みんな何か不思議な感じを感じながらも練習を終え、明日に向かって少しだけミーティングをした。
「みんな、私はいつも通り全力で点を取りに行くから、フォローはよろしくね!」
葵さんは作戦とも言えない雑な事をみんなに言うと桜さんが
「葵、あんたキャプテンなんだから、もうちょっとは頑張って考えな」
「だってーみんながキャプテンは私って言ったからやってるだけじゃん!元々考えるのは苦手なのー」
みんながって、葵さんは基本的にはみんなに信頼されてるのかななんて思っていると、桜さんが続けて
「いや、葵なら頼まれれば断らないじゃん。あとお馬鹿ちゃんのポジティブ娘だから、ムードメーカーだし」
「「「そうそう」」」
ああ、押し付けられた感じなんだね。
「ぶー、どうせお馬鹿ちゃんですよーだ。作戦はいつもみたいに桜が考えてよ」
「まっそうだよね。とりあえず葵も今日の練習で好調だったし、明日は葵が相手のゴール下を中心にいて、みんなでそこにボール集めようか」
「桜だって、今日調子よかったじゃん!」
「ん~僕は明日はどうなるかわかんないけど、葵のマークがキツくなったら外も使う感じでいこうね」
そんな感じでゆるくミーテイングは終わった。
※
翌日、練習試合の相手である冥王学園の女子バスケットボール部の部員を迎え入れるべく、少し早めに体育館に向かった。
「おはようございます、葵さん」
集合時間よりは早めに来たつもりだったが、すでに葵さんが体育館に来て練習をしていた。
「おはよー、神童君!」
朝から、いつものように満面の笑みで元気に挨拶をしてくれた。
「葵さん、今日の調子はどうですか?」
「ん~、昨日に比べたら何か身体が重たいかな?昨日は出来たけど、今日はダンクも出来なかったし」
まあ、俺の言霊魔法は永続効果ってわけでもないし、むしろそんなに長時間効果は続かない。
1時間程度は続くので、練習や試合なら何回も声を掛ければ問題無いけど、昨日の効果は今日までは続かない。
「そうですか。でも葵さんならダンクなんて簡単に出来ますよ。ほら、もう一回やって見せてくださいよ」
俺がそう言って葵さんにもう一回を促す。
「神童君がそう言うなら出来るかも!」
葵さんは本当にポジティブで、周りも笑顔にするようなタイプだ。
そんな葵さんがドリブルをして「えいっ」っとダンクに踏み切ると、簡単にリングまで手が届きダンクが出来てしまった。
「やっ、やったー!出来た出来た!」
そう言いながら俺の手を取り、ブンブン振り回してきた。
本当に嬉しそうにしているので
「葵さん、すごかったですね」
俺は単純にすごいと言うしか出来なかった。
「ありがとう!練習試合も頑張るね!」
そう言うと、今度は顔を真っ赤にしながら
「あっ!急に手を握っちゃってごめんね…いっぱい練習してたし、手汗とか気持ち悪かったよね…」
顔を真っ赤にしたと思ったら、今度は下を向いて俺に謝罪をしてきた。
「そんな謝らないでくださいよ。手汗って、それだけ頑張ってるって事ですし、素敵ですよ。それと、むしろ陰キャの俺なんかの手を握らせちゃって。逆にごめんなさい」
「そんな!陰キャなんて全然違うよ!神童君は凄く一生懸命だし誠実だし、何より凄くカッコいいから!!」
俺の事をカッコいいなんて、お世辞でもうれしく思っていると
「あっ、あれだよ、カッコいいって、男バスで一生懸命マネージャーやってるの毎日見てたし、ものすごく優しいし…」
「いいえ、ありがとうございます。そんなに褒めてもらえると嬉しいですよ。でも男バスじゃ目立たない俺を毎日見てくれてたんですね。自分のやってた事褒められるのも嬉しいですね」
「そう毎日見つめて?見てた?魅入っていた?ごめん、私何言ってんだろ。とにかく今日は頑張るから、応援よろしくね」
「はい、頑張って下さいね、葵さん」
※
「冥王学園のみなさん、本日は遠いところ来ていただきありがとうございます」
冥王学園は前日の県大会の決勝で海王学園を破り県大会を優勝し、その後全国大会では準優勝と、はっきり言って格上だ。
「では、こちらの更衣室を使って下さい」
「なんだ、海王学園のマネは男子にかわったのか?」
「はい、俺は先日まで男バスのマネでしたが、諸事情で女子バスのマネになったばかりです。本日はよろしくお願いします」
「ほう、あの全国優勝した男バスのマネなら、非常に優秀なんだろうな、今日はよろしく頼むよ」
冥王学園の顧問の先生と挨拶をかわし、更衣室までの案内を終えた。
※
「それでは、冥王学園と海王学園の試合を始めます。礼」
「「「「よろしくお願いします!」」」」
両行選手が大きな声であいさつをしジャンプボールで試合が開始する。
ジャンプボールは葵さんがやるみたいだ。
「葵さん、葵さんならきっとジャンプボール取れますよ」
俺は葵さんにコートの外から声を掛ける。
葵さんは一瞬俺を見てからボールに目を戻してジャンプボールに集中した。
ボールを審判が上に投げ、両行の選手が飛び上がった。
相手も身長は葵さんと同じぐらいだったが、葵さんには俺の言霊魔法の効果がある。
相手より頭一つ分程高くジャンプをし、葵さんが桜さんの方にボールを飛ばす。
「桜、先制頼んだよ!」
「桜さん、今日も絶対入りますよ」
葵さんと俺は桜さんに声を飛ばし「はいよ!」とボールを受け取った桜さんは何となく行けると思ったのか、3Pラインどころか、センターライン近くからシュートをした。
「バカめ、そんなシュート入るはずがない!」
冥王学園の選手がそう言ってこぼれるだろうボールに向かって走るが
シュッ
ボールはリングに触ることも無くゴールに吸い込まれるようにゴールリングを通過した。
「キャー、桜すごいじゃん!そんなところから決めるなんて思って無かったよ!!」
「いやーほら何か入る気がしたんだよねー。僕ってやっぱり天才なのかな?」
「もぉ、調子に乗らないの。でもこの後もよろしくね!」
「はいはい」
そんなやり取りを葵さんと桜さんはしていた。
その後も葵さんと桜さんは絶好調で、葵さんにボールが渡れば1人、また一人と抜いてダンクを決め、葵さんにマークが集中したら外の桜さんが決める。
それに、各インターバル毎に、俺特製言霊魔法付きドリンクで疲労回復し、インターバル明けには全員全く疲労がない状態で試合に戻る。
葵さんと桜さんで点を重ねていき、最終スコアは冥王学園67点対海王学園135点と圧勝という形で終わった。
「まさか!私たちがこんなに大差で負けるなんて。これでも全国大会準優勝校なのよ!」
冥王学園のキャプテンが声を漏らす。
「ねえ海王学園のみなさん、この短い期間で何があったの?それにその体力、どれだけハードな練習をしてきたっていうの?」
そんな、冥王学園キャプテンの率直な意見に
「ん~練習量は特に変えてないし、練習内容も特に変えてないですよ。前回の県大会決勝の時から変わってる事なんて、マネージャーが変わったぐらいですよ」
葵さんが相手のキャプテンの質問に答える。
そう言われ、冥王学園のキャプテンは俺の方を見て
「あなたがマネージャーさん?ねえ、いったい何をしたの?」
「えっと、俺はみんなの為の雑用と、心を込めて応援していただけですよ」
言霊魔法は俺の言葉、応援をみんなに届けている。
だから、本当に応援をしているだけで、それ以上のことは何もしていない。
「そんな…そんなはずないです。だってたった数カ月前までは私たちに全く歯が立たなかったのに、今日は私たちの力が全く通用していない。私たちも決して調子が悪かった訳でもないのに!」
「もうそのぐらいにして帰りますよ。この子、バスケに関しては本当に熱心で真剣で、だから急に強くなった貴方たちが何をしたのか気になってるだけなの。気を悪くしたならごめんなさいね」
顧問の先生がキャプテンの高鳴りをなだめ、少し涙目になっているキャプテンを連れて行った。
※
「葵さん、桜さん、お疲れ様でした」
俺と葵さんと桜さんは実は家が同じ方向だったようで、一緒に帰っている。
「はい、ありがとうございます!」
葵さんは満面の笑みで答える。
「神童君、僕の3Pシュート凄かったでしょ。やっぱり僕は天才だったのかもしれないね」
実際、得点の半分以上は桜さんの3Pシュートでの得点だ。
しかし、俺が『絶対』入りますなんて言ってしまったので、桜さんのシュート成功率が100%と異常な数字をたたき出してしまった。
「桜さん、今日は本当に凄かったですね」
「えへへ」
桜さんは少し照れ笑いをしていた。
「それにしても、神童君がマネージャーになってくれてから、物凄く調子が良いです!今日の朝も神童君に出来るって言われるとなんだか出来る気がして、本当に出来ちゃって」
「ほんとにね。僕も3Pシュートには元々自信はあったけど、それでも成功率50%ぐらいだったのが、今日は全く外す気がしなかったよ」
「それは、二人が前から頑張って来た結果だと思いますよ」
そんな事を話しながら歩いていると
「ねえ神童君、僕さ神童君の事好きなんだ」
突然の桜さんの告白に「「えっ!?」」と俺と葵さんがシンクロした。
「桜さん、えッとそれはどういった事でしょうか?」
理解が追い付かず、率直に桜さんに聞き返してしまった。
「もう、神童君は何回も僕の口から告白させたいのかな?」
「えッと、はい、ちょっと待ってください」
とりあえず、まったく整理出来ない頭を冷静に冷静にするように落ち着いていると横で
「えっ桜が…何で?わたしも…どうゆう事?えっと、うんと……」
葵さんが100面相の如く毎秒表情を変えながらあーだこうだとブツブツ独り言を話していると
「なんてね、びっくりした?冗談だよ」
そう言って「あはは」と大きな声で笑っていた。
俺は
「桜さんびっくりするじゃないですか」
そう言いながらため息をついていると、横では葵さんが桜さんの言葉が届いていないのか、まだブツブツ独り言を言っている。
ちょっとこのままも心配なので、少し本心を話してもらおうと思い、軽く言霊魔法を載せて
「葵さん大丈夫ですか?何か言いたい事があるなら言ってくれて大丈夫だと思いますよ」
軽い気持ちで、葵さんに本心で話してもらおうかと思っていたのだが
「だ、大丈夫じゃないです!桜が神童君の事を好きだなんて考えたことも無かったです!でも私も神童君が大好きで、でも桜は親友だから我慢しないといけないのか、でもやっぱり私も大好きで我慢が出来なくって」
葵さんが大声でそんな事を叫んでしまった。
えっと、やばいな、俺言霊魔法使うタイミング間違えたな。
今のが本心って事は、言霊魔法を使って無理やり好きだと白状させてしまった形だ。
そんな事を考えていると
「ちょっとー葵声大きすぎで、後半何叫んでるか全然イミフだったんですけどー。って言うか、僕が神童君好きっての冗談だって言ったの聞いてなかったの?まったく葵は本当にお馬鹿ちゃんなんだから。ねえ神童君」
「そうだね、本当に後半は何を言ってるのかわからなかったけど、桜さんのは冗談で俺たちをびっくりさせただけですよ」
桜さんの言葉に乗っかり、俺も後半聞こえないふりをした。
グッジョブ桜さん!
「えっ?冗談…?」
冷静になって自分の言った事で顔を真っ赤にし、でも後半が聞こえていない事に安堵をしながら。
「ねえ、本当に後半、何言ってたか聞こえてない?」
「「うん、聞こえてないよ」」
俺と桜さんはシンクロして葵さんに答える。
その後急に
「あっ僕、喉乾いたからジュース買ってくるね」
そう言って桜さんが自販機に向かいながら、俺に親指を立ててニカッと笑顔で去っていった。
まあ、聞こえてたよね、あれは。
だよね、女の子から言わせちゃマズイよね。
「ねえ葵さん、ちょっと話があるんだけど良いかな?」
「えっ?はい?何でしょうか?」
葵さんはまだ若干顔を赤くしながらも俺を見て答える。
「えッとですね、まだ知り合って数日なんで、こいつ何言ってんだって思うかもしてないのですが、俺は葵さんの天真爛漫で元気な所が好きですよ」
「えっ?はい?ありがとうございます」
葵さんはきょとんとしながら、俺の言葉に返す。
「それでなんですけど、もし葵さんが嫌じゃなければでいいんですけど」
「はい」
「俺と付き合ってもらえませんか?」
「はい。えっ?えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?い、今なんて言いました!?!?」
「そんな何回も言うのは恥ずかしいのですが…葵さん、俺の彼女になってくれませんか?」
葵さんは顔を真っ赤にしながら
「はっ…はい!!!是非、是非宜しくお願いします」
そう言って、葵さんは力強く俺の手を握りしめていた。
「葵さん、ちょっと手が痛いです。これからよろしくお願いします」
そう言って俺は微笑み頭を下げた。
それに呼応して、葵さんは何度も何度も頭を下げていた。
「うーん、微笑ましいねー。まさかここまで上手く行くとはね」
その光景を少し離れたところでニヤニヤしながら桜さんが見ているのだった。
その後、戻ってきた桜さんに俺が葵さんと付き合う事になったのを報告し、桜さんは「おめでとう」と祝福してくれた。
葵さんはそのあと、ずっと顔が緩んだままで、最後まで顔を赤くしたまま家に帰るのだった。
葵さんを送った後、桜さんとはもう少し一緒だったのでそのまま歩き
「桜さん、葵さんの気持ち知ってました?」
「当然、だって僕は葵の親友だから」
そう言って葵さんはニコッと満面の笑みをしていた。
そう言った後、不意に桜さんは俺の顔のすぐ近くまで自身の顔を近づけ、俺の耳元でささやいた
「あと、あそこで言霊魔法使うのは、さすがに予想外だったぞ」
「!?!?」
「ふふ、声にならないぐらいびっくりしてるね」
さっきまで満面の笑だったが、今度は月明かりに妖艶に笑い、俺の唇に指を立て
「実は僕も異世界からの転生者なんだ。僕は人の心が読める心読魔法が使えるの」
「俺以外にも転生者がいたなんて…」
「だからね、初めて会った時に僕の事幼児体形なんて思ったのも覚えてるからね!」
今度は少し怒った顔をして俺を睨んで来る。
「いや、幼児体形なんて思ってないぞ、少し胸がおとなしめだなと感じてただけで…」
「僕の前で嘘はつけないよ?」
「…ごめんなさい」
俺は深々と頭を下げた。
「まっそんな冗談はどうでもいいけど、これから葵の事宜しく頼んだよ。あと神童君の魔法で僕たちを全国優勝させてね」
そう言うと、また満面の笑みを俺に向ける。
※
【男子バスケットボール部side】簡単に
俺の抜けた男子バスケットボール部は、最初こそ超絶美女のマネージャーが入った事で士気は上がったがそれだけだ。
元々練習嫌いで練習は適当にしていたが、それでも適当にボールを投げても入る、軽く飛べばダンクも出来た。
練習は嫌いだが、どれだけ動いてもすぐに疲れなんて回復していた。
それがどうした事か、ボールは全然ゴールリングを通ることは無くなり、ダンクをしようとしてもリングに掠ることも出来ない。
今まで1試合通してほとんど息切れしなかったが、今では第2Qの途中には完全にガス欠で全く動けない。
全国の強豪と練習試合をするも全くダメで全部が100点以上の差で負ける始末だ。
しまいには、地区の高校が集まりリーグ戦をするが全戦全敗。
全国優勝したチームとは誰も思えないほど、はっきり言って下手クソの集団となっていた。
全国優勝したチームのマネージャーにこそふさわしいと思っていた安西詩織は毎日のように海道雷我に対しヒステリックに話をして、部内の雰囲気も非常に悪い状態になっていた。
部員数も全盛期の1/10まで減り、今や部の存続が怪しまれるような状態だ。
※
まあでも、俺の事をクビにしたやつらなんて、俺には関係ない。
俺は大切な恋人である葵さんと、その親友の桜さん、俺にやさしくしてくれる女子バスのみんなと全国優勝を目指すんだから、男子バスケットボール部がどうなっても関係ない。
恋愛小説短編集~十人十色の恋~ 灰被り姫 @sakuranbou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。恋愛小説短編集~十人十色の恋~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます