恋愛小説短編集~十人十色の恋~

灰被り姫

『天使と呼ばれる人気美少女YouTuber』と呼ばれる男子高校生

僕は、天使と呼ばれる人気美少女YouTuberの早乙女渚(さおとめなぎさ)は、17歳の男子高校生だ。


幼なじみで、人気モデルの九重真理(ここのえまり)のツイートのせいで美少女YouTuberになってしまった。


あれはまだ、僕がマイナーYouTuberとして、女の子みたいな声を使って、歌ってみたとかやってた頃。

その頃は、チャンネル登録者数も100人程度の超マイナーで、顔も出さず性別も公表せずにやっていた。

それなのに真理がフォロワー数500万人の自分のTwitterで、何故か僕のチャンネルを宣伝なんてしたもんだから、その日の内に登録者数が10万人に爆上がりだ。

ツイートの内容は


「私の幼なじみの渚のYouTuberチャンネル『渚チャンネル』なんだけど、ホントに可愛い声で私一人で何回聴いてんのってぐらい再生してるの(笑)本人もめっちゃ可愛いのに、いっつも変な画像だけで本人出てないけど、この間一緒にハロウィンで写真撮ったから載せちゃね♪」


と、先日ハロウィンで無理やり女装させられ、一緒に写った写真をアップされていた…。

学校から帰ってチャンネルを見ると、急に登録者数も増えてコメントもいっぱい…。

殆どのコメントは、声も見た目も天使みたいと…。

確かにその時撮ったコスプレは、天使のコスプレだけどさ…。

僕は真理に抗議をしたが、時すでに遅し…。

ツイートは削除してくれたけど、既に多くの人の目に…。


その後も順調に登録者数も増え100万人を超える所まで増えてしまった。

そして大多数の要望として、顔出しして歌って欲しいと…。

いや、僕男なんだけど…。

どうすんのさ、顔なんて出して…。


どうしようと悩んでいると、隣に座ってる真理が

「そんなの、女装して顔出しして歌えばいいじゃん」

「服なら私が貸してあげるよ♪」


非常に楽しそうに、笑いながら真理が提案してくる。

確かに身丈など、僕と真理は近い所がある。

だからといって彼女の服を着て女装をして、YouTuberとして歌えと?

それは、どんな罰ゲームなんだ?


それでも、結局断りきれずに、その後は女装してYouTuberとして歌う事になった…。


そのおかげなのか、登録者数は300万人を超えて、既にYouTuberの中でもトップランカーになっていた。


「ねえ真理、僕は何時まで真理の悪ふざけに付き合わないといけないのさ?」


「えー、渚可愛いし、ずっとそのままでいいじゃん♪」


「何言ってんのさ。嫌だよ、僕は男なんだし」


「そんなの知ってるって。だって私の可愛い可愛い天使の彼氏君なんだからさ」


真理は相変わらずニヤニヤしながら女装姿の僕を見て笑っている。


「僕は男なんだからさ、可愛いなんて言われても嬉しくないんだよ」


「でもさ、渚はそんなに可愛いし、私みたいな可愛い彼女もいて幸せじゃん♪」


「そりゃー、真理はとっても可愛いけどさ…」


「いやー、渚に可愛いなんて言われると照れちゃうねー♪」


「だから、そうじゃなくって、僕は可愛くなりたくないの。もっと男らしくなりたいの」


真理には何を言っても無駄なのは知ってるけどさ

とりあえず文句は言いたいしさ…


「ところで渚ー。今度一緒に雑誌の撮影しない?」


「は?何言ってんのさ?」


「いやねー。雑誌の編集長さんにさ、今話題の天使と呼ばれる美少女YouTuberの写真が撮りたいってお願いされちゃったんだよねー。ほらツイートで幼なじみってのはバレてるしさ(笑)」


「いやいや、やる訳ないでしょ」


「えー。でもさ、編集長にはオッケーって言っちゃったしさ。ほら、1回だけだから。ちょっとだけだからさ♪」


「いやいや、なんで勝手にOKしてるのさ…」


「ほらね、私の大好きな可愛い可愛い渚ちゃんを、みんなにもっと知ってもらいたいじゃん♪」


「だからさ、なんで美少女なんだよ…。僕は男なんだって…」


「そんなのどうでもいいじゃん♪とりあえず可愛いうちに稼げるだけ稼いで、早く私と結婚しようよ♪」


「いやいや、結婚って何?初耳なんだけど?そりゃー真理の事は大好きだよ。だからって女装は…」


「結婚は決定なんだよ♪ほら渚、私をお嫁に貰いなさい♪」


「なんで僕は真理にプロポーズされてんのさ…」


「だって、渚が何時までたってもプロポーズしてくれないからさー」


「ねえ真理、僕達はまだ高校生。僕はまだ17歳で結婚出来ないからね?なんでそれでプロポーズしないって怒られないといけないのさ?」


「結婚に年齢なんて関係ないもん」


「いやいや、結婚出来る年齢は法律で決まってるからね」


「そーゆー事じゃないもん」


真理はプロポーズしない僕に怒って、プンプンしている。

トップモデルの真理のプンプン顔は、ぶっちゃけ可愛いけどさ…


「結婚はいいよ、わかったよ。真理、僕のお嫁さんになってね。でも、だからって女装続けるのは間違ってると思うんだ」


「渚からのプロポーズ…いやー、嬉しいね♪渚の女装は、私の趣味だから、辞めちゃダメだよ♪」


「いやいや、趣味なんかい!?」


「100%私の趣味だよ♪だから撮影もお願いね♪」


そう言って真理は僕のほっぺたに口付けをした。

ズルいよ、そんなに可愛いの…


「撮影は、1回だけだからね…」


「わかったよ♪じゃあ明日の9時に迎えに来るね♪」


「明日なんかい!?」


その時は思いもよらなかった…いや、ある程度想像は出来ていたけど、その想像にはそっと蓋をしてしまった…




「渚ー、おはよー♪今日は楽しみだねー」


「ねえ真理、今日は1日この格好なの?」


「当たり前だよ♪だって女装してないとスタジオ入れないじゃん♪」


「………」


「さっ、行くよ渚♪」




スタジオに着くと、先ずはメイクさんやスタイリストさんにセットをしてもらう。

その際に肌が綺麗とか目が凄くおっきくて可愛いとか、何故か凄く褒められたけど、僕って男には見えないのかな…?


準備も終わり、真理と合流して撮影が始まった。

僕は天使と呼ばれていることもあり、全身白のワンピースで清楚系。

真理は普段の軽い感じとは全然違い、全身を黒で統一し、かなり大人っぽい印象になっている。

さすが日本でもトップランカーのモデルだけあって、普段の印象とは全然違う。


「真理ちゃーん、渚ちゃーん」


カメラマンの指示に従って、僕と真理は順調に撮影を進めて行く。

撮影は真理がある程度引っ張ってくれた事もあり、特に問題も無く終了した。


「渚ちゃん、今日はありがとうね。この後インタビューもお願いしたいけど良いかな?」


いかにもキャリアウーマンといった美女、編集長の進藤優奈(しんどうゆうな)さんから、インタビューをお願いされた。


「全然いーですよ、優奈ちゃん♪」


僕の返答を待つことなく、真理が勝手に返答してしまった。

そうして別室に案内され、YouTuberとしての活動や、天使と呼ばれている事など、色々なインタビューをうけ、最後に編集長の進藤さんから


「ねえ渚ちゃん、うちの雑誌の専属にならない?」


そんな誘いがあったが、そこは真理が


「ダメだよ優奈ちゃん、渚はモデルにはならないから専属は無理だよー」


真理がしっかりと断ってくれたと思ったが…


「専属は無理だけど、私に言ってくれれば、何時でも連れて来るよ♪ねっ渚♪」


今回だけの約束はどうなった…。

でも、真理のその満面の笑み…逆らえないじゃん、ズルいよ…。


「はい、たまにであれば、真理に話を通して貰えれば…」


こうして、僕は美少女YouTuber兼天使のモデルとして活動する事になってしまったのだ…。




「真理、今回だけって言ってなかったっけ?」


家に帰り女装は辞め、真剣な顔で真理に向き合う。


「真剣な顔の渚も、やっぱ可愛いーね♪」


「真理はそうやって、すぐに話題を変えないの!」


「えーいいじゃん、渚が可愛いんだから♪日本中の、いや世界中のみんなに可愛い渚を知ってもらわないとさ♪」


「とにかく、僕は早く女装なんて辞めたいの」


「もー、渚はホントにワガママなんだからー」


「いやいや、いつもワガママなのは真理でしょ?」


「それはそうと、来週アップするYouTubeは出来てるの?」


僕は週に1本の歌ってみた+トーク動画をアップしている。

歌ってみたは前からで、トークに関してはリクエストが多くって、毎回前回の動画のコメントでトーク内容を募集して内容を決めている。

今回は撮影とか色々あり、まだ出来ていなかった。


「今日も撮影に付き合わされたし、まだ全然だよ」


「じゃあさ、来週は私とコラボでライブ配信しない?」


「なんでライブ配信なのさ?」


「ほら、明後日渚の誕生日で、来週は18歳になって初めてのアップ予定じゃん?だから、何か特別な事しようよ」


「それで、なんでライブなの?」


「私もさ、渚をお祝いしたいから、生でハッピーバースデイ歌うし、ほら私が出れば視聴者も少しは増えるじゃん。それが渚へのプレゼント」


「まあ、たまにはいいけどさ、事務所とか大丈夫なの?」


「大丈夫だよ、先月にはOK貰ってるから♪」


「早い!!どんだけ前から準備してんのさ!!」


「まあまあ、とにかく当日は私の歌と渚の歌、後は誕生日会的なライブ配信で決定ね♪」


「うん、まあそれならそんなに準備もいらないからいいよ」




そんなこんなで、ライブ配信当日がやってきた。

今日はなんと、王子様風の衣装だ。

配信のタイトルコールは


『男装王子渚君と真理姫様のお誕生日会』


いや、僕男だから。

男装じゃなくて、普通だから…。


「じゃあ、さっそくだけど、私から渚に歌のプレゼントだね♪」


そう言うと、真理はとても綺麗な歌声で、僕にhappyBirthdayの歌をプレゼントしてくれた。

真理はモデルでけど、モデルをする前はニコ生で歌い手をやっていた。

その頃は顔出しはしていなかったけど、歌だけでも結構人気があり、透き通るような声で多くの人を魅了した。

モデルを始めてからは全然歌っていなかったから、今日この配信を聞いている人も、真理の歌声には驚いているようだ。

その後は、僕が歌いそのまま誕生日会へと以降していった。


真理が事前にツイッターで配信の予告をしていたこともあり、あり得ないぐらい沢山の視聴者さんから、読むのも大変なぐらいのコメントが流れてきて、その中からいくつかの質問に答えながら配信を進めていった。


「じゃあ、今日の配信はあと10分ぐらいだね」


「あっ、渚!ちょっといいかな?」


「どうしたの真理?」


真理はそう言うと、後ろに置いてあった鞄から小さな箱を取り出して


「渚!私からのプレゼント!!」


「わっ!ありがとう真理。嬉しいよ!」


僕が真理からのプレゼントを開けると


「渚、私と結婚して!大好きだよ!」


「………っえ?」


「だから、私と結婚しよ、渚!」


そう言って真理は、僕に抱き着いてキスをしてきた。


「んんっ!!ちょっっっ!ちょっと待って真理!!」


「ん?どうしたの渚?」


「どういうことなのさ真理!?」


「ん?私から渚へ、公開プロポーズだよ♪」


「え?だって、僕は女で?あれ違う……僕は男で真理は女の子。で、真理からプロポーズ??」


「あっ、ねえ渚、配信終了予定まであと少しだけど、視聴者さんがすごい荒れてるからもうちょっと続けようね」


「え?あ?うん……」


「あと、視聴者のみんな、渚はホントは男の子で、私の趣味で女装させてたんだ♪」

「だから渚は、ホントは天使と呼ばれる美少年男の娘YouTuberなんだ♪」


えっと、僕は軽くないパニックを起こし、考えが纏まらないままその後の配信を続け


「ねえ渚、そろそろ配信は終わりにするとして、ここにサインをちょうだい♪」


「え?あ?うん」


そうやって、僕はパニック状態のまま、婚姻届けにサインをしたのだ、何万人の視聴者の見守る前で…


「じゃあ、みんな、今日は見てくれてありがとうねー♪」


真理がそう締めて、今日の配信は終了し、そのあと急に


「渚!行くよ!」


そう言って僕は真理に連れられて、市役所にやって来ていた。


「ほら渚、緊張するね!」


「あっ、うん……」


僕はまだパニックから回復出来ていないが、真理がてきぱき進め婚姻届けを提出していた。

チラッと見えたが、証人の所には、しっかりと僕の親の筆跡で記名がされていた。

ねえ、僕の知らない所で、何で勝手に色々と進んでるの?


「渚、今日から私は早乙女真理♪」

「末永ーく幸せにしてね♪」


「……わかったよ真理。僕が真理を幸せにするね」


「ありがとうね、渚!」


そう言って真理は、市役所の受付の前だって言うのに、僕に思いっきり抱き着いて来た。




その後だけど、配信の数分後には纏めニュースになりネットでは大人気モデルと大人気YouTuberの百合婚とか、あることない事騒がれてた。

そして翌日には、朝からずっと真理の公開プロポーズの件や、いつの間にか真理の事務所が各所にFAXした結婚報告が一日中報道されていた。

真理はいったいどれだけ先に根回しをしていたのか……。


数日は僕と真理の話題で持ちきりだったけど、熱はそんなに続かないので、少ししたら落ち着き始めてきた。


僕と言えば、今回の件で男だという事が世間に周知されたので、天使と呼ばれる人気美少女YouTuberと呼ばれることは無くなったけど……。

僕は『天使と呼ばれる王子様風男の娘YouTuber』として、その後も真理の趣味前回で女装をつづけながら配信を続けていた。

あの時の王子様風のコスプレが好評で、女子の登録者も増え、今では1000万人を超え、日本ではトップのYouTuberとなっていた。


真理はその後もモデルの仕事を続けて、他にも「私はママタレになるんだ!」とテレビにも積極的に出るようになった。



月日は流れて、僕たちは22歳になった。

そうして、僕と真理の間に男の子と女の子の双子が生まれた。

二人とも超が付くほどの美形で、また両親が日本でトップのYouTuberと、今では好感度ランキング・なりたい顔ランキングなど、様々なランキングで1位に居続けるトップタレントの真理。

そんな4人の周りには常に人が集まる状況になっていしまい、早々に病院を退院することにした。


「真理、僕と結婚してくれてありがとうね」


「どうしたの渚?そんなあらたまってさー?」


「真理がいて二人の子供がいて、幸せだなって。それも、真理が僕にプロポーズしてくれたからおかげだからさ」

「だからさ、僕と結婚してくれてありがとう。これからも3人を幸せに出来るように頑張るからね」


「私は、渚が居れば、それだけで幸せだよ♪」


今日も真理は、僕の隣で太陽みたいな笑顔で笑っています。

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