12話 白線に沿って駆けて、ゴール手前でコケる

「はぁ? ゴールデンウィークに別荘で泊まりぃ? 良いじゃん、めっちゃエロいなそれ」


 4月27日火曜日、2限の体育は本日体力テスト。現在女子は体育館でシャトルランを、男子は100メートル走を行っている。そんなわけで僕は今、クラスで一番仲が良い友人の豊田聡志とよださとしと共に、懸命に走るクラスメイトへ心の中でエールを送りつつ、グラウンドの端で順番待ちをしながらで雑談の真っ最中である……いや、雑談ではないな。これはそう、僕が抱えている悩みに対しての相談というのが正しい。


「聡志も来てくれないかな。メンツが女子ばかりだからちょっと困ってるんだ」


 ゴールデンウィークに、友人の親戚が保有する別荘に宿泊。良い響きだ。現状メンバーとして決定しているのがまず所有者の親戚である美央子。そして彼女の親友である理夢と、僕と円香の4人……だがこれは少し何というか、別に嫌ってわけじゃなく、流石に気が引けるのが正直なところである。


「なんで? 困るとこある? 可愛い子ばっかじゃん」


 聡志は去年から同じクラスで美央子や円香も良く知っている人物。来てくれるならば有り難いし文句も出ないと思うのだが……どうかな。


「割合が問題なんだ。男子だけなら良い。女子だけでも良い。でも一人だけ異性が混じってたらお互いに気を遣ってしまうだろ?」


「ムラムラするっつーことか?」


「違うよ……異性の目を彼女達が気にして存分に楽しめないんじゃないかって事。すっぴんや薄着で室内をうろついたりとかさ」


「マジで返すなって。てかそー思ったんなら断りゃよくね」


「円香が『僕が行かないなら行かない』と言うんだよ。他にも何人かに声を掛けようかと思ったんだけど、あの子の人付き合いを考えるとどうにもね……」


 加えて美央子も理夢も、僕が幾つかの理由を用いて拒否しようとも嫌な顔一つしないし。あれ、もしかして僕は異性としてカウントされていないのか? 


「ははっ、お前ら相変わらずべったりだな」


 聡志はそう言って軽く鼻を鳴らし、僕の苦悩を簡単に嘲笑った。彼のこうした性格には時々苦い思いをするが、一緒に居て楽だと感じる事も多い為何とも言えない。


「いい加減付き合ったらどうだ? 円香にしても美央子にしても誰でも良いけどよ。お前がこのままフラついてたら、絶対面倒になる」


 だがそんな彼まで、こんな事を言うのだ……僕だって別に鈍感ってわけじゃないから分かっている。多分近い将来、彼の言う「面倒」はやってくるのだろう。だからって、「面倒」を避ける為に……誰かと付き合えって? 好きでもないのに? 冗談じゃない。僕はそんな関係は必要無いのだ。


「そういう聡志は? 真由美ちゃんとまた喧嘩してるって聞いたよ」

 

 風の噂で聞いた話を、そんな内心に任せて聡志へ当て付けてみる。すると彼の表情が途端に引き攣った。この様子では恐らく関係の修復は未だ困難と見える。


「はぁ、やっぱ知ってる? やっぱ知ってるよなあ」


 一年時から交際している彼らの間には、喧嘩が絶えない。しかし破局と復縁を繰り返し、それでもまだ付き合えているのだから側から見れば最早痴話喧嘩レベルであるが、当人からすればたまったものではないのだろう。今朝も廊下でブチギレられている聡志を目撃したという報告が僕のところに幾つか来たし。


「いやちょっと聞いてくれよ……1週間くらい前だったか、アイツが『今度の記念日は何しよっか?』って聞いて来たわけよ。んで俺は「あー、もうそんな時期か」って、したら無茶無茶不機嫌な顔になってさー」


 なるほど、だとすればもうこの先は聞かずとも理解出来る話だ。


「もしかしてそこで『何でそんな怒ってんの?』とか『これくらいで怒るなよ』とか言ってないよね?」


 僕が言うと、彼は何でか知らんが照れたように笑みを浮かべた。


「あ、分かっちゃう?」


 楽観的な態度は時として人に安らぎを与えるが、軽薄と捉えられる危険性もある事を彼は知らないらしい……とはいえ、僕には彼の気持ちも彼女も気持ちも両方共感出来る。聡志からすれば単純に無意識に返しただけだったのだろう。でも彼女の方は記念日を楽しみにしていて意識していて、それが自分だけだったのだと僅かでも思ってしまった。だから悲しいし辛いし、悔しかったのだと思う。


「ったく、今度はどうすっかな……ん、次俺の番っぽいから行ってくるわ」


「うん。頑張って」


 体育教師からお呼びが掛かった聡志は、どういうわけか人差し指と中指を眉間近くで立てて格好を付けて手を振って、スタート位置へと向かった……その背中は彼が自分で言った「面倒」の真っ最中の筈なのに、僕は酷く眩しく見えた。付き合っても付き合わなくても面倒には変わりがない。でも、何だろう。彼はそれでもどこか楽しそうで羨ましいな。


 笛が鳴り響き、彼が駆けていく。一緒に並んだ3人の内で誰よりも早くグラウンドを横断する脚力に周囲のクラスメイトから歓声が上がる。力強く土を蹴り飛ばし、腕を振るう様はどこか余裕さえ感じられる。才能の差、持って生まれた違い、あれを目の当たりにしたならきっと、喧嘩中の彼女も惚れ直すに違いないと思った……僕だって毎朝ジョギングしているけど、あれには勝てそうにないな。


 

 そうして放課後。


 僕がいよいよ本格的にジム通いを検討して、ゴールデンウィークの別荘の件については聡志に「そもそも部活あるから無理だったわ」という身も蓋もない回答を与えられて、彼をサッカー部へと送り出した16時。バイトも無いし家に帰ってやりたい放題じゃないかとワクワクしていた夕方。


「優太このあとヒマなん?」


 僕が鼻歌混じりで鞄に教科書をぶち込んでいると、既に帰り支度を終えたらしい理夢からそう声を掛けられる。


「えーっと、暇かな?」


 どこか浮かない様子の彼女に、僕は首を傾げて朧げな肯定を返した……美央子は先程『家の用事がある』と足早に帰宅しているし、というか最近用事多いな。確かこの前も『親の友人の会社のパーティーに出席する』とかなんとか。相変わらずどこのテレビドラマから出て来たんだと思える程にセレブ生活を送っているらしいが、理夢の不機嫌はそれが原因か? 本当は僕ではなく彼女を誘うつもりだったとか、どこか行きたい場所があったとか。新学期始まったばかり、出会ったばかりだろうに、それでご機嫌斜めとは本当に仲が良いようで何より。


「カラオケ、行きたいんだけど」


「うーん。それだと円香は来てくれないと思うよ?」


 あの子は人前で歌うなどの行為を嫌がるだろうし。尤も、これが例えおしゃれなカフェに行こうという誘いであっても彼女は『高い』と首を横に振るだろう。


「まどっちゃんには悪いけどさ、今日は二人で行きたい……ちょっと話したい事もあるし」


 登下校を共にしている円香も当然一緒だと考えていた僕は、理夢の提案に少し顔を顰めた……しかし、また『ちょっと話』か。様子からしてきっと軽い世間話ではない気がするけど。


「分かった。円香には連絡しておくから二人で行こうか」


 まさか告白ではないだろう。自画自賛のようで嫌になるが、僕は他人の好意には敏感な方で、出会ってから今日に至るまで理夢から全くその気が感じられない。ゼロではないが、それもどちらかと言えば友愛に傾いたものだと思うし。


 ……え、違うよね? いやいやそんなわけないよ。確かに出会った日の出来事は刺激的かつロマンティックなものだったと思うけど、それだけじゃ人は人を好きになったりしないよね。実際二人きりでどこかに行こうなんて誘われたのは今日が初めてだし。好きならもっとこう、好き好きアピールみたいなのしてくるじゃんか。やたら近くに寄って来たりとか、目線を凄く合わせてきたりとか、さりげなくボディータッチしてみたりとか、用も無いのにメール送って来たりとか、そんな事一度だって、無かった筈だ。


 と、僕が内心ビビりまくりながら駅前のカラオケ店に到着して、薄暗な部屋にて隣同士で席に着いた途端に理夢が、珍しく真剣な様子で口を開く。


「で、美央っちと優太ってどういう関係なん?」


 あ、本当に告白じゃなかった。


 僕は彼女の言葉に安堵すると同時に、降り掛かった火の粉についてどうしたものかと考える。


「前にも説明したろ? 友達だよ」


 当然僕の返答に難色を示す理夢の表情には見覚えがあった。始業式当日に彼女は今と全く同じ質問をして、僕が後に「そういうのはあまり聞かない方が良い。万が一にでも美央子が僕を、僕が美央子を好きだった場合にややこしい事になるから」と核心を曖昧にして釘を刺した時と同じものだったからだ。しかし、こうして再度聞かれているというのはつまり、僕の注意は無駄だったのだろう。


「そーいうのいいから。今日は真面目に答えてよ」


 彼女は僅かにこちらへ寄ると顔を近付けて追求を続けてくる……真面目も何も、美央子が何も言っていないのなら僕からも何も言えないのだが、困ったな。ここで僕が仮に『美央子からどこまで聞いている?』と質問出来れば簡単。でもそれは『ややこしい何かはありました』と答えるとほぼ同義。彼女は現在、美央子に最も近しい人間である事は間違いない。だが春休み直前のあの出来事については全くの無関係で当事者ではないのだから、僕から与えられる情報は一ミリも無い。


「理夢はどうしてそんな事を聞くの? 何が納得出来ない?」


「それは……わかんない」


 彼女は僕から目線を逸らすと少し距離を取って俯いて、ドリンクバーで補給して来たコーラを一気に飲み干していく。それから空いたグラスを空いたままで握り締め、モニターで流れている陽気な映像を黙って見つめ始めた。そんな彼女のセンチメンタルな様子に僕もまた沈黙してしまって、じっと眺めるより他に手段がなかった。そうして無言の時間が幾らか過ぎていって、家のテレビより何倍も大きい音量の鬱陶しいBGMも2周目に突入しようかという瞬間、


「友達なんて要らない。どーせすぐ別れちゃうから」


 ぽつり、彼女はそう呟いた。


「どんなに気が合って話すのが楽しくたっていつだって、ウチは頭の片隅でそう思ってる。転勤しまくる親を恨んだこともあったよ。クラスでお別れ会を開かれる度に、家帰って泣いてた。こんな辛いなら友達なんて要らないって」


 唐突に始まった理夢の独白に、僕はまだ沈黙を続けた。しかし今度は、自分の意思によるものじゃない。僕は突然のカロリー過多な話に閉口してしまったのだ……しかし、やはりそういう悩みを抱えていたのか。


「と、そんな感じのことを中学の始めまでは考えてたっけ。いやー、あん時はまだ若かったなあ。今思うとみんなにはごめんって思うし、後悔してるよ。だってよくよく考えたらさ、本気で会いたかったら幾らでも手段あるじゃん? でもウチもみんなも離れたら離れっぱなしで、ウチもみんなも結局それで良かったって、簡単に諦められる程度の関係だったんだって気が付いた」


 違った。どうやら解決済みらしい。照れたような笑みを浮かべて分かり易く頭を抱える動作をする彼女に、僕はまだ黙っておこうと……どうしてそんな話をするのだろう。また、先程の質問とどのような関係があるのだろうか理解出来なかったからだ。


 彼女は空のグラスをテーブルへ徐に置くと、「でもさ」とまた声色を沈める。


「ウチはやっぱりいつも途中からじゃん? だからみんなにはウチが知らない今まであって、ウチにもあって、それがちょっと壁になってるっていうかなんていうか……なんていうの?」


 何だか知らんが何というか聞かれているようなので、一体全体良く分からんが僕はここでようやく口を開く事にした。


「皆に置いて行かれている気がして寂しい、とか? まるで自分だけが違う場所に居るような感覚がある、とか?」


 とりあえず思い付いた単語を並べてみると、彼女は「それな!」と声を上げ、もう情緒の方が大変な様子に……だがなるほど。大体言いたい事は理解出来た。


「ウチ、決めてたんよ。今度の転校は目一杯楽しもうって。深入り出来るだけしまくって、失いたくない、離れても会いたいって思える友達見つけようって」


 要するに、彼女はとっくに気が付いていたのだ……僕と美央子の間に何かがあった事に。でも僕が何も話さず隠している。不幸にも彼女が己の迷いを断ち切ろうと踏ん張っている最中に。きっとそれが気に食わなかったのだろう。だとすると、美央子もまたあの件について口を閉ざしているらしい。美央子から情報を聞き出せないから追求の手が僕に伸びたということか。または美央子との関係を気遣って聞き出そうとしていないかどちらか……いやどっちでも同じか。隠されているという事実そのものに理夢は傷付いているのだから。あーあ、胃が痛いし膝も痛い。遠くから聞こえる誰かの甲高い声を張り上げた熱唱。どうかそのままの勢いでこの部屋に突入して来てはくれないだろうかと現実逃避したいくらい痛いな。


「ねえ……教えてよ優太。美央子と、何があったの?」


 うぐっ。普段の溌剌としたオーラからは考えられぬ程儚げに微笑む彼女の横顔と呟きに、僕はゴリゴリHPを削られていく……落ち着け、深呼吸深呼吸。まだ使える札は残されている筈。僕は別に知られたところで構わないけど、でも何があろうと誰であろうと、当事者でも無い限り、美央子の許可が無い限りは僕の方から口を割るのは絶対に無しだ。『美央子には内緒ね』と前置きしたところで理夢が守るとは限らないし、仮に守ったとして結局知られているのでは意味が無い。その事実は理夢と美央子のこれからに多少なりとも影響を及ぼしてしまうだろう。これは、僕が祝へ話した円香に纏わるものとは訳が違うのだ。あの一連の出来事はもう完全に終わっていて何年も前の、それも中学の事で、加えて個人名は出さないままで語る事が可能だった。対して美央子はまだ同じ学校にいて同じクラスで、極め付けにはつい最近で、


 ……いや違うな。僕は多分、どういう反応が起こるか分からないから怖いんだ。だからこんなに頑なに口を閉ざしている。美央子がこの件をどう受け止めているか、どう感じているかを未だ正確に把握出来ていないから……ごめん美央子、今気が付いたよ。僕がどれだけ酷い事をしていたか、逃げていたかを。


 ちゃんと、話さないといけないな。


「理夢は誰かの過去がそんなに知りたい? 知らなければ仲良くなれない? 全てを打ち明けなければ、友達だって言えない?」


 にしても全く自分で自分が嫌になる。こんな偉そうな……でも今はと、とりあえず僕は恐らく重々承知しているであろう正論染みた言い訳を突き付けてみる。するとやはりというかなんというか、彼女は『そんなの思ってない』と不満顔をした。


「美央子はね、今までいつも『家の用事』を優先していた。去年のゴールデンウィークも夏休みも冬休みも、僕は何度かそれで誘いを断られている」


 と、僕の口から突然飛び出した親友の名前に、彼女は呆気に取られ首を傾げていた。


「きっと今年のゴールデンウィークも予定が埋まっていたに違いない。でも彼女は君の連絡で予定を空けたんだよ。僕でもなく円香でもなく、君の唐突な思い付きの連絡一つで、別荘まで用意した」


 ここまで言って理夢は僕が何を言いたいか、視線を落として顔を俯けて、凡その察しを付けたらしい。悪くない反応だと僕は続ける。


「これはあくまで推測なんだけどね。最近あの子はいくらなんでも『家の用事』が多過ぎるでしょ?」


「ゴールデンウィークに遊ぶため……ってこと?」


「うん。多分、幾つかの予定をキャンセルした代償なんじゃないかな」


 美央子はおっとりしているように見えて、意外と強かだったりする。もしかしかすると親への借りを作りたくなかったかのかもしれない、それか……確か始業式に会った時、父親が母親に黙って京都に別荘を建てた件を『弱み』にすると話していたっけ。だとすれば今回はそれを交渉材料にしたのかも。どちらにせよ、美央子は遊ぶ為の手段を講じたのだ。


「理夢が連絡したから、理夢と遊びたかったから。それは他の誰でもない、君を思った行動だよ。話していない事は確かにあるかもしれないけど、これはあの子がそんなの関係無く、理夢を凄く大事にしている証拠なんじゃないかな」


「え、そ、そうなの、かな……ヤバ、だったらガチ嬉しい、かも」


 まるで思春期の女子が想い人に口説かれているが如く頬を染める彼女は、見て分かる程満更でもない様子……うん、とりあえず事実を並べてその場しのぎの言い訳を立ててみたが上手くいったようだ。にしても、考えてみれば二人は本当に仲良しだな。一体どんなコミュニケーションを交わしたのか、最早僕の方が気になってくる。根本か何かで繋がり、若しくは共通点でもあるのだろうか? 例えば同じ趣味があるとか、好きな食べ物が一緒とか。わからん。


 しかし、良い話風に纏められはしたけど、結局彼女がどうして……万引きという犯罪に手を染める事になったのか、あの日あの夜、どうしてあの場でという話は一切出て来なかったな。


 まあ何でもいいさ。張り詰めた緊張感も薄れて来たし、ここらで一発『そろそろ何か歌おうか』と提案しようとした時だった。


「じゃあ優太は……どうなん?」


 僕の渾身の言い訳で納得しかけていた筈の彼女が、


「ウチのこと大事に、思ってくれてる?」


 フカフカの二人掛けソファーに両手をついてこちらに這い寄り、じいっと僕の顔を覗き込んだ。そのカウンターは深く鋭く鳩尾を正確に捉えるボディーブローのようにじわじわと、僕の心臓を焦りで鼓動させる。額には汗が一筋、いや、調整された空調のおかげで垂れる事は無かったけど、掌などは湿り気を満たしているかもしれない。


「も、もちろん大事に思ってるよ。でなきゃ二人でこんな場所には」


「ホント? それってウチと同じくらい?」


 なんだこれはおかしい。さっきまで確かに良い雰囲気だったのに。


「ウチね、ちょっと優太が気になってるの気付いてた?」


 距離が縮められて、縮んでいく。


「出会ったあの時からずっと。あ、でもめちゃんこ好きってほどじゃないよ? ただ気になってんの。ねえ、優太。優太はあの日、ウチを……色んなことから助けてくれたよね。だからめっちゃ感謝してて、そんでね」


 分かっていた筈だ。春休み初日のあの出来事は劇的なもので、相手に興味を持っても不思議はない事だと。分かっていた筈だ。理夢の僕に対する印象が、決して悪くないと。悪くないなら、もしかしたら良い方に傾き過ぎていると、僕は考えるべきだった。始業式、真っ先に僕へ駆け寄った理夢の表情や仕草から気が付くべきだったのだ。


「いや、あのね? だからって今すぐウチと付き合って欲しいとかそんなんじゃなくてさ、ほら、ゴールデンウィークもあるし気まずくなんのも嫌なんだけど、でもその、知ってて欲しくて」


 何やら大慌てで身振り手振りでどうにかこうにか何かしらを説明しようと慌ただしく、顔を真っ赤に染めたと思えば、突然しゅんとなったりしている彼女……まさか告白ではないだろう、だって? 誰だ! そんな事言ったのは!!


「ね、優太は今好きな子、いる?」

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