ルシフェルの撃退と犯人
上下左右が結界のようなモノで包まれている
そして光の柱が俺の体を貫く。
梨花は辛うじて左肩にかする程度で済んでいた。
ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間、梨花の左腕が地面へと落ちる。
「ぐっ……」
「梨花、大丈夫か!?」
「気にしないで……。当たった私が悪いから……」
どうやら梨花が先ほど言っていた当たったら死ぬというのは本当らしい。
魔を滅するというだけあり、魔を冠するモノには威力が増すってことか。
俺は勇者だからかわからないが、体を貫かれたにも関わらず何も起きる様子はない。
「ほう、今代の勇者は強いな。それに比べてそこの
ニヤニヤとほくそ笑むルシフェルの視線が気持ち悪い。
俺自身に向けられたものではないが、どうしてもアレンを思い出す。
神であろうと人であろうと弱い者をいじめている時は変わらないのかと俺は思う。
そして俺の中でこいつはここで心をへし折っておかないといけないという考えが浮かぶ。
「梨花、変身魔法を使ってあいつから距離を取れ」
「でもルシフェルを1人でなんて……」
「任せろ。あいつは俺が〆る」
「……わかった。気をつけて」
梨花が魔王の姿になり、後ろへと飛び退く。
ルシフェルからの距離は十分取れている。
あの分だともう一度
「勇者、貴様正気か?」
「何がだ?」
「
ルシフェルが初めて露わにする怒気に少し気後れする。
迫力だけでいえばマスコスの10倍はあるだろう。
だが、筋が通っていない。
俺は確かに勇者だ。
だけど俺が勇者になろうと思ったのは別に魔族を殺したいとか魔族を滅ぼしたいとかそんなしょうもない願望ではない。
俺は弱き者を救い、強き者を挫く為に勇者になることを決意したんだ。
「神かなんだか知らないが、1ついいことを教えてやるよ。俺は……勇者は例え魔族だろうが虐げられていたらそっちの側へ着く。だから大人しく死んでくれないか?」
「馬鹿なことを……! 勇者は魔を滅する為の装置だ。そんな役割しか持てない貴様如きが、我ら神に逆らっていいものか!」
ルシフェルが武器を取り出す。
見たこともない槍だ。
だが本能があれは危ないと告げている。
俺はその警告を一度無視し、剣を構える。
一合だ。
一合で決着をつける。
俺は深呼吸をし、
「どうした勇者? この
「違うな……。ルシフェル、お前は何もかも違うよ。まずは下層世界の人間に対する認識を崩してやる。かかってこいよ、羽付。殺してやる」
「偉そうなことを言いやがって所詮は下層世界の人間風情がぁぁぁぁぁぁ!」
俺の長髪に激昂したルシフェルが地上へと降り立ち、全力で
だがそこはもう俺の
ルシフェルが突き出した槍は俺の体に届くことはなく、砕ける。
刹那、ルシフェルの体に切り傷が広がっていく。
「貴様、何をした……」
「教えると思うか?」
「
そこでルシフェルの言葉が途切れる。
どうやら気がついたらしい。
俺が使った
つまりジャイアントスレイヤーに向いている
「まさか我が下層世界の勇者如きに負けるなどと……。そんなことは許されていいはずがない……。そうだこれは何かの間違いだ……」
ブツブツと何かを呟きながらルシフェルが光の粒子となって消えていく。
どうやらなんとかルシフェルを撃退することには成功したらしい。
ちなみに神は不死身だ。
その神性がある限り死ぬことはない。
「かっ……たの……?」
「あぁ。俺達の勝ちだ。あの状態だと俺達が
「よかった……」
ぺたりと地面にへたり込む梨花の様子を見て俺も少し気が抜ける。
何はともあれ、1番の強敵は排除したと言っても過言ではないだろう。
今なら梨花に今朝の棘について聞いたら答えてもらえるのだろうか。
そう思い立った俺は思い切って梨花に聞くことにした。
「梨花、今朝なんであんな言い草だったんだ? 正直ヒヤヒヤしてたぞ」
「それは……」
梨花は全て話してくれた。
義理とはいえ、20年近く育ててくれた親を殺した勇者の血統と行動していることをどう思われているか。
人間の友人関係は希薄だからいつか自分も零に切られるのではないか。
そんなことを心配していたらしい。
「大丈夫だ。俺は梨花が裏切らない限りは梨花の味方だ。味方をしようと神にまで挑んだんだ。少しは信用してほしい」
「うん。ルシフェルと戦っていた零は間違いなく、私にとっては
「その言葉が聞けただけで十分だ。さて目的の魔族のおじさんを探そうか」
「うん!」
どうやら完全に梨花に懐かれてしまったらしい。
俺は梨花が裏切らなければ何もしない。
そう、
◆◆◆
俺達は少し歩いた先に見つけた
中から出てきたのは目当ての魔族のおじいさんだった。
「ほう、ルシフェルを。お嬢様を守ってくださり、ありがとうございます。さて本題でございますが、宜しいでしょう」
「本当か!?」
「ええ。お嬢様を守ってくださったのです。爺も何か恩返しをせねばなりますまい。さてその者が使った物は何かありますか?」
俺はそう聞かれ、操られた剣を差し出す。
剣自体は新調したが、思い出深い物なので持っていて正解だった。
お爺さんが剣に触れた途端、青い世界が広がる。
これが
何故ならとても綺麗な景色だったから。
ルシフェルと戦って勝った褒美がこの光景ならばいいと思ってしまうほどの景色だ。
「……」
少し長い沈黙が流れる。
5分、いや10分は経っただろうか。
突然お爺さんが立ち上がる。
「でました。聖女マリーと書いてあります」
「ありがとう。これでまた先へと進めるよ」
「いえいえ。それではお嬢様をよろしくお願い致しますね」
「もう爺、一言いらないよ……」
こうして俺達はひとときの平穏な時間を過ごした。
——
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