第五話⑦
***
午後九時。客も入らなそうだから店を閉めることにした棗は、外にかけていた暖簾を片付けようと手を伸ばしていた。その後ろから真心が腕を伸ばし、軽々と暖簾のつっかえ棒をつかむ。
「まーくん、お疲れ様」
台所の電気を消す真心に声をかけると、彼はそっけなく「おう」と返した。そして、湯呑をカウンターに二つ置く。赤褐色のナツメ紅茶がほんのりと甘い香りを立ち上らせた。何も言わずとも二人で並んで座る。右が棗、左が真心。いつもの定位置だ。
「棗もお疲れ様」
そう言って彼は湯呑に口をつけた。
「あちっ」
あまりの熱さに舌を火傷したのか、顔をしかめて湯呑を置く。
その様子があまりにも滑稽だったので、棗は盛大に笑った。
【第五話 さらば、愛しきハイカロリー〜代用鶏白湯ラーメン〜 了】
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