晴天の霹靂なんて他人事だと思っていた

「2月23日未明、𓏸𓏸県𓏸𓏸市の𓏸𓏸さんが突如自宅に押し入って来た3人組に殺害されました。」

朝起きてつけたテレビにそんな事があった、と教えられた。


それを見て

「あーあ、可哀想…」

対して心の底から思ってもみないのにそんな言葉を吐く。

形だけの言葉。

なぜそんな心無いことを言えるんだ!と、そう言われればただひたすらにだから、と。


その後も金品を漁られ逃走中、𓏸𓏸さんは酷く無惨な姿であった、などテレビは喋る。


「近頃の日本も物騒になったもんだね…」

これが自分の身内や知り合いであれば反応は変わっただろうか、きっと変わっただろう、血相を変えて家を飛び出し、あるいはその場で崩れ落ち絶望感に包まれていただろう。


ただ、他人事だから、それだけで興味や感情は無くなるのだから恐ろしいものだ。


だから油断していた、そんな痛ましい事件はそうタカをくくって甘く見ていた。故に彼はその次にくるニュースがよもや自分の両親が例の3人組に殺された、なんて思いもしなかった。


「は?」

持っていたスマホを落として唖然とする。


夢かと思った、夢であって欲しいと願った

こんな現実、飛び起きて汗をビッショリかいて飛び起きて安堵できると思っていた。

「は?」

けれど違った

手から落ちたスマホが足に突き刺さる、そこに確かな痛みがあった

「夢じゃない…」

ニュースキャスターは淡々と告げる、

「家は荒らされていて……」

「寝室が無惨なことに…」

「常軌を逸脱した犯罪…」

「ナイフで…」

「拳で……」

「今現在も逃走中と…」


頭の混乱はもう止まらない、平衡感覚すら怪しく

視界は激しく光る、震えも汗も止まらなかった

「嘘だ…」

その場に崩れ落ち、ただ呆然とテレビを見つめる

「ウソだうそだ嘘だウソだうそだ嘘だウソだ嘘だウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!!!!?!!!」


とめどなく、いつの間にか流れる涙と共に、張り裂けるような絶望がリビングに木霊する


刹那、リーンゴーン、と鳴るチャイムが彼を現実に引き戻す


そのチャイムが現実に戻したと共にありもしない夢を彼に魅せる、ドッキリ大成功の看板を持った家族がドアの外にいる、そんな妄想。


心救われるような甘い妄想、束の間の笑顔、時の幸福、瞬間の希望。


だってこんなに晴れているから、雲ひとつない晴天だから。


「はーい」

ガチャ、と開けた先に


雷なんて落ちるわけが無いと思っていた。


異国の3人組が立っているなんて、、、。




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お題箱から始まる 短編集 一条 遼 @DAIFK

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