第3話 田園

「荻窪ォ、今の時代にはなぁ、インターネットってもんがあるんだよ。

 わざわざリスクを冒してまで円盤に固執する必要はねぇだろうよ?」


「」


「まぁ、現物を買うメリットはいくらかあるよ。変な広告に巻き込まれるこたぁねぇし。海賊版とかスパムだらけだもんな。それならば、有料にはなるけれども国内サイトとかでも良かったんじゃねぇのか?」


「」


「なぁ、聞いてんのか海綿体男」



 案の定、前の席の奴に宇多絡みされている。確か、江頭とか言っていたな。そいつは、茶髪なのか金髪なのか区別のつかないものを頭部に生やし、ただ此方を向いている。口は弧を描き、目尻は下がっている。畜生、何が海綿体男だ。お前こそ頭に海綿体詰めてんじゃねぇのか?







 シカトにも流石に限度がある。

「俺はなぁ、人目に晒されながらエロいもんを買うって行為にスリル、いや快感を覚えたんだよ」


「同級生の''女子''に見られちまったが?」


「それもまた、快感に近い気分を味わえると思えないか?」


「手遅れだ、こいつは異常性癖を患っている。」


 酷い言われようだ。こんな事態に陥ってしまった以上、もはや開き直るしかないと悟った。他人から可哀想なやつだと哀れみの眼差しを向けられようが、どうでもいい。そもそも、俺の学校内での社会的地位はとうに下落しているのでね。

何やってもいいでしょう。はい。最高だね、全く。



「正直、あんな事があった以上かなり凹んでんじゃねぇかなって思ってたんだけどなぁ。お前はその底なしの性癖によって''恥''という感情を抹消してしまったようだ。強く生きな、兄弟!」


「そもそも性の話題をタブーにしているこの社会が駄目なんだ。もっと''自分の性欲''に素直になったらどうなんだって拡声器に向かって叫びたいね。世界がエッチなDVDで溢れれば性犯罪の件数も減っていく筈だと信じているんだがね。」


「流石にそれはないだろ」






ーーーーーーーーーーーーーーーー


 


 



 性について語り明かした江頭とは、あれから一緒に弁当を食べる仲になった。あいにく、食事中には適さないような話をばっかりしている訳だが。俺に異常性癖だ何だと罵倒してきた癖に、あいつもかなり曲がったヘキをしている。類は友を呼ぶ?何ですかそれ。


 クラスメイトは、俺に向かって風俗帰りのおっさんを睨む中年女性みたいな眼差しを向けてくる。ピンク表紙が青春を奪っていった。憎い。ひたすらに憎い。今度抜き飽きたら田んぼのカカシに吊るしてやる。鳩避けになって一石二鳥だろ。しかし、撃ち落とされたのは俺自身である。




 


 ブックオフで俺に侮蔑の眼差しをくれた笹塚さんとは、あれからまだ一度も目を合わせていない。彼女の名簿表に、俺の名前は載っていないようだ。







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飽きたエロDVDは鳩避けにでも使え ませがきぃ @maseratighibli

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